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第一部ヴァルキュリャ編 第一章 ベルゲン
シグルドリーヴァの盾
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ベルゲンに来て五日目、いよいよ開かずの部屋探索も大詰めを迎えていた。
さぁ、「宝探しゲーム」を始めよう。
物品についての覚え書きを手に、ホフディが「お宝」を読み上げた。
「一つ目、『オージンの書』」
「オージンの書?」
「書物かな? この部屋にある書物は全部読んだはずだけど……」
いきなり難題だ。
俺とアセウスは顔を見合わせた。
読んできた書物の内容を思い起こしてみても、「オージンの書」と特別に名づけられそうなものには思い当たらない。(俺についていえば書物の内容の記憶自体が大して思い当たらない……汗)
あは! 俺とアセウスの表情のタイミング一緒か。「ギブ」と意見を求めるようにホフディを促した。
「『普遍の時を超え、望むものの軌跡を記せり。秘められし知恵であり、大いなる魔術となる。世界樹の一枝を手にせしもの、根源の力を得るだろう』と説明が書かれています」
「……エルドフィン、分かる?」
「フィネガンズ・ウェイクくらい分からない」
「俺にはそれも、ちょっと何言ってるか分からない」
アセウスもサンドイッチマン好きなのか、と俺はほくそ笑む。
せっかくなので、首を傾げるアセウスに「なんで何言ってるか分からないんだよ!」とツッコミを入れてやりたくもなったけど、フィネガンズ・ウェイクがストレート過ぎるくらいマニアックだったからなぁ。
俺はワイプ芸人みたいに無言で大きく頷いて、MCホフディに丸投げした。
頼むぞ、ホフディ。初手で決められなかった以上、こっからはアドリブだ。
ノーお宝ノーアイディア。
「抽象的過ぎて分かりませんね。後回しにして、他を先に見ましょう。二つ目、『ヴァルキュリャの盾』」
「これじゃない?!」
待ってましたとばかりにアセウスが声を弾ませる。
棚の下の方から取り出した正円形の盾を、俺たちに見せるように構えてみせた。
そっちにあったかよ~、くっそ~、まんま盾じゃねーか。
嬉しそうなどや顔がまた悔しさを煽る。
いやいや、まだ0勝1敗1引き分け。これから、これから。
余裕な態度の俺様はアセウスが見せる盾を観察した。
直径50cmくらいだろうか、真鍮色の輝きが装飾品みたいな、シンプルな盾だった。
「他に盾っぽいのもないしな、それで当たりかな。これの説明はなんて?」
「『勝利を決める者オージンが三番目の乙女に授けり。それは勝利をもたらす証。すべての弱きものを恐れおののかす炎の神器。あらゆる邪悪や災厄を払う古の魔力を持ち、いかなる攻撃も傷付けることが出来ぬ至上の盾なり』とあります」
少し物がぶつかっただけで傷が付きそうな鏡面を、触ろうと伸ばしかけた手を引っ込める。
「すげー、めたくそ強そう。説明が本当なら無敵の盾じゃん。オージン様がくれた神器ならありうるのか、って、三番目の乙女って……」
「ワルキューレのことかな、ヴァルハラに帰った時に置いていったんだろうか」
「そうでしょうね……三番目の乙女とは、ソルベルグ家からワルキューレに選ばれたシグルドリーヴァのことだと思います」
三番目のワルキューレ、シグルドリーヴァ・ソルベルグ?!
ホフディは思い詰めた顔をして盾とアセウスを凝視していた。
「ホフディ、何か知ってるのか?」
アセウスが言い終わるより早く、ホフディは唇を震わせた。
「《Sigrd hjól》」
カッッッ――――! 盾が眩しく発光した。
なんだこれ! まるで太陽っっ、目で見ちゃヤバいやつかっ!!
とっさに固く閉じた目蓋の上を手で覆う。
それでも刺すような圧倒的な光が容赦なく襲ってきた。
「ホフディっっこれって……」
「……ソルベルグ家に伝わる魔法です。まさか、ここに実在していたなんて……」
二人の言葉と、光が弱まったのを感じて、そっと目を開いた。
なっッ! なんじゃこりゃあァッ!!
3cm幅くらいの輪が俺のすぐ近くまで、アセウスを中心に円を描いて……揺らめきながら浮いている。
輪に取り囲まれたアセウスは頭に兜、首から肩そして胴体に鎧を装備していた。
すべてが淡い黄金色で、曇りなく輝いている。
アセウスの髪みたいだ、と思った。
シンプルだった盾は複雑な装飾で重厚さを増し、同じような装飾が鎧の胸当て部にもアシンメトリーにほどこされていた。
「ほ、ほんまもんかよ……」
「困りましたね」
「「何故?」」
俺とアセウスは声を揃えてホフディを見た。
このスーパー黄金聖衣にはまだ秘密があるのか?!
「解除の仕方が分かりません」
……今その心配?
