ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ

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第一部ヴァルキュリャ編  第二章 コングスベル

ヨルムンガンド

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「うぁあああ~っっ」


 身体の底から呻き声を漏らして、俺はベッドの上で寝返りをうっていた。
 長かった一日が終わった。
 今日の俺に残されたのは、後は寝ることだけである。
 数日ぶりの自由フリー。快適な寝床ベッド
 溢れる喜びヨロコビー200パーセント!!
 のはずなのに、俺の気持ちは鬱々として晴れない。Whyホワイ

 ヤクモが現れてイラついたからなのか?
 あいつ、他の二人もご案内しもす~っなんて言って、結局、明日も同行するクソゴミ。

 それとも、今日これといってめぼしい収穫がなかったからか?
 ヨルダール家を味方につけたとは言えないし、
 タペストリーと槍の先みたいな遺物を見ただけの俺達。

 スカルドって言ったっけ、
 語り部の話も三人とも同じで、どうってことはなかった。
 なんとなく理解した。
 ネット上にもごまんと溢れてたもんな。
 権力に媚びへつらったヤラセ連中だ。
 検閲の入った原稿を読んでいるだけ、その言葉に大した価値はない。

 なんとなく、脚を上げたり、下半身を捻ったり、腕を伸ばしたりした。
 不思議なんだよ。
 身体を動かしていると、鬱々とした心もやが薄まるような気がするんだ。
 こんな方法があったなんて。
 他の奴らは知ってたんだろうか。
 あんな世界で生き続けてる、他の奴あいつらは。

 
吟遊詩人バードかぁ……」


 声に出して呟いていた。
 すげかったなぁ。
 俺の想像を軽く超えてきた。
 近年の色彩豊か過ぎるアニメでも、あんなん居なかったんじゃねぇか?
 それが実際に存在するんだもんなぁ。

 どんどん現実離れしていく現実に、しばしば俺は振り落とされる。
 そのたびに、必死に手を伸ばし、しがみつく。
 気がつけば、必死だった環境に慣れきった自分がいて、
 また新たな現実が襲い、俺を突き放す。
 ひたすら繰返しだ。

 不思議な歌だった。
 お経のようでもあり、ラップのようでもあり、バラードのようでもある。
 抽象的な言葉が多かったけど、なんとなく語られる世界のイメージはわいた。
 あちこちで踏まれた韻が幻想的な心地良さで身体に染みてくる。
 軽いトランス効果が生まれる。
 前世だったらダウンロードしてたな。
 魅力的な音楽だった。
 
 右手イーヴル・コアに記録したライブ映像を再生する。
 呪文の可能性がある、聞きなれない音の羅列があった。
 《ぐんぐにる ぐんぐにる》
 やっぱり北欧なのか?
 知ってる名前だった。
 グングニルって、確か、北欧の神オーディンの武器じゃなかったっけ?
 《えいんへりやる》
 誰のことだろう? 北欧神話マニアなら分かるんだろうか。
 えぇ~んヘルプやろ。
 《らぐなろく》
 これは知ってる。神同士の最終戦争だったはず。
 確か、オージンはラグナロクで死んだんじゃなかったっけ?

 今の世界ではオージンは生きている。
 ということは、いつかは分からないけれど、ラグナロクが起こって、オージンは死ぬのだ。
 ……それって、俺達に関係するんだろうか。
 俺達からは遥か先の未来の話ならいい。
 けど、俺達の時代に起こる話なら……考えたくない。
 オージンから受け継いだ力がなければ魔物を殲滅なんて出来っこないし。
 ましてや、神同士の戦いに巻き込まれるなんて、打ち切り級エンドっしょ。

 《あんさず らぐず うるず》
 これが一番あやしい。一番有力に聞こえた。
 盾の呪文「シグルド ヒョル」、みたいに槍を発動する呪文なんじゃないか?
 もう一度、あの遺物を見せて貰ってこの呪文を試してみたい。
 いや、ダメだ。
 クソ領主あいつの前でそんなことをしたら、当たりでもハズレでも、絶対に手に入らなくなる。
 ……忍び込むしかないか。


「あぁぅっっ!!!! そうかぁああぁあーっ!!」


 今度は言葉にならぬ痛恨の念を抱えて、俺はベッドの上でもんどりうった。
 ヨルダール邸あそこに居るうちに、すり替えてくれば良かったのか!
 失敗したっっ! 失敗したぁぁあ~~っっ
 勢いで出てきてしまった自分を悔いた。
 

「ぅあぁあ……。俺って、やっぱりろくなことしねぇ……」


 これも繰返しだ。
 自分の無力さを知る。痛感する。
 けど、受け入れるしかない。
 受け入れて、少しでも意味のある存在ものになろうと前を向いて足掻くだけだ。
 そして前へ進めたかもと思う頃には再び無力さを突き付けられる。
 タケミチよりは成長したいもんだけどな。


「頑張ったら、変われるんかなぁ……」


 自信がまるでないんだ。
 正直な疑惑が口から言葉になって出てしまっていた。
 俺としては、頑張ったところで変われる気がしない。
 変われる気はしないんだけど……。

 がばっと起き上がって、部屋の中へと声をかける。


「ソグン、居るんだろ」


 右手首の腕鎖ブレスレットを口元に近付けた時、部屋の一角に桜色の光が現れた。
 光は神妙な表情の美少女へと変わる。
 

「シグルに怒られるんだろうけど、他に方法が思い付かないんだ。ヨルダール家のヴァルキュリャに会いたい。どうすればいい?」

 

 




 
 

 
 
 

 
 
 
 
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