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第一部ヴァルキュリャ編 第一章 ベルゲン
必然な旅立ち
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タクミさんが用意してくれた原始的ハンバーガー風朝食を食べ終えて、俺は考えていた。
なんとか、ジトレフと俺たちで、タクミさん抜きで話す機会はないものか。
タクミさん、聞かせたくない話したいからちょっとあっち行ってて、とか言えないしなぁ。
こないだみたいにジトレフを連れ出して二人で話すっきゃないかなぁ、でもなぁ……。
ちら、と隣の金髪を見る。
きっと居るとこで話した方がいいよなぁ、こいつの気持ち的には。
今朝の飲み物は果実水だった。
コケモモみたいな赤い実が水に浮いてる。
実はすんげぇ酸っぱいだけだし、水にも酸っぱさが移っててなんだこりゃぁっと思ったけど、慣れると案外さっぱりして良い。
朝の眠気覚ましにぴったりだった。
アセウスとタクミさんの雑談を聞き流しながら、口の中で実を転がして思案していると、タクミさんが仕事に行ってくる、と席を立った。
おっっ、ラッキー!
チャンス、チャンス、チャーンス!
「ジトレフ」
タクミさんが居なくなったダイニングルームで、俺は話を切り出した。
「俺ら明日から次の旅を始めるから、お前とは今日でサヨナラなんだけど」
え? そーゆー話だっけって?
そーゆー話だ。
目と顎の動きで、なんか言え、と促す。
視界の端で、アセウスが気まずそうな顔になる、お前はなんも言うな。
「……それなのだが」
無表情な顔の口元が動いて、低音ボイスがダイニングに響いた。
ぅおおぅっっ。床も壁も天井も木だとえれぇ良く響くな。
「エイケン家がワルキューレの一族であることと、それによりアセウス殿が狙われた可能性が高いことを報告した。これから他のワルキューレ一族を訪ねるつもりであることも、報告させて貰った。本隊はアセウス殿は『災い』ではないだろうと判断している」
「おぉ、いいじゃん」
いーじゃん! すげーじゃん?!
え? いーじゃん! いーじゃん! すげーじゃん?!
叶えたい夢があるならAAA!
最初から(いや今から)クライマックスきたーっっ!
黙って聞いていたアセウスも視界の端で表情を変える。
想いの強さが導いたのか?
ジトレフ、意外と簡単に情に流されるタイプなのか。
まぁ、俺としては助かるけど、やっぱり仲良くなれな……
「だが、アセウス殿に神の魔力があるのなら、『災い』になる可能性はあると私は考えている。本隊と協議して監視は続けるつもりだ」
「はぁあっ?!!」
またデカい声が出てしまったっっ。
脳内に流れ始めてた懐かしのOPもプツリと消えた。
ダメだ、こいつ。本当に俺の鬼門だ。
いや、予測してなかった訳じゃないし全然想定内なんだけど、なんだよ。
すっげーイライラするっ。
キンちゃん一発シメたって!!
「お前、アセウスの頼み無視すんのかよ! 監視は意味ねぇって言ったじゃん! 下手に巻き込みたくないってゆー善意なんだよっ誰も得しねぇんだよっ得どころか……っ、俺言ったよな?!」
ごめん、俺は忘れないから!
うん、言ってたねー。自分で決めて好きにすればいいって、口出ししないってねー。
え! じゃあ、ジトレフ悪くないじゃん! 意味わかんねーの俺じゃん! 俺言うこと七変化モンスターじゃん!
っって、確かにあーは言ったけど、それは真意ではなくてっ。
分かるだろ普通はよぉっっ! いや、分かれよっっっ!
「エルドフィン、いいよ。仕方ないんだ。ジトレフにだってジトレフの立場がある」
アーセーウスぅーっ
いいよって、お前のためじゃねぇんだよぉっ
一人ツッコミ忙しそうだからってツッコまなくていいんだよぉー
むしろお前のその表情がぁーっっ
「神の魔力についてはまだ不確かだから報告していない。何か実証が得られるまで報告するつもりはないが、いつ結論がでるかもわからない。弱い理由で長期の監視をすることになる。本隊への協議は簡単にはいかないだろう。そのため、私は今日オッダヘ発つ」
「え?」
アセウスが感情のままに声を漏らした。
そりゃそうだ。俺は訳が分からなくて言葉もでない。
情に流されてくれるのかと思えば、話し通じねぇめんどくささ全開にして期待を裏切り、
そのくせ監視を続けること以外はアセウスの希望通りになっている。
しかも、監視が続行されるかはオッダ部隊との協議の結果次第。
部隊の承認が得られなければ、ジトレフはそのまま部隊に帰還することになるだろう。
あれ? 悪くなくない?
