ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ

文字の大きさ
上 下
32 / 122
序章

「人生で一番衝撃的な日」という始まり

しおりを挟む
 雫
 が
 一
 つ
 、
 音もなく落ちてきた。
 落ちた先の闇に溶け込んで、
 波形    を      作る。
 違う、闇 じゃない。 bitの集まりか?
 無数のbitが黒い微細なグラデーションを描く。 
 
 ……エルドフィン……
 複雑に反射し合う波形の中から呼ばれる・・・・
 そうだ、これ・・は俺の名前だ。
 そして、そう呼ぶのは……
 光輝く髪の青年が見えた。
 懐かしさに目をこらすと、青年の表情かおは「絶望」を写していた。
 
「エルドフィン……っ嘘だ! 嘘だ嘘だ絶対信じないっっ!! お前が……っっ」
 おい、アセウス、どうしたんだよ?
 何があった?! そんな顔して、泣きそうじゃねーか。
 聞こえないのか? なぁ、無視すんなよ。
 俺はここに居んだよ。
 めてくれよっ、お前まで俺のこと見えてないみたいにしないでくれよ……っ
 
 アセウスは俺を1ミリも見ないで虚空を見つめている。
 周囲ビットが吐きそうなほど重苦しい。
 なんだよぉっ?! 
 俺は視線を追って振り向く。
 視界に捉えたのは、鮮やかな赤毛の少年。
 カルホフディか?
 いや、少女かも……どっちか分からんけど、誰?
 
「お前なら、分かるはずだ」
 いや、分からんって。誰だよお前。
 つか、それ、アセウスの魔剣じゃ……
 何でお前が持ってんだよっ、アセウスは?!
「さぁ、剣を取れよ。お前の役割を果たせ」
 は? なんで。それは・・・アセウスの・・・・・魔剣だ。
 俺の役割って、んなもん知らねぇよ。俺がここに居る意味は……
 あれ? アセウス? どこ行った?
 俺はアセウスあいつを守れれば、何だって……
 
「私と戦うと言うのか、人間よ」
 アセウスを探す視界に、白髪、白い髭の老人が出現する。
 おわっっ! じーさん、どこから現れたんだ? ん? げっ
 侵食するように増してくる魔力に、細胞が押し潰される。
 目がおかしくなったか、ジジィが徐々に若返ってイケメンに……
 あれ? タクミさんか? つばの広い帽子で顔が見えねぇ
 でも、この桁違いの魔力、俺は知ってる気がする……っ
 
 蛇に睨まれた蛙みたいに目を離せない俺の前に
 少女が降り立つ。
「エルドフィンっっ!!」
 あ、ソグン。お前、戻ったんじゃ……
 ちょちょっ! オイオイオイ、また槍抜いて何をっ
「オージンに逆らうことなど、認められません!」
 はっ?! オージンにって、じゃあ、このオッサンっ
「更なる罪を重ねるつもりか」
 え? 今言ったの誰?
運命さだめには抗えないよ」
 誰が誰に言った?
「さ迷いし者よ、選びなさい」
「選択肢なんてないんだよ」
 待てよ! 全然訳が分かんねぇよっっ
 
「エルドフィンっっ!!」
「エルドフィンっっ!!!」
「エルドフィンっっ!!」
 
 うるさいくらいに名前を呼ばれる。
 それと同時にフラッシュバックみたいに俺を呼ぶ皆の顔が見える。
 アセウス、ジトレフ、カルホフディ、見たことないけど俺が良く知ってる・・・・・・・・はずの奴ら・・・・・
 ソグンと、まだ・・出会ってない・・・・・・ヴァルキュリャ達。
 戦いで傷付き倒れている姿も見える。
 悲痛な、ただならぬ表情で何か言ってる。
 なんだよこれっっ! 知らねぇよっっ! なんなんだよっっ! なにが……っ
 ――――って、本当に俺は知らないのか・・・・・・・・・・・……?
 ドクンッッ
 俺の心臓は普通じゃない拍動をする。
 ヤバいッ! これ・・ヤバいヤツ……っっ
 心臓じゃなくて全身ががガガガ――
 
