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11.元魔王、ゴブリンに命令する【前編】

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 一糸乱れぬことなく、こちらに膝をついて頭を下げるゴブリンたち。

「うん、テイムしちゃったみたい」

 しかも、なんか言葉が通じるようになったっぽいの。

「シテ、メイレイハ?」

「……なんかゴブゴブ言ってるみたい?」

「ゴブゴブ言ってるわね」

「ゴブゴブだね」

 ……どうやら言葉が通じるの我だけらしい。
 となると通訳の必要ありか。

「命令はなにかって言ってるみたい」

「命令って、マオはゴブリンが何を喋っているのかわかるの?」

「うん、魔法のタクトの持ち主だからかな。なんかわかるね」

「……魔物と意思疎通とか魔王みたい」

「マオくんだけに?」

「……だけに」

 そうです元魔王です。
 といっても、地上の魔物は神の創造物だから我と関係ないけどね。
 ……どういう訳か世間では我のせいになっているけど。

「二人とも馬鹿なこと言ってないで、このゴブリンたちをどうするか決めないと」

 そうであったな。
 それにしても、このゴブリンたちは予想外であったが、使えるのではないだろうか。

「そうだね。ごめんごめん」

「……ゴブリンたち森の中詳しい?」

「聞いてみる」

 もし詳しいのなら儲けものである。
 いつまでもあの格好のままというのも可愛そうであるし。

「ゴブリンたちよ」

「「「ハッ」」」

「もしかして森に詳しかったりする? もしそうなら教えてほしいことがあるんだけど」

 すると、代表らしきゴブリンがそれに答える。

「ハッ、ワレラモリノジュウニン。ワカルコト、オコタエデキマス」

「そっか。それなら光る樹の幹とかモリタケっていう珍しいキノコ知らない?」

「フム、ヒカルキ……サイキンハ、ミテナイデス」

「それは残念、キノコの方も?」

「モリタケワカラナイ」

 なるほど、モリタケは人が決めた名前だからな。
 ゴブリンにはわからないのだろう。
 モリタケの特徴か。依頼書に絵は描いてあったが、見た目はキノコとしか言えまい。

「あー、ちょっと仲間に相談するから待っててね。あと、もう普通に立っていいから」

「ハッ、カンシャシマス」

 ゴブリンたちに立ってもらいつつ、勇者娘たちの方へと向き直る。

「どうだった?」

「光る樹の幹は見てないって」

「……残念」

「ダメだったか~」

「それでユウ姉、確かモリタケのこと知ってたよね。見た目以外の特徴って何かわからない?」

「特徴? そうね、独特な香りが強いとかかしら」

「香りね。ちょっともう一度聞いてみる」

「うん、よろしくね」

 そして再びゴブリンタイム。

「お待たせ」

「イエ」

「それで、モリタケは独特な強い香りのするキノコらしいんだけど」

「ドクトクナ、ツヨイカオリ……ソレ、サガセルカモシレマセン」

「本当?」

「ハイ……ゴブライ!」

 すると何やら仲間の名前を呼んだ様子。
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