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第2章 始めての育成を経て、危険人物として知れ渡る
47話 オークの村防衛戦4
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「わ、わ」
どうやらブレブはゴウガと違って苦戦している様子だ。
さすがに戦闘経験がなかったブレブは、そううまくはいかないか。
冒険者に向かって棍棒を振り回してはいるが、腰が引けている。
もう少し思い切りが良ければ、あの程度の冒険者たちならば問題にもならなそうなんだがな。
しかも攻撃の隙を狙われて、相手の斬撃や魔法をもろに受けてしまっている。
だが、それによって痛みを感じている様子は一切無い。
「ああ、もう。邪魔だなあ!」
そんな文句を言いながら、棍棒を振り回し続けている。
「何だこいつ。動きは雑魚だが、攻撃が効いてないのか武器が通らないぞ!」
「魔法も思いっきり当たってるのに、ダメージが無いっぽいぞ……」
それもそのはず。
ブレブには『防人』のスキルも譲渡しておいたからな。
基本的な効果は、守る対象が多ければ多いほど能力が上昇するというもの。
元々の持ち主は冒険者なので、そいつにとっては守護対象の後衛の分しか効果は発揮されなかっただろうが、今回に関しては守る対象は集会所に集まったオークたち全てが対象になる。
となると、能力の上昇量は相当なものになっているだろう。
あれだけの攻撃を受けている割に、一切怪我を負っていないというのも頷ける。
だが、現状だと攻撃もうまく行っていないところを見ると、足止めがせいぜいのようだが。
すると俺の目の前を通過して、複数の闇色の矢がブレブと戦っている冒険者に次々と飛んでいき、体に突き刺さった。
「くそ、今度は何だ!」
「ダメージは無いみたいだが」
「それなら無視だ。大方こいつが攻めあぐねてるから妨害してきたんだろ!」
だが、特にそれによって何かが起きたようには見えない。
あくまでも見た目は、の話だが。
すると、その後すぐに森の奥が一瞬光ったのが確認できた。
「お、合図が来たぞ。散れ!」
冒険者たちは頷き合うと同時に左右に散る。
「え?」
ブレブがそう言った直後に、人を飲み込むほどの巨大な炎の渦が、通り道の木々を巻き込みながらこちらに向かって、熱波と共にこちらにやって来る。
「あ? おいおい嘘だろ……」
しかし、そこで冒険者たちに誤算があったようだ。
左右に散ったはずの冒険者が避けきれずに炎に巻き込まれそうになる。
「思ったように動けない……まさか、さっきのはデバフか!?」
「「「おわっ!」」」
これはまずいと思った俺は、姿を隠したまま避け損ねた冒険者を押し出す形で、炎の攻撃範囲から弾き飛ばす。
直後に炎に軽く触れた感じで、この程度ならおそらく問題ないだろうとブレブは助けずに放置。
そうして炎の渦はブレブだけを飲み込む結果に……すらならなかった。
「うわっ」
そんな声を上げたブレブは炎の渦に当たると尻もちをついたが、体は元々の能力がさらに凄まじい強化をされたおかげか、炎の渦に飲み込まれることなく、炎は跳ね返されたかのように上空に行き先を変更。
炎の奔流は空を駆け上がると、満足したかのように消えてしまった。
「もう、熱いじゃないか!」
それを受けて、さすがに少々やけどを負った様子のブレブ。
棍棒もどうやら消し炭になったようで、持っていた手からは影も形も無くなっていた。
しかし、それは冒険者たちにとって予想外の結果だったのか、俺によって転がされた冒険者たちは訳がわからないと言った表情を見せている。
「は? 大魔法が効いてない? いや、それもだけど、さっき何かに押され? え?」
俺がこっそりと助けたことも相まって混乱している様子だ。
そんな冒険者を待つこと無く、さらに立て続けに状況は動く。
