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第三章
血の契約
しおりを挟む「契約って…血液を渡す必要が、あるんだよね?」
そう一正が聞くと、ジスは、
「そうだ。だけど直接貰うのは気が引ける」
「これに入れてくれ」
と採血管を一正に渡した。
人間への思いやりがある…
気が引けるといった感情を持つのか…
なぜ、ヴァンパイアが自分を守ろうとしてるんだろう…
一正は頭で様々なことを考えながら左腕の血管から血を抜き、ジスに渡した。
一正「僕の血が、キミの役に立つならいいよ」
ジスは、「ありがとう」
と言い、受け取った採血管を左の太ももに思い切り打った。
それからの2人は、共に日々を過ごした。
ジスの姿は、血の契約を交わした日以降、徐々に人間味を増した。
一正「ジスは、あんまり笑わないよね」
ジス「八重歯が片方にしかないから、あまり見せたくない」
一正「いいじゃん。見せてよ」
ジス「やめてくれっ」
からかい合い、笑い合った。
一正「ジスは家族はいるの?」
ジス「父親がいた。ただ幼い頃の記憶は、あまり覚えてない」
「ただ1つ、鮮明に覚えているのは人間と楽しく遊んだ記憶。それだけが俺を生かす気力になっている」
一正「そうなんだ。だから僕のことも助けてくれたんだね」
ジス「そうかもしれない」
一正「僕の家族も父親だけだよ。僕が8歳の時に、病気で亡くなってしまったけど」
「吸血鬼の研究者だったんだ。ジスのような優しいヴァンパイアと友達になれていること、自慢したかったなあ」
「きっと羨ましがられたと思う」
ジス「実験台に乗せられるんじゃないか?」
一正「まさか!…いや、ありえるかも」
2人は笑いながら、夕方の木の立ち並ぶ小道を歩いた。
一正の家では、
一正「これが、ニンニク。ニンニクが苦手なんでしょ?」
と言いながらニンニクを見せる一正に、
ジス「これは、たしかに得意ではないな。ウウ…匂いが漏れ出ている」
一正「じゃあ、こっちをどうぞ」
そう言い、にんにくチューブをジスに渡した。
ジスは、苦笑いをしていた。
こうした何気ない日常が、2人とって、とても楽しかったのだった。
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