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12.元魔王、策を考える【2/4】

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「ユウ姉の方は?」

「……剣で足がちょっとは斬れてるみたいだけど、血は出てないみたい」

 正直、今はスカウト娘に手一杯で周りを見る余裕がないので、横で魔女娘が戦況を教えてくれるのは非常に助かる。
 しかし剣も駄目。魔法も駄目か。

「他の属性の魔法とかは」

「……やってみる」

 仮に攻撃が効かないとして、倒せる方法はあるか……?
 力押し以外の方法でだ。

 今は魔力に余裕があるとは言え、このままではジリ貧だ。
 このままオークキングを倒す手が浮かばずに我の魔力が尽きれば、そのときは四人仲良くヤツの腹の中に収まることになる。

「マオ、どうにかならないの?!」

「今考えてる!」

「……もう!」

 そうこうしている間に魔女娘の魔法が止まる。

「……全部だめだった」

 特に弱点といった弱点もなしと。

「……モウオマエイイ、オマエタチクウ!」

「ちょっと、あんたの相手はこっちよ!」

「はぁ、はぁ、そ、そうよ……」

 すると、なかなか捕まらないスカウト娘に業を煮やしたらしいオークキングが目標を変更。
 前の二人を無視してこっちに向かって来た。

「……どうしようマオくん」

 多分さっきから動いていないからだろう。逃げない餌だと思われたようだ。
 そうなるともう、勇者娘とスカウト娘ではオークキングは止まらない。一直線に進んでくる。

「とりあえず魔法障壁張るね」

 我はすかさず前方に大きめの魔法障壁を展開。
 魔法障壁にオークキングがぶつかり、バァンという音と共に魔力が持っていかれた。

「マタヘンナカベ!」

 ドン! ドン!

 続けざまにゴリゴリと。魔力という名のタイムリミットが削れていく。

「ハァッ、ハァッ……ノ、ノドカワイタ」

 同時にオークキングも消耗していたらしい。
 水をご所望のようだ。
 ……なるほど、水か。

 つまりああして、こうして。
 いや、だめだ。その前にオークキングを誘導する必要があるな。

「よし……って」

「コッチモダメナラ、アッチ!」

「うわ、こっちにきた!」

 ようやく光明が見えてきたところ、またもやオークキングが目の前の餌を諦めたらしい。
 再びの目標変更で、こちらに駆けつける途中だった勇者娘は方向転換をして、迫り来る巨体から逃げ始める。

「マナの強化解除するね」

「……わかった」

 強化魔法の対象上限数は三。三人娘にそれぞれ一つずつ強化しているため、魔女娘の強化を解除だ。
 今からやることに威力は必要ないのでな。

「ユウ姉、少しでいいから時間稼ぎお願い! 【スピードアップ】」

「……! なにか思いついたのね。わかったわ!」

「オマエ、シボッテノム!」

 勇者娘の方は速度を上げても問題はなさそうだ。
 これも勇者の卵の加護のおかげか。

「アリスもこっち来て」

「はぁ、はぁ、ふぅ……それで何をしたらいいのかな?」

「うん、まず初めに……」

 さて、勇者娘が捕まる前に手短に伝えねばな。
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