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第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく
14話 欲深な異世界人に決別を5
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異世界人は透明になっていたおかげで見えなかったが、異世界送還の魔法陣が出ていたから成功したのだろう。
それからすぐに光が現れて、経験値と『隠遁』のスキルを獲得した。
ふう。
背後に空気穴があったとはいえ、少し息苦しかったな。
だが、うまくいった。
あとは仕上げだ。
「なんだい、今の声は!」
「シノブくんの声だったよね」
「急ぐッスよ!」
おっと。
送り返した異世界人が声を上げたおかげか、お仲間が早めの到着になったか。
早速、俺はブラッディスライムを監視部屋へと転移させてから、すばやく『隠遁』のスキル効果を発動させて、姿をくらませる。
それから部屋を出ると、ちょうど3人組がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「あそこの部屋からだったね!」
彼らは俺の目の前で止まると、部屋を覗く。
どうやらスキルの効果は上々で、目の前にいるというのに誰も俺の存在には気づいていない様子だ。
「誰もいないみたいだけど……」
「あれは、宝箱……もしかして罠ッスかね?」
「可能性は高いね。シノブの姿もないし、転移系の罠で飛ばされたのかもね」
残念ながら不正解、彼は既に元の世界に戻った。
しかし、それが正解でもある。
「どうする?」
「どうするも何も、ほっとくわけには行かないでしょ」
「ダンジョンで死ぬなんて昔の話だし、試すだけ試してみるッス」
そう言って3人組は部屋の中に入っていく。
あとはギミックミミックに任せよう。
巻き込まれないように部屋の外の壁に身を潜ませると、すぐに紫色の光が部屋の外に漏れ出してきた。
少し待って光が失せた所で部屋に戻ると、3人の姿はきれいさっぱり消えていた。
それを確認した所で、『隠遁』の効果を解除して姿を現す。
「おつかれさん」
ポンとその場に残っていた箱に触れてギミックミミックを労うと、ガチンガチンと嬉しそうに(?)音を立てた。
「さてと、それじゃあ戻ろうか」
すぐに転移を使って、ギミックミミックを連れてみんなの待つ監視部屋へと戻る。
戻って来たところでクロエが尻尾を振って近づいてきた。
「うまく行ったみたいだねっ」
「ああ、クロエの解析の情報通りだったな」
あの異世界人はクロエが事前に調べたところ、姿を消せるのを良いことに、覗きや窃盗を行っていたようだ。
しかし、クロエの解析の前では透明化も無駄らしく、それらの悪事はクロエに見られていた。
そういう理由から、高そうな腕輪を餌にして釣るという今回の作戦を立てたが、あまりにもうまくハマりすぎたな。
「……何してるの?」
「姿を見えなくしているんだが、やっぱり見えてるんだな」
姿を消して映像があるところまで移動したところで、クロエに向かって手を振ると普通に反応された。
「うん、ちゃーんと見えてるんだからね! いたずらしようとしてもお見通しだよっ」
「そいつは残念。……っと、冗談は置いておいてだ。無事に終わったし、腕輪を返そう」
「……! うんっ」
腕輪を外して、クロエに返却しようとすると尻尾をはちきれそうなぐらい振り出した。
「……大丈夫かその尻尾」
クロエが自分の尻尾を見ようと振り向くと、直後にピタッと止まったが、こっちに向き直ると再び激しく尻尾が動き出す。
「それよりも、腕輪ちょうだいっ! 早くっ、はやくっ!」
「ちょうだいって、これアギトさんのだろ? まあ、どちらにしろクロエに返してもらうから渡すんだけどさ」
改めて腕輪をクロエに渡すと、それを胸にぎゅっと抱きしめるように持ち始めた。
「これってそういうことだよね? だよね?」
「……? よくわからないけど、まあアギトさんによろしく頼むよ」
「うんっ、お父さんにもちゃんと伝えるね!」
……変なクロエだな。
それからすぐに光が現れて、経験値と『隠遁』のスキルを獲得した。
ふう。
背後に空気穴があったとはいえ、少し息苦しかったな。
だが、うまくいった。
あとは仕上げだ。
「なんだい、今の声は!」
「シノブくんの声だったよね」
「急ぐッスよ!」
おっと。
送り返した異世界人が声を上げたおかげか、お仲間が早めの到着になったか。
早速、俺はブラッディスライムを監視部屋へと転移させてから、すばやく『隠遁』のスキル効果を発動させて、姿をくらませる。
それから部屋を出ると、ちょうど3人組がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「あそこの部屋からだったね!」
彼らは俺の目の前で止まると、部屋を覗く。
どうやらスキルの効果は上々で、目の前にいるというのに誰も俺の存在には気づいていない様子だ。
「誰もいないみたいだけど……」
「あれは、宝箱……もしかして罠ッスかね?」
「可能性は高いね。シノブの姿もないし、転移系の罠で飛ばされたのかもね」
残念ながら不正解、彼は既に元の世界に戻った。
しかし、それが正解でもある。
「どうする?」
「どうするも何も、ほっとくわけには行かないでしょ」
「ダンジョンで死ぬなんて昔の話だし、試すだけ試してみるッス」
そう言って3人組は部屋の中に入っていく。
あとはギミックミミックに任せよう。
巻き込まれないように部屋の外の壁に身を潜ませると、すぐに紫色の光が部屋の外に漏れ出してきた。
少し待って光が失せた所で部屋に戻ると、3人の姿はきれいさっぱり消えていた。
それを確認した所で、『隠遁』の効果を解除して姿を現す。
「おつかれさん」
ポンとその場に残っていた箱に触れてギミックミミックを労うと、ガチンガチンと嬉しそうに(?)音を立てた。
「さてと、それじゃあ戻ろうか」
すぐに転移を使って、ギミックミミックを連れてみんなの待つ監視部屋へと戻る。
戻って来たところでクロエが尻尾を振って近づいてきた。
「うまく行ったみたいだねっ」
「ああ、クロエの解析の情報通りだったな」
あの異世界人はクロエが事前に調べたところ、姿を消せるのを良いことに、覗きや窃盗を行っていたようだ。
しかし、クロエの解析の前では透明化も無駄らしく、それらの悪事はクロエに見られていた。
そういう理由から、高そうな腕輪を餌にして釣るという今回の作戦を立てたが、あまりにもうまくハマりすぎたな。
「……何してるの?」
「姿を見えなくしているんだが、やっぱり見えてるんだな」
姿を消して映像があるところまで移動したところで、クロエに向かって手を振ると普通に反応された。
「うん、ちゃーんと見えてるんだからね! いたずらしようとしてもお見通しだよっ」
「そいつは残念。……っと、冗談は置いておいてだ。無事に終わったし、腕輪を返そう」
「……! うんっ」
腕輪を外して、クロエに返却しようとすると尻尾をはちきれそうなぐらい振り出した。
「……大丈夫かその尻尾」
クロエが自分の尻尾を見ようと振り向くと、直後にピタッと止まったが、こっちに向き直ると再び激しく尻尾が動き出す。
「それよりも、腕輪ちょうだいっ! 早くっ、はやくっ!」
「ちょうだいって、これアギトさんのだろ? まあ、どちらにしろクロエに返してもらうから渡すんだけどさ」
改めて腕輪をクロエに渡すと、それを胸にぎゅっと抱きしめるように持ち始めた。
「これってそういうことだよね? だよね?」
「……? よくわからないけど、まあアギトさんによろしく頼むよ」
「うんっ、お父さんにもちゃんと伝えるね!」
……変なクロエだな。
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