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ストーカー
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私は東京の広告代理店に勤める24歳のOLである。今勤めている会社は、新卒で入社した会社だ。入りたての頃は仕事を覚えることに必死で仕事を楽しむ余裕もなかったが、最近はようやく仕事が楽しくなってきた。
仕事が楽しくなってきたのは喜ばしいことなのだが、私は1ヶ月ほど前からあることに悩まされ続けている。
その日は残業でいつもより帰りが遅かった。だいたい22時頃には家に着くのだが、その日に限っては仕事を終えたのが23時頃だった。職場で仲良くしている同僚はすでに帰っていた。一人で帰ることに孤独を感じつつも終電に間に合うように急いで会社の最寄駅へと走った。
私は都心部から離れた安アパートに暮らしている。職場には地下鉄を乗り継いで40分ほどかかる。アパートの家賃は5万円と都内では破格の安さだ。欲がない人間なので多少他より劣っていても住めれば文句はない。
いつものようにアパートへの帰り道を歩いていたら後ろから誰かにつけられている気がした。もちろん夜中にその道を通る人はいるのだが、その時はなぜか恐怖を感じた。
その日を始まりとして残業のある日は毎晩後ろからつけられている気がした。不気味なことに私が足を止めると、同じように相手も足を止めるのだ。私は恐怖のあまり一度も後ろを振り返ることができなかった。
さらに、つけられるだけでなく携帯に無言電話もかかって来るようになった。初めての電話は夜中の2時頃だった。
いつものように私はお気に入りのゾンビものの海外ドラマを見ていた。そのとき急に着信がかかってきた。夜中にいきなり携帯が鳴ったので私はビクッと体を震わせた。
非通知からの着信だったが、私は恐る恐る電話に出てみた。「もしもし…?」反応はなかった。聞こえるのはハアハアという男の息遣いだけだった。私はすぐに電話を切った。それからというもの、毎日のように無言電話がかかってきた。
警察に相談したが、脅迫や強要をされたわけではないので対処できないと追い返された。ストーカー被害者が泣き寝入りするしかないと言っているのがよくわかった。
そんな日が続き、耐えられなくなった私は、行きつけのカフェで仲の良い信用できる友達に相談することにした。
「それなら彼氏を作ったらどうかな?ストーカーもあんたに彼氏ができたら諦めるんじゃない?あんたと話す勇気もないみたいだし」
友達の提案は彼氏を作ればストーカーも落ち着くだろうということだった。
「そうかもしれないけど…」
「いい男紹介するよ!来週の土曜日の19時にこのカフェで待ち合わせしよ!」
「いいけど、じゃあ来週の土曜日ね」
ストーカー被害を理由にして恋人を作ることに納得がいかなかったが、友人の誘いを無下にすることもできず私は会うことにした。
--------------------------------------
「はじめまして」
彼は非常に好印象な男性だった。髪は整っていて清潔感があり、話し方や立ち振る舞いも紳士的でおだやかだ。
「じゃああたしは彼を連れてくるだけだったからこの辺で。あとは2人で楽しんで」
彼を紹介した友達は私たちに気を遣ってそそくさと帰っていった。
2人きりになり少し気まずくなったのか彼がすぐに口を開いた。
「なにかご趣味はありますか?」
「趣味は海外ドラマを見ることです。あとは音楽を聞くことです。ありきたりですが」
「そんなことはないですよ。あなたはゾンビもののドラマがお好きですね?」
「なんでわかるんですか?」
「いや、最近流行ってるからね。実は僕も見てて好きなんだ」
それから2時間くらい話し続けた。彼とは話が合い、すぐに仲良くなった。彼となら恋人になってもいいかなと思った。それは彼も同じだろう。
私たちは会計を済ませカフェを出た。時間は9時をまわっていた。
「楽しい時間はあっという間だったね」
「そうですね。ほんとに楽しかった。また、会いましょう」
「そうだね。じゃあ僕はこっちだから。またね」
「はい、またお願いします」
私と彼はお互い反対方向に歩いていった。
私は別れの挨拶をしたすぐ後で連絡先を交換していないことに気づいた。私はすぐに彼を追いかけた。
「あ、すいません。電話番号交換してもいいですか?」
彼は私の方をゆっくり振り返って言った。
「大丈夫だよ。知ってるから」
私は顔から血の気が引くのを感じた。
仕事が楽しくなってきたのは喜ばしいことなのだが、私は1ヶ月ほど前からあることに悩まされ続けている。
その日は残業でいつもより帰りが遅かった。だいたい22時頃には家に着くのだが、その日に限っては仕事を終えたのが23時頃だった。職場で仲良くしている同僚はすでに帰っていた。一人で帰ることに孤独を感じつつも終電に間に合うように急いで会社の最寄駅へと走った。
私は都心部から離れた安アパートに暮らしている。職場には地下鉄を乗り継いで40分ほどかかる。アパートの家賃は5万円と都内では破格の安さだ。欲がない人間なので多少他より劣っていても住めれば文句はない。
いつものようにアパートへの帰り道を歩いていたら後ろから誰かにつけられている気がした。もちろん夜中にその道を通る人はいるのだが、その時はなぜか恐怖を感じた。
その日を始まりとして残業のある日は毎晩後ろからつけられている気がした。不気味なことに私が足を止めると、同じように相手も足を止めるのだ。私は恐怖のあまり一度も後ろを振り返ることができなかった。
さらに、つけられるだけでなく携帯に無言電話もかかって来るようになった。初めての電話は夜中の2時頃だった。
いつものように私はお気に入りのゾンビものの海外ドラマを見ていた。そのとき急に着信がかかってきた。夜中にいきなり携帯が鳴ったので私はビクッと体を震わせた。
非通知からの着信だったが、私は恐る恐る電話に出てみた。「もしもし…?」反応はなかった。聞こえるのはハアハアという男の息遣いだけだった。私はすぐに電話を切った。それからというもの、毎日のように無言電話がかかってきた。
警察に相談したが、脅迫や強要をされたわけではないので対処できないと追い返された。ストーカー被害者が泣き寝入りするしかないと言っているのがよくわかった。
そんな日が続き、耐えられなくなった私は、行きつけのカフェで仲の良い信用できる友達に相談することにした。
「それなら彼氏を作ったらどうかな?ストーカーもあんたに彼氏ができたら諦めるんじゃない?あんたと話す勇気もないみたいだし」
友達の提案は彼氏を作ればストーカーも落ち着くだろうということだった。
「そうかもしれないけど…」
「いい男紹介するよ!来週の土曜日の19時にこのカフェで待ち合わせしよ!」
「いいけど、じゃあ来週の土曜日ね」
ストーカー被害を理由にして恋人を作ることに納得がいかなかったが、友人の誘いを無下にすることもできず私は会うことにした。
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「はじめまして」
彼は非常に好印象な男性だった。髪は整っていて清潔感があり、話し方や立ち振る舞いも紳士的でおだやかだ。
「じゃああたしは彼を連れてくるだけだったからこの辺で。あとは2人で楽しんで」
彼を紹介した友達は私たちに気を遣ってそそくさと帰っていった。
2人きりになり少し気まずくなったのか彼がすぐに口を開いた。
「なにかご趣味はありますか?」
「趣味は海外ドラマを見ることです。あとは音楽を聞くことです。ありきたりですが」
「そんなことはないですよ。あなたはゾンビもののドラマがお好きですね?」
「なんでわかるんですか?」
「いや、最近流行ってるからね。実は僕も見てて好きなんだ」
それから2時間くらい話し続けた。彼とは話が合い、すぐに仲良くなった。彼となら恋人になってもいいかなと思った。それは彼も同じだろう。
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「そうですね。ほんとに楽しかった。また、会いましょう」
「そうだね。じゃあ僕はこっちだから。またね」
「はい、またお願いします」
私と彼はお互い反対方向に歩いていった。
私は別れの挨拶をしたすぐ後で連絡先を交換していないことに気づいた。私はすぐに彼を追いかけた。
「あ、すいません。電話番号交換してもいいですか?」
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