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14.元魔王、確認される【中編】

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「もしかして昨日の続きかな」

「……歴代の勇者を退けた時に言い伝えられている魔法。それを習得しているのは何故?」

 そんな我の言葉に取り合わず、逃げ道を塞いでくる魔女娘。

「……」

「……おまけに蘇生魔法、極めつけには過去改変の魔法とか」

 あー。もうこれどうしようもないやつ。
 知られてしまったからには、それ相応の手段で答えねば。

「はぁ……仮に俺が魔王だとして、この場にはマナ一人だけだ。自分がどんな目に合うかは考えなかったのか?」

「……考えない」

「何故?」

「……あなたが魔王であるなら、きっと誰も殺さないと思ったから。歴代の勇者を生きたまま退けて、昨日も私たちを見捨てることなく助けてくれたあなただから」

「なら魔物はどう説明する。あれは人に被害をもたらすだろう」

「……仮説はある。昨日のオークキング。戦ってわかったけど、あれはそれこそ勇者でもない限り人が敵う魔物じゃない」

「昨日倒したではないか」

「……あれは普通じゃない倒し方。問題は過去にも同じような魔物が出現していたのに、毎回大きな被害が出る前に名乗り出ない誰かが討伐してきたこと」

 そういえば、そんなこともやっていたか。
 我は魔王城に縛り付けられていたから配下任せだったが。

「それは……」

「……私はあなたか、あなたの配下の誰かがやってきたのだと考えるのがしっくりきた。そうなると、魔物が魔王様の配下ならわざわざ倒す理由もない」

 全くもってその通り。まるで見てきたかのような推理であるな。
 まあこの辺りは最悪、自称神から魔女娘に危険が及ぶ可能性があるので、我から話すことは何もないが。

「でもそれは仮説に過ぎないのだろう?」

「……そう。でも、あなたが私の知るマオくんで魔王様なら危なくないと思った。それは変わらない」

 ……参ったなこれは。結局のところはそこに行き着くわけか。
 仕方ない。争いになるのであれば、この地から早々に離れるべきか。

「そうか。それならマナは俺が魔王と確認できたとしたら何を望むんだ。勇者にこの事を話すか?」

「……なんで?」

 え、なんでって……。
 一体何がしたいのだこの魔女娘は。

「それはなんといっても勇者と魔王だし倒すのかなと」

「……倒すなんてもったいない」

 もったいないって。全くもって訳がわからないのである。

「それなら、なんで魔王の討伐を目指す勇者の卵のパーティーに入ったんだ……」

「……魔王を捕まえて、魔法を教えてもらうため?」

 ……そうだった。魔女娘は魔法が絡むとアレなんだった。
 しかし、まさかここまでのものだったとは。

「じゃあ、俺が本当に魔王なら」

 あっ、めちゃくちゃ目を輝かせておるなこの魔女娘は。

「……師匠になってください!」

 ……駄目だこの魔女っ子。
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