 
「エルドフィンっ!」
 
 
 ハッと開かれた俺の目にアセウスの顔が映る。
 
 
「そんなまぢ寝したら夜眠れなくなるぞー? ほら、起きろよ。行こうぜ」
 
「ん……どこに?」
 
 
 上体からだを起こして周囲を見回すと、ソルベルグ家の客室だった。
 書斎机で眠り込んでしまったらしい。
 
 
「夕飯。ホフディの両親が誘ってくれた晩餐、準備が出来たって」
 
「あ、あぁ。今日は昼も夜も豪華だな」
 
「言えてる。本音言えば日を分けたいところだけど、滞在中は十分豪華な食事用意してくれるだろうからまぁいいか。タクミさんも配慮してくれて魚料理ほとんど無かったし」
 
「そういえば少なかったな、海鮮系」
 
ベルゲンこっちが本場だからねー。満喫出来るぜ~っ。めっちゃ楽しみ♪」
 
 
 部屋の外へ出ると鎧を脱いだ普通のお兄さんジトレフが待っていた。
 俺はアセウスをじっと見る。
 
 前世24年、現世18年。
 そのトータル42年で間違いなく一番、衝撃的な瞬間だった。
 
 辟易した前世より何もない、不便で退屈な世界で、俺は雑兵モブとして生きていくって決めた。
 初めて出来た、友達みたいなアセウス一人のために。
 それですら自分自身信じがたいのに、
 降ってわいた二次元みたいな劇的な展開。
 超絶可愛くて、エロくて、最強のヴァルキュリャおんなのこと専属契約した。
 彼女が守りたい形代かたしろの人間はアセウスで
 スーパーハニー使い放題の対価は、俺のこの世界での存在意義と一緒だった。
 てきとーに、決められた物語を追えばいいんだって思ってた。
 ぼっちだった俺に、大事な人間ができて、毎日うるさいくらいにハートを騒がしてくれる仲間やヴァルキュリャに囲まれて、楽しい青春のやり直しか、なんて満更でもなく思ってた。
 でも、そんな甘いものじゃないんだ、これ・・は。
 
 人の良い幼馴染みの背負ってる宿命ものはデカくて、重くて、危険過ぎた。
 神も、人間も、それ以外も、前世以上に面倒くさくて。
 チート能力スキルで助けるはずが、そう簡単には物語は進んでくれない。
 でも、もう、逃げる訳にはいかなくなった。
 逃ゲタイ逃ゲタイ
 大事な友達ものってのは、枷鎖かさになるんだと知った。
 逃ゲラレナイ!!
 
 俺の選択が仲間の死を招くのか? (怖イ)
 もしかしたら、俺がアセウスあいつを追い詰めてしまうのか? (怖イヨ)
 俺は、何のために? 誰かによってこの世界に転生させられたのか? (怖イッテバ)
 この世界で俺は何をやらかすんだ? (怖イ怖イイヤダ)
 
 どこか他人事みたいだった異世界人生が、現実になった。
 先行き不安で、すぐ後ろに研ぎ澄まされた刃物が待ち構えているみたいだ。
 決断や言動の一つ一つに逃げられない責任がつきまとう。
 しかも、まだ見ぬ未来が、夢となって俺に何かを伝えようとしている……
 怖イ怖イ怖イ怖イ怖イ怖イィィィイイイイッッッッ!!!!
 
 
「? エルドフィン? まだ寝惚けてんの?」
 
 
 俺の視線に気づいたアセウスがそう声をかけた。
 眩しくて温かい。
 寝惚けてるのだろうか。
 未来とおぼしきものが見えたという記憶はあるのに、
 見たものの記憶が一切ない。
 何かとてつもない怖さと、ヤバさだけが俺をさいなんでいる。
 こんな、今までの人生で一番衝撃的な、未来に怯える日になるなんて。
 三日前には思わなかったんだ、全ての始まりである、三日前には……。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...