8 / 21
第8話
しおりを挟む
俺は不良が嫌いだ。
良からずと書いて不良というわけなので、やはり良いものではないのは確かである。
俺のような品行方正な純粋無垢な人間から見て、不良という学則に従わない、暴力に訴えて他人を害する輩を肯定することは出来ない。
これは至極当たり前のことである。
俺は不良が嫌いなのだ。
何故二度に渡り、そんなことを公言するのかと問われれば、答えは一つだ。
不良である同学年の唐沢 肇(からさわ はじめ)が俺の敬愛する神崎 小夜(かんざき さよ)さんにちょっかいを出しているからである。
神崎さんとは、俺が高橋の代打で図書委員の仕事をしているときに出会った。物腰の柔らかな人で、清廉潔白というスズランの花言葉をまさに体現したような女性だ。
俺は彼女と世間話から始めて、今では普通に学内の廊下ですれ違えば挨拶を交わす仲になった。
しかし、最近になって俺と彼女の図書館での貴重な時間を邪魔する輩が現れた。
俺は、唐沢が放課後の図書室で神崎さんと親しげに話している姿を目撃したのだ。
これが許されていいことか?否、許すまじ不良。
家庭に問題があるだとか、授業が面白くないだのほざいて学校に来ないことは別にどうでもいいのだ。
留年でもなんでもして、適当にその辺の野原でくたばればいい。
しかしながら、奴は放課後になると毎日のように図書室に現れては、黒髪清楚な乙女と談笑を始める。
ふざけるな!一貫性を持て!来ないなら来ないという信念のもと、生きろ。何を血迷ったことをしている?
不良は司書の教諭とも仲良さげに話している。
「神崎さんのおかげで唐沢君が学校に来てくれて嬉しいわ」
「は?別に気分で来てるだけだ。関係ねぇよ」
不良は即座に否定しつつも、顔は赤い。なんだお前?その反応は童貞か?
あと、不良が学校に来たことで嬉しがっているそこの教師。お前もちょっと不良が学校に来たくらいで褒めてるんじゃねぇよ。
普段悪いやつが良いことをすると株が上がるあの謎の現象。ギャップに萌えるとか下らないことを宣ってるんじゃない。
普段から素行の悪い奴よりも、普段から真面目な奴の方が良いのは自明の理だろうが?
生徒が学校に来るなんてのは当たり前のことだ。学生の本分は勉学だろう。
ぼんくら教師よ、アホな不良の更生を乙女に任せているなんてのは職務怠慢も同然だ痴れ者が。
と、不満を露わにしながらも今日も俺は彼らの談笑タイムをひそかに見守る。
あの不良に対抗すべき腕力も、怖い知り合いもいない俺は彼らに対し嫉妬の炎を燃やし、泣く泣く帰ることしか出来ないのだ。
帰り際に「あ、神崎さん」と声をかける。
「あ、佐々木くん。また高橋君に頼まれちゃったの?大変だね。いいよ。この時期だと人も少ないから明日は私一人で見ておくよ」と言われてしまう。
違います。下心からあなたと委員活動したいのです。
その反応から「もうお前来なくていいよ」と言われているようで悲しいので「まぁヒマだからいいよ」と適当に誤魔化す。
俺も童貞不良と変わらない返事をしている事実に、鬱屈した気持ちになる。
「お、佐々木。じゃあな」と唐沢も俺に声をかけてくる。何、顔を赤らめて声かけてきてんだクソボケが?
俺は何故か不良に気に入られ、奴は俺に挨拶をするようになった。うざいったらありゃしない。
こうして毎日、毎日敗北を喫する結果になり、とうとう俺は禁じ手を使ってしまう。
おら、食らえ!
俺は帰ると見せかけて、図書室の椅子に腰かける。
そして、憑依を行使する。
「あれ………佐々木君、席に座って、寝ちゃったね?帰ると思ったのに」
神崎は、机につっぷして寝ている俺の本体を見て、つまらなそうにつぶやく。
俺は少し悲しくなりながらも、作戦を実行する。
「そうだな?な?神崎。俺さぁマジで格好よくね?」
俺は片眉を上げて、神崎にウィンクするのだ。
唐突な自慢に彼女は眉を顰めて、素っ頓狂な声を上げる。
「へ?」
「だから俺ってさマジで格好良くね?ほら、この上腕二頭筋見てよ?ヤバ。かっくぃぃぃ!!痺れる!!」
俺は制服のシャツを捲り上げ、神崎さんの顔の前に腕を突き出し、筋肉を上下に動かす。
彼女は顔を赤らめながら、困ったような顔で俺の顔を見てくる。真意がわからないのだろう。
「はぁ。そうだね?」
とりあえず、ジャブはこの程度で良いだろう。
さぁさぁ。ここからお前の株を下げに下げまくって、図書室、いや学校にすらいられなくしてやるよ。
何も知らぬ、お前は目を覚ますと、浦島太郎状態であるだろうが、安心しろよ。俺は優しさの塊だから、ここを去っても町で会えば挨拶くらいしてやるさ。
良からずと書いて不良というわけなので、やはり良いものではないのは確かである。
俺のような品行方正な純粋無垢な人間から見て、不良という学則に従わない、暴力に訴えて他人を害する輩を肯定することは出来ない。
これは至極当たり前のことである。
俺は不良が嫌いなのだ。
何故二度に渡り、そんなことを公言するのかと問われれば、答えは一つだ。
不良である同学年の唐沢 肇(からさわ はじめ)が俺の敬愛する神崎 小夜(かんざき さよ)さんにちょっかいを出しているからである。
神崎さんとは、俺が高橋の代打で図書委員の仕事をしているときに出会った。物腰の柔らかな人で、清廉潔白というスズランの花言葉をまさに体現したような女性だ。
俺は彼女と世間話から始めて、今では普通に学内の廊下ですれ違えば挨拶を交わす仲になった。
しかし、最近になって俺と彼女の図書館での貴重な時間を邪魔する輩が現れた。
俺は、唐沢が放課後の図書室で神崎さんと親しげに話している姿を目撃したのだ。
これが許されていいことか?否、許すまじ不良。
家庭に問題があるだとか、授業が面白くないだのほざいて学校に来ないことは別にどうでもいいのだ。
留年でもなんでもして、適当にその辺の野原でくたばればいい。
しかしながら、奴は放課後になると毎日のように図書室に現れては、黒髪清楚な乙女と談笑を始める。
ふざけるな!一貫性を持て!来ないなら来ないという信念のもと、生きろ。何を血迷ったことをしている?