俺は目でアセウスにそう訴えかける。
いーじゃん、いーじゃん、スゲーじゃん。
アセウスは俺の代わりに口を開いた。
「ありがとう、ジトレフ。すげー、助かる」
「私は私の判断で任務を果たしているだけだ」
「そっか。監視は、本当に意味ないから無理することないよ」
「意味があるかないかは私が決めることだ」
「そっか」
俺の脳内でまたOPが再生され始めたけれど、
なんか、あっさり話は終わったらしい。
アセウスが「そういうことです」みたいな顔を俺に向けてくる。
俺はなんだったんだ。
それならそうと早く言えっつーの、ほんとめんどくせぇ奴。
アセウスが穏やかな表情に戻ったからいいけどさ。
「で、いつ出発すんの?」
「タクミ殿が戻ってくれば、昼前には」
「長くなるとは言ってなかったから、戻ってくると思うよ。じゃあ、ジトレフは身支度か。エルドフィン、俺達は明日の午前中か、場合によっては今日の午後に出発でオケ?」
「今日の午後は止めとけ。お前はじっくり考えることがあるんじゃねぇーの?」
「あ。そぉでした……」
「明日の午前中出発でオーケー、マイろーど」
「うん」
こっちも話が終わった。
のんびり鼻唄歌ってられるのは今日までか。
新しい朝は待ってもねぇけど来る。
寝てるだけでも来る。いざ飛び込めってか。
ちょっとめんどくささを感じてる自分の背を押すように、これからのことを考える。
ええと、最初のお宅は
ヴィンッ
網膜スクリーンに鮮やかな色彩と繊細なデザインのタペストリーが投影される。
開かずの部屋にあったやつだ。
デネブッッ!! ぢゃねぇ、右手っ!!
勝手にしゃしゃるな、お前の答えは聞いてない。
異世界転生版、家、訪ねて行ってイイですか?
次はセウダから真東にある、港湾で有名な大きな町、コングスベルを統べるヨルダール家だ。
―――――――――――――――――――
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代でエイケン家の神の血継承者 アセウス
【冒険の協力者イケメン】
ローセンダールの魔術師 タクミ
ソルベルグ家当主 カルホフディ
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
黒い石の腕鎖(シグルの監視石付き)
イーヴル・コア(右手首に内蔵)
【冒険の目的地】
コングスベル
【冒険の協力者ヴァルキュリャ】
エイケン家 ゴンドゥル
ランドヴィーク家 通称ソグン
ソルベルグ家 通称シグル(ドリーヴァ)
なんとか、ジトレフと俺たちで、タクミさん抜きで話す機会はないものか。
タクミさん、聞かせたくない話したいからちょっとあっち行ってて、とか言えないしなぁ。
こないだみたいにジトレフを連れ出して二人で話すっきゃないかなぁ、でもなぁ……。
ちら、と隣の金髪を見る。
きっと居るとこで話した方がいいよなぁ、こいつの気持ち的には。
今朝の飲み物は果実水だった。
コケモモみたいな赤い実が水に浮いてる。
実はすんげぇ酸っぱいだけだし、水にも酸っぱさが移っててなんだこりゃぁっと思ったけど、慣れると案外さっぱりして良い。
朝の眠気覚ましにぴったりだった。
アセウスとタクミさんの雑談を聞き流しながら、口の中で実を転がして思案していると、タクミさんが仕事に行ってくる、と席を立った。
おっっ、ラッキー!
チャンス、チャンス、チャーンス!
「ジトレフ」
タクミさんが居なくなったダイニングルームで、俺は話を切り出した。
「俺ら明日から次の旅を始めるから、お前とは今日でサヨナラなんだけど」
え? そーゆー話だっけって?
そーゆー話だ。
目と顎の動きで、なんか言え、と促す。
視界の端で、アセウスが気まずそうな顔になる、お前はなんも言うな。
「……それなのだが」
無表情な顔の口元が動いて、低音ボイスがダイニングに響いた。
ぅおおぅっっ。床も壁も天井も木だとえれぇ良く響くな。
「エイケン家がワルキューレの一族であることと、それによりアセウス殿が狙われた可能性が高いことを報告した。これから他のワルキューレ一族を訪ねるつもりであることも、報告させて貰った。本隊はアセウス殿は『災い』ではないだろうと判断している」
「おぉ、いいじゃん」
いーじゃん! すげーじゃん?!
え? いーじゃん! いーじゃん! すげーじゃん?!
叶えたい夢があるならAAA!
最初から(いや今から)クライマックスきたーっっ!
黙って聞いていたアセウスも視界の端で表情を変える。
想いの強さが導いたのか?
