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第2話 懐かしい日々

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「ふぅ…どうですかお嬢様。これで私の実力は証明できたでしょうか?」
「えぇ十分よ。というか十分すぎるくらいね。」

彼が私の前に運んできたのは、キングウルフと呼ばれる強力な魔物の死体だ。
この魔物は狼系統の魔物を従え、街を襲うこともある。そして街をものの数分で破壊することさえ出来る恐ろしい魔物だ。
従えている数が少なかったとしても、十分強いモンスターだ。

「ごめんなさい…貴方の力を疑うようなことを聞いちゃって。」
「いえ大丈夫ですよ。私は護衛としての力を証明しなければ、安心して任せてもらえなかったでしょうから。さて…護衛兼従者である私の力は証明することが出来ました。次はお嬢様の力を見せてくれませんか?」
「私の力?まだ魔法だって禄に扱えないけど…それで構わないなら良いわ。」

私は魔導書を開いて、現状で扱える魔法を一つ使用した。

「『氷弾』…これが私が今、唯一使える魔法よ。今の所これが一番強い魔法ね。」
「なるほど。ご年齢や、受け取ってからの日数を考えれば十分すぎるほどです。お嬢様の成長は期待できますね。ただいきなり私に打つのはおやめください。」
「ふふ…ありがとう。ごめんね?」

私は立ち上がり、庭へと向かった。
ちなみに氷弾はいわゆる攻撃用の魔法だ。狙いをつけて放ってみたけど防がれてしまった。

前世の私であればもっと強力な魔法を扱えていた。あの頃を懐かしみたいが、今はまず、一つずつ魔法をマスターしていこう。
氷弾は消費する魔力に関しては少ないため、牽制として非常に優秀な魔法だ。
だが威力に関しては前世の1割も出せていない。
前世の私は氷弾だけで人を一撃で殺すことが出来ていた。

まず直近の目標は…自分の全盛期の力を取り戻すことだ。
肉体的に、ちゃんと絶え間なく努力すれば問題なく取り戻せるはずだ。

「ねぇゼノン。貴方に一つお願いがあるの。頼めるかしら?」
「なんなりとお申し付けください。私に出来ることであれば全力で叶えましょう。」
「ふふっ…いい返事ね。貴方の魔法の属性は『空間』と聞いてるのだけど、間違いないかしら?」
「えぇ私の魔法属性は空間です。それがどうかされましたか?」
「私の魔法を訓練するときに、貴方の魔法を有効活用したいの。頼めるかしら?」
「…分かりました。」

彼の了解を得た所で、私はすぐに魔法の訓練を行うことにした。
彼には私の成長のための糧になってもらうわ‼

「…お嬢様。私は何をすれば良いのですか?」

私達二人は、屋敷の直ぐ側にある修練場に足を運んでいた。
修練場で私と彼は向き合いながら、話をしていた。

「貴方には私の攻撃を反射して欲しいの。出来る?」
「出来ますが…それで一体何をするのですか?」
「良いから良いから‼行くわよ‼」

私は彼に向けて氷弾を放った。
彼は私の要望通り、私の魔法を反射してくれた。彼の表情は困惑に包まれていたがそんな事に気を取られている場合ではない。

反射された氷弾は私に向かって来ている。
彼の顔に若干の焦りが浮かんでいたが、次の瞬間にはほっとした表情になっていた。

「ははっ…何をするのかと思ったら、自分で放った魔法を自分で迎撃するとは…まさかこんな事が出来るとは思ってもいませんでしたよ‼」
「あらそう?一応、これは立派な訓練よ。防御のしてばかりじゃこの先戦っていけないわ。魔法は迎撃してしまえば特段脅威にはならないわ。貴方も知ってるはずよ。」
「そうですね。私も似たような訓練はしたことがあります。ただ、ここまでではありませんよ。他人に撃ってもらったものを迎撃したことくらいしかありません。いや~面白い物を見せてもらいました。ありがとうございます。」
「ふふっお礼は良いわ。それよりも…私の訓練に付き合ってもらうわよ。」

私が今すぐに成長するためには、自分の力を再度理解する必要がある。
私の魔法属性は『冬』これは簡単に言えば、氷を操ったりすることが出来ると想像できる。

しかし厳密に言うと、この氷は空気中に漂っている水蒸気を使って作っているのだ。
だから…それを応用すれば、氷弾の威力を見た目を変化させずに上昇させたりすることが出来る。

「ふぅ…流石にこれ以上は魔法が使えないわ。ちょっと休憩させて頂戴。」
「勿論です。私は貴方の従者ですから。貴方の命令には従いますよ。さて…お嬢様が休憩されている間に、私は自身の稽古をさせていただきます。構いませんね?」
「えぇ。自己研鑽は大切ですから。」

彼はとても冷徹な人間だ。
その性格は魔法に影響されたのかもしれないし、彼に起こったことが原因なのかもしれない。

彼が使う空間魔法は非常に強力だ。王族や貴族であればその有用性、希少性からヨイショされて飼い殺されていただろう。
…彼は平民だ。身分的には一番下とまでは言わないものの、低い身分だ。そんな彼にとって空間魔法はあまり良いものではなかっただろう。

彼についてとても詳しい訳では無い。でも数年以上も一緒にいたのだ。
彼の性格や趣向なんかは良く知っている。

今世では彼にあんな思いはさせたくないし、あんな事をさせたくない。





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