不良は司書の教諭とも仲良さげに話している。
「神崎さんのおかげで唐沢君が学校に来てくれて嬉しいわ」
「は?別に気分で来てるだけだ。関係ねぇよ」
不良は即座に否定しつつも、顔は赤い。なんだお前?その反応は童貞か?
あと、不良が学校に来たことで嬉しがっているそこの教師。お前もちょっと不良が学校に来たくらいで褒めてるんじゃねぇよ。
普段悪いやつが良いことをすると株が上がるあの謎の現象。ギャップに萌えるとか下らないことを宣ってるんじゃない。
普段から素行の悪い奴よりも、普段から真面目な奴の方が良いのは自明の理だろうが?
生徒が学校に来るなんてのは当たり前のことだ。学生の本分は勉学だろう。
ぼんくら教師よ、アホな不良の更生を乙女に任せているなんてのは職務怠慢も同然だ痴れ者が。
と、不満を露わにしながらも今日も俺は彼らの談笑タイムをひそかに見守る。
あの不良に対抗すべき腕力も、怖い知り合いもいない俺は彼らに対し嫉妬の炎を燃やし、泣く泣く帰ることしか出来ないのだ。
帰り際に「あ、神崎さん」と声をかける。
「あ、佐々木くん。また高橋君に頼まれちゃったの?大変だね。いいよ。この時期だと人も少ないから明日は私一人で見ておくよ」と言われてしまう。
違います。下心からあなたと委員活動したいのです。
その反応から「もうお前来なくていいよ」と言われているようで悲しいので「まぁヒマだからいいよ」と適当に誤魔化す。
俺も童貞不良と変わらない返事をしている事実に、鬱屈した気持ちになる。
「お、佐々木。じゃあな」と唐沢も俺に声をかけてくる。何、顔を赤らめて声かけてきてんだクソボケが?
俺は何故か不良に気に入られ、奴は俺に挨拶をするようになった。うざいったらありゃしない。
こうして毎日、毎日敗北を喫する結果になり、とうとう俺は禁じ手を使ってしまう。
おら、食らえ!
俺は帰ると見せかけて、図書室の椅子に腰かける。
そして、憑依を行使する。
「あれ………佐々木君、席に座って、寝ちゃったね?帰ると思ったのに」
神崎は、机につっぷして寝ている俺の本体を見て、つまらなそうにつぶやく。
俺は少し悲しくなりながらも、作戦を実行する。
「そうだな?な?神崎。俺さぁマジで格好よくね?」
俺は片眉を上げて、神崎にウィンクするのだ。
唐突な自慢に彼女は眉を顰めて、素っ頓狂な声を上げる。
「へ?」
「だから俺ってさマジで格好良くね?ほら、この上腕二頭筋見てよ?ヤバ。かっくぃぃぃ!!痺れる!!」
俺は制服のシャツを捲り上げ、神崎さんの顔の前に腕を突き出し、筋肉を上下に動かす。
彼女は顔を赤らめながら、困ったような顔で俺の顔を見てくる。真意がわからないのだろう。
「はぁ。そうだね?」
とりあえず、ジャブはこの程度で良いだろう。
さぁさぁ。ここからお前の株を下げに下げまくって、図書室、いや学校にすらいられなくしてやるよ。
何も知らぬ、お前は目を覚ますと、浦島太郎状態であるだろうが、安心しろよ。俺は優しさの塊だから、ここを去っても町で会えば挨拶くらいしてやるさ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ
neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。
※この作品は小説家になろうにも掲載されています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
乙女ゲームのヒロインですが、推しはサブキャラ暗殺者
きゃる
恋愛
私は今日、暗殺される――。
攻略が難しく肝心なところでセーブのできない乙女ゲーム『散りゆく薔薇と君の未来』、通称『バラミラ』。ヒロインの王女カトリーナに転生しちゃった加藤莉奈(かとうりな)は、メインキャラの攻略対象よりもサブキャラ(脇役)の暗殺者が大好きなオタクだった。
「クロムしゃまあああ、しゅきいいいい♡」
命を狙われているものの、回避の方法を知っているから大丈夫。それより推しを笑顔にしたい!
そして運命の夜、推しがナイフをもって現れた。
「かま~~~ん♡」
「…………は?」
推しが好きすぎる王女の、猪突猛進ラブコメディ☆
※『私の推しは暗殺者。』を、読みやすく書き直しました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる