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人間の欲望と魔王の信者

15話 第二回魔王組合会議(?) 議題:暴走魔物娘の話(1/3)

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 家出をしてしまった暗黒騎士を説得して連れ戻さねばならない。
 手紙の内容的に少しすれ違ってしまっただけのようなので、きちんと話せば解決するはずだ。
 なので急いで暗黒騎士の元へ向かいたいところではあるのだが。

「魔王様、聴いているんですか!」
「聴いている。きちんと聴いているともアルラウネよ」

 魔王なのに椅子にも座らせてもらえないまま、配下からお説教を受けている真っ最中である。

 場所は円形の巨大な机がある、いつもの会議室。
 この場にいるのは俺のほかに配下のアルラウネと分体のミニトレント。それと事情聴取のため現場に居合わせたブレイドとメイに、置いてきぼりは嫌だとついてきたリアだ。さらにそんなリアの腹部付近にはスライムが一匹、抱かれる形で収まっている。

「ならいいです! それでですね、魔王様はもうちょっと配下心を知るべきですよ! わたしやトレントさんはたまたま今の魔王組合の方針にあっていたからお仕事を任せてもらえて満足してますが、戦闘が得意な暗黒騎士さまとしてはなかなか魔王様のお力になれず、居てもいたたまれなかったんでしょう。手紙に書いてあるのがいい証拠です!」

 アルラウネが語尾を強調するたびに、頭に生えている真っ赤な花から花粉がボフンボフンと噴火のごとく飛び出してくる。

「ちょっといいだろうかアルラウネ」
「言い訳はいらないです魔王さま!」
「あ、うむ……」

 せめて弁明はさせてもらいたいところではあるのだが、取り付く島もないという有様だ。

「わたしたちが暗黒騎士さまの立場だったら穴にでも入りたくなる気分ですよ! そうですよねトレントさん?」
「否定ハデキナイ」
「それってただの植木むぐ」
「はいはい、メイはちょっと黙っとこうねー」

 メイの口がリアの手によって塞がれる。少し前にも同じ光景を見た気がするのは気のせいか。

「そこ、うるさいですよ!」
「ほら怒られちゃったー。横槍入れてごめんねラウネちゃん」
「わかってくれたのならいいです。それで話を戻しますが」

 一瞬アルラウネの話の矛先がずれたものの、再びこちらへ向かってくる。
 ただしそれは俺にではなく、俺同様に隣で立たされているブレイドに向かってである。

「ブレイドさまもブレイドさまです! あなたは剣をあつかうのでしょう! なら魔王さまではなく暗黒騎士さまを選ぶべきだったのです!「いやちょっと待ってもらっても」待ちません! ブレイドさまも言い訳するんですか!」
「いや。そういうわけじゃ」
「なら黙っていてください!」
「はい……」

 この場に集まってからというものの、完全にアルラウネの独壇場になっている。
 ブレイドに関しては割ととばっちりな気はするが。許せブレイド、魔王の俺であっても止められそうにないのだ。

「むぐむぐ」
「はいはい、メイはもうちょっと黙ってようねー」
「んー!」

 頼みの綱はブレイドの話を横で聞いていたメイであるのだが、そのメイもリアによって口を塞がれているためどうにもならない。

「ほんとに信じられません。暗黒騎士さまが不憫すぎて、さすがのわたしもプンプンですよ!」

 本当にどうにもならない、とそう思っていたが奇跡が起こったのだ。
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