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第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく
8話 追放と新たな出会い6
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ーーこれは少し前の記憶。
パーティー脱退を言い渡されて、ユウトに話があると酒場の裏手に同行した時の事だ。
「それで、話ってなんだ」
2人きりということで、どうやらユウトは他のパーティーメンバーに聞かせたくない話があるようだ。
「少し確認したいことがあってね」
「確認したいこと?」
今さら何を確認するというのだろうか。
「どうも気になっててさ。単刀直入に聞くけど、リアさ、戦闘の時にいつもサンドバッグ共を高所から落として潰してるって、あれ嘘だろ?」
それを聞いた瞬間、ドクンと心臓の鼓動が早まった。
落ち着け。
確証はないだろうから、ハッタリだろう。
それにしても、敵とはいえ相手のことをサンドバッグ呼ばわりとは、ユウトにとって彼らはそんな認識だったのか……。
「ちゃんと倒してるが、どうしてそう思う?」
「それは簡単だよ。あれだけ倒して経験値を稼いでいるはずなのに、一向に強くなった気配を見せないからさ」
それはそうだ。
実際に倒してないんだから強くなるはずもない。
まあ強さが視認できるわけでもないし、適当に誤魔化すことにする。
「俺は転移能力者だからな。少しずつだが転移の能力が向上しているぞ」
「ふ~ん。まあ、リアがそう言うならそれでいいんだけどね。仮に本当に逃していたのだとしても、その分だけ後からじ~っくりとお楽しみの回数が増えるってだけだからさ」
やっぱりこいつは気に食わない。
それに、これを聞きたいがために俺と話をしたかったのか?
もしそうなら不快なだけだし、さっさと切り上げてしまいたい。
「話はそれだけか。それなら俺はもう行くぞ」
しかし、そうではなかったらしい。
ユウトに回り込まれて、道を塞がれる。
「いやいや、今のはちょっと気になることを聞いただけ。言っておきたかったのはさ、スノーちゃんについてだ」
スノーについて?
「スノーがどうかしたのか」
こいつらの元に残しておきたくはないが、スキルの特性のおかげで彼女が何かされるということは、まずないだろう。
「スノーちゃんはさ、『聖女』の特性で俺たちがスノーちゃんの体に手を出したりなんかすると、汚れたとみなされて全ての力を失うのは知ってると思うけど」
そう。スノーは回復に結界、それに加えて光属性の魔法を1人で使う事が出来る貴重な存在。
いくら指定召喚でも、これだけのスキルを探し出すことは難しいとされている。
その代わりにユウトが言った通りの制約があって、それを破るとスキルは失われる。
そんな分かりきったことを、なぜ今さらになって話すのか。
「何がいいたい」
「いやね。ここだけの話なんだけど、1週間後に魔王城への侵攻が決まった」
移動手段も確保して、俺に言う前に魔王城に攻め込むところまで決まっていたんだな……。
まあ、どちらにしてもパーティーを外された俺が行くことはないのだろうが。
「それも済んで、残党狩りを終わらせるとどうなるか」
途端にユウトが下卑たような、嫌な笑いを見せてくる。
「世界は平和になって、ご褒美タイムだ! 『聖女』もお役ごめんで、その後は美味しく俺たちがスノーちゃんをいただくよ!」
その意味を察して、頭に血が上った俺はユウトに掴みかかるが、勇者に敵うはずもなくーー
この後も、地に伏した俺にスノーをどうするのか下衆な言葉を並べていたが、思い出したくもない。
だが、クロエのおかげで目が覚めた。
魔王軍に付いた以上、容赦をするつもりはない。
「そういうことで、今から1週間前後のところで魔王城に勇者たちが来るみたいです」
そうして俺は魔王城の玉座の間にて、玉座に座る魔王様、アギトさんに魔王城侵攻の話をしていた。
パーティー脱退を言い渡されて、ユウトに話があると酒場の裏手に同行した時の事だ。
「それで、話ってなんだ」
2人きりということで、どうやらユウトは他のパーティーメンバーに聞かせたくない話があるようだ。
「少し確認したいことがあってね」
「確認したいこと?」
今さら何を確認するというのだろうか。
「どうも気になっててさ。単刀直入に聞くけど、リアさ、戦闘の時にいつもサンドバッグ共を高所から落として潰してるって、あれ嘘だろ?」
それを聞いた瞬間、ドクンと心臓の鼓動が早まった。
落ち着け。
確証はないだろうから、ハッタリだろう。
それにしても、敵とはいえ相手のことをサンドバッグ呼ばわりとは、ユウトにとって彼らはそんな認識だったのか……。
「ちゃんと倒してるが、どうしてそう思う?」
「それは簡単だよ。あれだけ倒して経験値を稼いでいるはずなのに、一向に強くなった気配を見せないからさ」
それはそうだ。
実際に倒してないんだから強くなるはずもない。
まあ強さが視認できるわけでもないし、適当に誤魔化すことにする。
「俺は転移能力者だからな。少しずつだが転移の能力が向上しているぞ」
「ふ~ん。まあ、リアがそう言うならそれでいいんだけどね。仮に本当に逃していたのだとしても、その分だけ後からじ~っくりとお楽しみの回数が増えるってだけだからさ」
やっぱりこいつは気に食わない。
それに、これを聞きたいがために俺と話をしたかったのか?
もしそうなら不快なだけだし、さっさと切り上げてしまいたい。
「話はそれだけか。それなら俺はもう行くぞ」
しかし、そうではなかったらしい。
ユウトに回り込まれて、道を塞がれる。
「いやいや、今のはちょっと気になることを聞いただけ。言っておきたかったのはさ、スノーちゃんについてだ」
スノーについて?
「スノーがどうかしたのか」
こいつらの元に残しておきたくはないが、スキルの特性のおかげで彼女が何かされるということは、まずないだろう。
「スノーちゃんはさ、『聖女』の特性で俺たちがスノーちゃんの体に手を出したりなんかすると、汚れたとみなされて全ての力を失うのは知ってると思うけど」
そう。スノーは回復に結界、それに加えて光属性の魔法を1人で使う事が出来る貴重な存在。
いくら指定召喚でも、これだけのスキルを探し出すことは難しいとされている。
その代わりにユウトが言った通りの制約があって、それを破るとスキルは失われる。
そんな分かりきったことを、なぜ今さらになって話すのか。
「何がいいたい」
「いやね。ここだけの話なんだけど、1週間後に魔王城への侵攻が決まった」
移動手段も確保して、俺に言う前に魔王城に攻め込むところまで決まっていたんだな……。
まあ、どちらにしてもパーティーを外された俺が行くことはないのだろうが。
「それも済んで、残党狩りを終わらせるとどうなるか」
途端にユウトが下卑たような、嫌な笑いを見せてくる。
「世界は平和になって、ご褒美タイムだ! 『聖女』もお役ごめんで、その後は美味しく俺たちがスノーちゃんをいただくよ!」
その意味を察して、頭に血が上った俺はユウトに掴みかかるが、勇者に敵うはずもなくーー
この後も、地に伏した俺にスノーをどうするのか下衆な言葉を並べていたが、思い出したくもない。
だが、クロエのおかげで目が覚めた。
魔王軍に付いた以上、容赦をするつもりはない。
「そういうことで、今から1週間前後のところで魔王城に勇者たちが来るみたいです」
そうして俺は魔王城の玉座の間にて、玉座に座る魔王様、アギトさんに魔王城侵攻の話をしていた。
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