ジトレフ、意外と簡単に情に流されるタイプなのか。
まぁ、俺としては助かるけど、やっぱり仲良くなれな……
「だが、アセウス殿に神の魔力があるのなら、『災い』になる可能性はあると私は考えている。本隊と協議して監視は続けるつもりだ」
「はぁあっ?!!」
またデカい声が出てしまったっっ。
脳内に流れ始めてた懐かしのOPもプツリと消えた。
ダメだ、こいつ。本当に俺の鬼門だ。
いや、予測してなかった訳じゃないし全然想定内なんだけど、なんだよ。
すっげーイライラするっ。
キンちゃん一発シメたって!!
「お前、アセウスの頼み無視すんのかよ! 監視は意味ねぇって言ったじゃん! 下手に巻き込みたくないってゆー善意なんだよっ誰も得しねぇんだよっ得どころか……っ、俺言ったよな?!」
ごめん、俺は忘れないから!
うん、言ってたねー。自分で決めて好きにすればいいって、口出ししないってねー。
え! じゃあ、ジトレフ悪くないじゃん! 意味わかんねーの俺じゃん! 俺言うこと七変化モンスターじゃん!
っって、確かにあーは言ったけど、それは真意ではなくてっ。
分かるだろ普通はよぉっっ! いや、分かれよっっっ!
「エルドフィン、いいよ。仕方ないんだ。ジトレフにだってジトレフの立場がある」
アーセーウスぅーっ
いいよって、お前のためじゃねぇんだよぉっ
一人ツッコミ忙しそうだからってツッコまなくていいんだよぉー
むしろお前のその表情がぁーっっ
「神の魔力についてはまだ不確かだから報告していない。何か実証が得られるまで報告するつもりはないが、いつ結論がでるかもわからない。弱い理由で長期の監視をすることになる。本隊への協議は簡単にはいかないだろう。そのため、私は今日オッダヘ発つ」
「え?」
アセウスが感情のままに声を漏らした。
そりゃそうだ。俺は訳が分からなくて言葉もでない。
情に流されてくれるのかと思えば、話し通じねぇめんどくささ全開にして期待を裏切り、
そのくせ監視を続けること以外はアセウスの希望通りになっている。
しかも、監視が続行されるかはオッダ部隊との協議の結果次第。
部隊の承認が得られなければ、ジトレフはそのまま部隊に帰還することになるだろう。
あれ? 悪くなくない?
俺は目でアセウスにそう訴えかける。
いーじゃん、いーじゃん、スゲーじゃん。
アセウスは俺の代わりに口を開いた。
「ありがとう、ジトレフ。すげー、助かる」
「私は私の判断で任務を果たしているだけだ」
「そっか。監視は、本当に意味ないから無理することないよ」
「意味があるかないかは私が決めることだ」
「そっか」
俺の脳内でまたOPが再生され始めたけれど、
なんか、あっさり話は終わったらしい。
アセウスが「そういうことです」みたいな顔を俺に向けてくる。
俺はなんだったんだ。
それならそうと早く言えっつーの、ほんとめんどくせぇ奴。
アセウスが穏やかな表情に戻ったからいいけどさ。
「で、いつ出発すんの?」
「タクミ殿が戻ってくれば、昼前には」
「長くなるとは言ってなかったから、戻ってくると思うよ。じゃあ、ジトレフは身支度か。エルドフィン、俺達は明日の午前中か、場合によっては今日の午後に出発でオケ?」
「今日の午後は止めとけ。お前はじっくり考えることがあるんじゃねぇーの?」
「あ。そぉでした……」
「明日の午前中出発でオーケー、マイろーど」
「うん」
こっちも話が終わった。
のんびり鼻唄歌ってられるのは今日までか。
新しい朝は待ってもねぇけど来る。
寝てるだけでも来る。いざ飛び込めってか。
ちょっとめんどくささを感じてる自分の背を押すように、これからのことを考える。
ええと、最初のお宅は
ヴィンッ
網膜スクリーンに鮮やかな色彩と繊細なデザインのタペストリーが投影される。
開かずの部屋にあったやつだ。
デネブッッ!! ぢゃねぇ、右手っ!!
勝手にしゃしゃるな、お前の答えは聞いてない。
異世界転生版、家、訪ねて行ってイイですか?
次はセウダから真東にある、港湾で有名な大きな町、コングスベルを統べるヨルダール家だ。
―――――――――――――――――――
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代でエイケン家の神の血継承者 アセウス
【冒険の協力者イケメン】
ローセンダールの魔術師 タクミ
ソルベルグ家当主 カルホフディ
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
黒い石の腕鎖(シグルの監視石付き)
イーヴル・コア(右手首に内蔵)
【冒険の目的地】
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