ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ

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序章

《Asseus》罪と責務②

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「他にもお話しできることや、お力になれることがあると思います。せっかくですから、何日かゆっくり滞在して行かれてはいかがですか? 父も母もその方が喜びますし」
 
 
 カルホルディの声は穏やかだった。
 
 
「他にも力になれることが……なんて言った?」
 
「あると思います、だろ? どしたエルドフィン」
 
「アセウス、も一回言ってみ?」
 
「あると思います!」
 
「すげぇ、いきなり下ネタぶっこんできやがった。テレビカメラの前だぞお前」
 
「下ネタじゃねぇし」
 
「さすがメジャーリーグ行って二刀流するやつは違うな」
 
「え? 意味分かんねぇ」
 
「いや、分かるだろ、○谷翔平だよ」
 
「いや、分かんねぇだろ、あの学生時代の密着番組見てる奴なろう民にどんだけいるんだよ(笑)。攻め方無理あり過ぎ。ぶちこみたきゃ普通に天津○村でいいじゃん」
 
「!? アセウス!? お前、実は転生者だったのか?!」
 
「?! 今、俺何か言った? 口が勝手に……」
 
「「「??!!」」」
 
 
 エンディング近付いてきた作者のテンションヤバいな……
 互いに顔を見合わせた俺達三人は、これは触れない方が賢明だ、と合意した。
 よし、やり直しだ。
 
 
「是非ゆっくりしていってください(棒)」
 
「ありがとう、ホフディ。そうさせて貰う(棒)」
 
 
 (棒棒鶏食べたいな……と俺は
「思ってねぇっ!! 思ってねぇよ! カルホルディさんありがとう!! 一度に情報量多く入ってきても、頭がついていかないよなっ! 少し考える時間が必要だよっっ。とりあえず今はこれで解散して、滞在中少しずつまた教えて貰うことにしようっっ。なっ! なっ!」
 
 
 俺の言葉を合図に、三人していそいそと椅子から立ち上がる。
 カルホフディはスニィオを戻してしまっていたらしい。
 部屋を片付けてから後を追うと言うので、
 一度通っている俺が先導して部屋を出ることになった。
 
 まぁ、一本道だったしな。
 
 俺は手渡された松明を持って、細い廊下をゆっくり進んだ。
 薄暗く落ち着いた空気感にほっとする。
 
 
「当たっちゃったな、魔物モンスターたちの狙いが俺って」
 
「あぁ。まさかお前が神のディスティニーチャイルドだったとはな。人間の切り札か」
 
魔物モンスターを倒せる神の力だもんな。唯一の……」
 
「……ゆうて封印が解けたらの話だろ? 今まで全っ然みじんも狙われてねーし。何百年も封印されたままだったら魔物モンスターも忘れんじゃねぇ? こないだのがたまたまでさー。魔剣だってあんな程度の魔力じゃオージンからの神器か疑わしいレベルだし……。事情が分かってみたら、そんなに気に病むことない気がしてきたけど?」
 
 俺は内心とは裏腹にあっけらかんと返した。
 いや、ゴンドゥルと使った時は神のレベルだった。
 あれが魔剣の真の力……アセウスの封印が解けたら、こいつもあれくらいの魔力が使えるってことなのか? それか、もっと。言えねぇけど。
 もしかしたら、ハイリザードマンの自爆から守った時、あれは少し封印が解けかかってたんだろうか。
 それで魔物モンスターを刺激してしまったとか。
 もしそうなら何がきっかけなんだろう。
 まさか俺の転生じゃねぇよな。
 
 
「俺さ、封印を解いて、魔物を倒そうかと思うんだけど、どう思う?」
 
 
 俺は思わず立ち止まって、振り返る。
 松明を向けて照らしたアセウスは真剣な顔をしていた。不安そうだ。
 
 
「いんじゃね? お前が本当にそうしたいなら」
 
 
 軽く答えると、俺はまた歩を進める。
 「本当に・・・そうしたいなら・・・・・・・」?
 なんだそれ、だな、俺。
 
 ゆうても、選択肢なんてないだろ。
 どう思うかとか、どうしたいかに関係なく、事実は変わらねぇ。
 アセウスは死ぬまで魔物に狙われる、
 そのルートがスタートしちまったんだと思う。
 だから、ゴントゥルはあんな契約を持ちかけたんだろ、すげー辻褄が合う。
 逃げ続けるか、相手を倒すか、……まともな人間なら……
 それでも。
 