それこそ、どうでもいいけどカルホフディ……。
いや、どうでもよくないのか。
なんかホフディには勝てないズラ。
表情から緊張感の解けない(美少年)イケメンに、俺はとりあえず完全白旗を上げた。
さぁ、「宝探しゲーム」を始めよう。
物品についての覚え書きを手に、ホフディが「お宝」を読み上げた。
「一つ目、『オージンの書』」
「オージンの書?」
「書物かな? この部屋にある書物は全部読んだはずだけど……」
いきなり難題だ。
俺とアセウスは顔を見合わせた。
読んできた書物の内容を思い起こしてみても、「オージンの書」と特別に名づけられそうなものには思い当たらない。(俺についていえば書物の内容の記憶自体が大して思い当たらない……汗)
あは! 俺とアセウスの表情のタイミング一緒か。「ギブ」と意見を求めるようにホフディを促した。
「『普遍の時を超え、望むものの軌跡を記せり。秘められし知恵であり、大いなる魔術となる。世界樹の一枝を手にせしもの、根源の力を得るだろう』と説明が書かれています」
「……エルドフィン、分かる?」
「フィネガンズ・ウェイクくらい分からない」
「俺にはそれも、ちょっと何言ってるか分からない」
アセウスもサンドイッチマン好きなのか、と俺はほくそ笑む。
せっかくなので、首を傾げるアセウスに「なんで何言ってるか分からないんだよ!」とツッコミを入れてやりたくもなったけど、フィネガンズ・ウェイクがストレート過ぎるくらいマニアックだったからなぁ。
俺はワイプ芸人みたいに無言で大きく頷いて、MCホフディに丸投げした。
頼むぞ、ホフディ。初手で決められなかった以上、こっからはアドリブだ。
ノーお宝ノーアイディア。
「抽象的過ぎて分かりませんね。後回しにして、他を先に見ましょう。二つ目、『ヴァルキュリャの盾』」
「これじゃない?!」
待ってましたとばかりにアセウスが声を弾ませる。
棚の下の方から取り出した正円形の盾を、俺たちに見せるように構えてみせた。
そっちにあったかよ~、くっそ~、まんま盾じゃねーか。
嬉しそうなどや顔がまた悔しさを煽る。
いやいや、まだ0勝1敗1引き分け。これから、これから。
余裕な態度の俺様はアセウスが見せる盾を観察した。
直径50cmくらいだろうか、真鍮色の輝きが装飾品みたいな、シンプルな盾だった。
「他に盾っぽいのもないしな、それで当たりかな。これの説明はなんて?」
「『勝利を決める者オージンが三番目の乙女に授けり。それは勝利をもたらす証。すべての弱きものを恐れおののかす炎の神器。あらゆる邪悪や災厄を払う古の魔力を持ち、いかなる攻撃も傷付けることが出来ぬ至上の盾なり』とあります」
少し物がぶつかっただけで傷が付きそうな鏡面を、触ろうと伸ばしかけた手を引っ込める。
「すげー、めたくそ強そう。説明が本当なら無敵の盾じゃん。オージン様がくれた神器ならありうるのか、って、三番目の乙女って……」
「ワルキューレのことかな、ヴァルハラに帰った時に置いていったんだろうか」
「そうでしょうね……三番目の乙女とは、ソルベルグ家からワルキューレに選ばれたシグルドリーヴァのことだと思います」
三番目のワルキューレ、シグルドリーヴァ・ソルベルグ?!
ホフディは思い詰めた顔をして盾とアセウスを凝視していた。
「ホフディ、何か知ってるのか?」
アセウスが言い終わるより早く、ホフディは唇を震わせた。
「《Sigrd hjól》」
カッッッ――――! 盾が眩しく発光した。
なんだこれ! まるで太陽っっ、目で見ちゃヤバいやつかっ!!
とっさに固く閉じた目蓋の上を手で覆う。
それでも刺すような圧倒的な光が容赦なく襲ってきた。
「ホフディっっこれって……」
「……ソルベルグ家に伝わる魔法です。まさか、ここに実在していたなんて……」
二人の言葉と、光が弱まったのを感じて、そっと目を開いた。
なっッ! なんじゃこりゃあァッ!!
3cm幅くらいの輪が俺のすぐ近くまで、アセウスを中心に円を描いて……揺らめきながら浮いている。
輪に取り囲まれたアセウスは頭に兜、首から肩そして胴体に鎧を装備していた。
すべてが淡い黄金色で、曇りなく輝いている。
アセウスの髪みたいだ、と思った。
シンプルだった盾は複雑な装飾で重厚さを増し、同じような装飾が鎧の胸当て部にもアシンメトリーにほどこされていた。
「ほ、ほんまもんかよ……」
「困りましたね」
「「何故?」」
俺とアセウスは声を揃えてホフディを見た。
このスーパー黄金聖衣にはまだ秘密があるのか?!
「解除の仕方が分かりません」
……今その心配?
それこそ、どうでもいいけどカルホフディ……。
いや、どうでもよくないのか。
なんかホフディには勝てないズラ。
表情から緊張感の解けない(美少年)イケメンに、俺はとりあえず完全白旗を上げた。
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