今度はブレブに向かって緑色の矢、黄色の矢が順に俺の前を通り過ぎて行くと、それが両方ともブレブに命中する。
すると今、負ったばかりのやけどが次の瞬間には消え去っていた。
「痛みが消えた……あとで弓のおじぢゃんにお礼言わないと」
痛みが消えただろう体をひとしきり確認したブレブは、冒険者をにらみつける。
「もう怒ったぞ!」
そんな光景に呆然と口を開けた冒険者が村の中に目を向けた。
「さっきの結界の修復に、デバフ、回復と……まさか中に補助役がいるのか!?」
そうだ。
それを行っているのは1人しかいないだろう。
クロエと共にいる弓を持ったオークの仕業だ。
弓持ちには『付与』のスキルを譲渡した。
攻撃能力は皆無だというのは分かっていたが、どうやら様々な効果を魔法で作り出した矢に乗せて打つことで、仲間や物にその効果を付与することが出来るみたいだな。
回復も出来るみたいだし、かなり万能な感じに仕上がったようだ。
「なあ、こいつらオークだよな……」
「楽に美味しい思いができるはずじゃあ……」
そうして、そう声に出した2人の冒険者はブレブによって首根っこを捕まれている。
おそらくタイミング的に緑色の矢は回復で、黄色の矢が速度上昇だと思うんだが。
その証拠に、矢を受けた後のブレブの動きが急に上がった。
ブレブは立ち上がると、転がった冒険者の目の前にすばやく移動して手を伸ばす。
それとは逆に、闇色の矢によって能力低下を受けていた冒険者では反応が遅れ、逃げることが叶わずにブレブに捕まるという今の状況に繋がっていた。
「人間は帰れ!」
「あぁあああー!」
そうしてブレブは掛け声と同時に、炎の渦によって作られた通り道に向かって思い切り冒険者をぶん投げた。
その結果、真っ直ぐに残像を残しながら飛んでいった冒険者は、その奥で先程まで炎の渦を作り出すために詠唱していた魔法使いたちにぶつかったのだろう。
いくつもの悲鳴が上がっていた。
「次はお前!」
「やめろ、やめっ、うわああああ!」
それがブレブを相手にしていた冒険者の分だけ繰り返されたのは言うまでもない。
どうやらブレブはゴウガと違って苦戦している様子だ。
さすがに戦闘経験がなかったブレブは、そううまくはいかないか。
冒険者に向かって棍棒を振り回してはいるが、腰が引けている。
もう少し思い切りが良ければ、あの程度の冒険者たちならば問題にもならなそうなんだがな。
しかも攻撃の隙を狙われて、相手の斬撃や魔法をもろに受けてしまっている。
だが、それによって痛みを感じている様子は一切無い。
「ああ、もう。邪魔だなあ!」
そんな文句を言いながら、棍棒を振り回し続けている。
「何だこいつ。動きは雑魚だが、攻撃が効いてないのか武器が通らないぞ!」
「魔法も思いっきり当たってるのに、ダメージが無いっぽいぞ……」
それもそのはず。
ブレブには『防人』のスキルも譲渡しておいたからな。
基本的な効果は、守る対象が多ければ多いほど能力が上昇するというもの。
元々の持ち主は冒険者なので、そいつにとっては守護対象の後衛の分しか効果は発揮されなかっただろうが、今回に関しては守る対象は集会所に集まったオークたち全てが対象になる。
となると、能力の上昇量は相当なものになっているだろう。
あれだけの攻撃を受けている割に、一切怪我を負っていないというのも頷ける。
だが、現状だと攻撃もうまく行っていないところを見ると、足止めがせいぜいのようだが。
すると俺の目の前を通過して、複数の闇色の矢がブレブと戦っている冒険者に次々と飛んでいき、体に突き刺さった。
「くそ、今度は何だ!」
「ダメージは無いみたいだが」
「それなら無視だ。大方こいつが攻めあぐねてるから妨害してきたんだろ!」
だが、特にそれによって何かが起きたようには見えない。
あくまでも見た目は、の話だが。
すると、その後すぐに森の奥が一瞬光ったのが確認できた。
「お、合図が来たぞ。散れ!」