 
「俺は選択肢は2つある・・・・と思うぜ。先に苦労して魔物を倒して安心の余生を勝ち取るのと、適当に逃げ続けてドキドキしながらも苦労を平均的にならすのと。お前には悪いけど、俺はどっちも大して変わらないと思ってる。家のこととか、世界のこととか、お前の責務ちからのこととか、そーゆーのに義務感感じてってんじゃねぇなら、どの選択も面白いと思うよ」
 
 
 アセウスおまえだもんな、
 義務感感じるなって方が無理な話だろうし……。
 義務感とか自己犠牲とか、そういうのにがんじがらめの選択だったとしても俺は付き合うつもりでいる。
 
 
「……エルドフィンって、本当に凄いよな。この俺のバカみたいな考えにそんな風に言えるとかさ。……正直自分でも分からない。本当に自分の意思なのか、周囲への義務感から思わされてることなのか……でも、どっちでも構わない、ただそうしたいって思う自分がいるんだ。甘いのかな……」
 
 
 まぁ、そりゃそうだよな。
 「本当の自分」なんて、角煮まんの角煮みたいにポロッと取り出せるもんじゃねぇ。
 そもそも周囲からの影響含めて、「今の自分」ができあがってるんだ。
 俺はただ、お前に逃げ道を作っておいてやりたいだけ。
 
 
「じゃあ、決まりだな。なんか違ったしんどいってなったら止めればいいし! とりあえずやってみっか」
 
 
 俺の後ろでアセウスが静かに笑った。
 
 
「フィヨルドの森の死闘以上にヤバいことになりそうだけど、付き合って貰うってことでいい?」
 
「……当たり前だバカ。相棒だろ?」
 
 
 いちいち聞いてんじゃねぇよっ。
 俺は照れ隠しに、漫画で見たカッコいいキャラクターと同じ台詞を言う。
 顔が見えないってのは助かる。
 『タメシナヨ……タメシナヨ……タメシナヨ……正解なんてない』
 疾走感のあるギターサウンドが頭の隅から流れ出す。
 はッ、「転生」リベンジャーズだ。
 俺の足取りも合わせるように軽くなっていた。
 
 
「つかよー、それを言うならオッダ襲撃の方だろ。比較対象がショボ過ぎんだけどっ」
 
「あっはっ! ショボ過ぎて全然現実味ないな! どうやったら封印が解けるのか、まずそこからだなぁ」
 
「……アセウス、俺、ちょっと考えてることあるんだけどさ」
 
「お? 待った。先に俺に話させて。俺も話しときたいことがあるんだ。前に狙われる心当たりないかって聞かれた時、話せなかったんだけど……実は俺が魔剣に祈った」
 
「は???」
 
「俺に神話時代から代々課せられる責務つみがあって、魔剣に秘められた力があるなら、人生全部懸けても清算するから向き合わせてくれって。その翌日からなんだ。フィヨルドの森でハイリザードマンと戦って、あの青い塊を手にして、魔物に狙われて、魔剣が想定外の魔力を発動したのは。俺が魔剣に祈ったことで封印に触れたんじゃないかと思う」
 
「?! どーして、それっっ」
 
「どーしてそんなこと祈ったかって? 俺がお前のこと分かんなくなって旅が終わっちゃうんじゃって思ってた時だったから。そーなるくらいだったら過酷な運命でもなんでもこの身に起こればいいって思ったんだ。お前・・がそーゆーの夢見て欲しがってるの知ってたから。どーしてそれを言わなかったかって? エイケンうちの伝承だけじゃ信憑性も関係性もハッキリしなかったし、そんな駄々っ子みたいな話、恥ずかしくて言えるかよ」
 
 
 顔に熱が集まってくる、口回りの筋肉が弛緩する。
 まぢくそ顔が見えなくて良かったっっっっ
 てアセウスこいつそれ・・を狙ったなっ?!
 ちらっと後ろのアセウスを伺う。
 あの時の照れはこれか!!
 だったら最後まで隠し通せよっっ。
 ここで明かしてくるとか、なんのテクニックだよっっ。(いや、ただ手掛かり情報の共有デスネェ)
 タクミさん、こいつの本性、天使じゃなくて悪魔なんじゃねぇの??
 
 
「エルドフィン、聞いてる?」
 
 
 大丈夫だよ。
 麻薬みたいに、もう俺は中毒になってるから。
 『ダイタイノ感情ハそーだ、言エヨ?』
 年期の入ったぼっちには、
 
 
「あぁ、聞いてるよ」
 
 
 ……ダチから頼りにされるのって、たまんねぇ。
 
 
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