冒険者たちは頷き合うと同時に左右に散る。
「え?」
ブレブがそう言った直後に、人を飲み込むほどの巨大な炎の渦が、通り道の木々を巻き込みながらこちらに向かって、熱波と共にこちらにやって来る。
「あ? おいおい嘘だろ……」
しかし、そこで冒険者たちに誤算があったようだ。
左右に散ったはずの冒険者が避けきれずに炎に巻き込まれそうになる。
「思ったように動けない……まさか、さっきのはデバフか!?」
「「「おわっ!」」」
これはまずいと思った俺は、姿を隠したまま避け損ねた冒険者を押し出す形で、炎の攻撃範囲から弾き飛ばす。
直後に炎に軽く触れた感じで、この程度ならおそらく問題ないだろうとブレブは助けずに放置。
そうして炎の渦はブレブだけを飲み込む結果に……すらならなかった。
「うわっ」
そんな声を上げたブレブは炎の渦に当たると尻もちをついたが、体は元々の能力がさらに凄まじい強化をされたおかげか、炎の渦に飲み込まれることなく、炎は跳ね返されたかのように上空に行き先を変更。
炎の奔流は空を駆け上がると、満足したかのように消えてしまった。
「もう、熱いじゃないか!」
それを受けて、さすがに少々やけどを負った様子のブレブ。
棍棒もどうやら消し炭になったようで、持っていた手からは影も形も無くなっていた。
しかし、それは冒険者たちにとって予想外の結果だったのか、俺によって転がされた冒険者たちは訳がわからないと言った表情を見せている。
「は? 大魔法が効いてない? いや、それもだけど、さっき何かに押され? え?」
俺がこっそりと助けたことも相まって混乱している様子だ。
そんな冒険者を待つこと無く、さらに立て続けに状況は動く。
今度はブレブに向かって緑色の矢、黄色の矢が順に俺の前を通り過ぎて行くと、それが両方ともブレブに命中する。
すると今、負ったばかりのやけどが次の瞬間には消え去っていた。
「痛みが消えた……あとで弓のおじぢゃんにお礼言わないと」
痛みが消えただろう体をひとしきり確認したブレブは、冒険者をにらみつける。
「もう怒ったぞ!」
そんな光景に呆然と口を開けた冒険者が村の中に目を向けた。
「さっきの結界の修復に、デバフ、回復と……まさか中に補助役がいるのか!?」
そうだ。
それを行っているのは1人しかいないだろう。
クロエと共にいる弓を持ったオークの仕業だ。
弓持ちには『付与』のスキルを譲渡した。
攻撃能力は皆無だというのは分かっていたが、どうやら様々な効果を魔法で作り出した矢に乗せて打つことで、仲間や物にその効果を付与することが出来るみたいだな。
回復も出来るみたいだし、かなり万能な感じに仕上がったようだ。
「なあ、こいつらオークだよな……」
「楽に美味しい思いができるはずじゃあ……」
そうして、そう声に出した2人の冒険者はブレブによって首根っこを捕まれている。
おそらくタイミング的に緑色の矢は回復で、黄色の矢が速度上昇だと思うんだが。
その証拠に、矢を受けた後のブレブの動きが急に上がった。
ブレブは立ち上がると、転がった冒険者の目の前にすばやく移動して手を伸ばす。
それとは逆に、闇色の矢によって能力低下を受けていた冒険者では反応が遅れ、逃げることが叶わずにブレブに捕まるという今の状況に繋がっていた。
「人間は帰れ!」
「あぁあああー!」
そうしてブレブは掛け声と同時に、炎の渦によって作られた通り道に向かって思い切り冒険者をぶん投げた。
その結果、真っ直ぐに残像を残しながら飛んでいった冒険者は、その奥で先程まで炎の渦を作り出すために詠唱していた魔法使いたちにぶつかったのだろう。
いくつもの悲鳴が上がっていた。
「次はお前!」
「やめろ、やめっ、うわああああ!」
それがブレブを相手にしていた冒険者の分だけ繰り返されたのは言うまでもない。
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