異世界で僕…。

ゆうやま

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3章 26話

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イビルゲートが認められてティルナノクの経済復興の目処が立った。

すぐでも取り掛かりたいところだが…レヴィとの約束もあってまず海に行く事にした。

「皆さん…海でバカンスを楽しみましょう」

「わーい♪若様!ありがとう♪」

「レヴィ…良かったね」

「うんうん♪」

「ハルト君…急過ぎるよ!早く水着を用意しなくちゃ!」

「あ、私も!」

「お姉ちゃん…待って!」

「ギルタフリル…私の分もお願い」

相変わらずキングは僕から離れてくれなくて双子に水着を頼んだ。

場所はここから一番近い海。

魔王国の港都市パーマルでバカンスをすると決めて…まず沢山の支援物資を送ってくれたお礼と滞在許可を貰いに魔都ベヘイーゼルに行く事にした。

僕とルル姉とバルちゃん…キングと双子はジズに乗せて貰って魔都へ…レヴィとほかのみんなはバムを乗って先にパーマルに向かった。

「うほー!早いな!もう魔都が見えて来たよ」

「ううう…これマッハいくつ?」

「お、お兄ちゃん!大丈夫?」

ジズは凄まじいスピードでルル姉が僕の前で風の抵抗から守ってくれなかったら…きっと皮膚が丸ごと千切れていただろう。

一瞬で魔都まで着いたのはいいが…アイシビエッチがフラッシュバックして気持ち悪くなった。

ジズの巨体を見た魔都のみんなは大騒ぎで…テスラさんが出迎いに来てくれた。

完全武装して軍まで率いてな…。

「おお!ルナ様とハルト殿と双子殿ではないですか!い、妹様もご無沙汰です」

「あ?なんか私だけ歓迎してない表情だが…」

テスラさんは今もバルちゃんに怯えているようだ。

「テスラさん…連絡もなしで来てすみません」

「我ら魔王国はいつもハルト殿を大歓迎します!気になさらないでください」

僕達はテスラさんに歓迎されて魔王城に入った。

「テスラよ…ティルナノークに大量の支援物資を送ってくれて心から感謝するぞ」

「ルナ様!勿体無きお言葉…恐縮です、それより魔都にはどんなご用件で?」

僕達は支援物資の礼を言ってからレヴィの事で港都の近い海で一泊する事を伝えると喜んで許可をもらった。

「テスラさん!ありがとう…レヴィには迷惑かけないように言っておきます」

「それは…、助かります」

「それじゃ…僕達はこれで失礼します」

「私も同行して頂けないでしょうか?」

「僕はテスラさんと一緒だと嬉しいです」

みんなも特に反対しなかったのでテスラさんもジズに乗って一緒に港都に向かった。

「あの…ハルト殿?背中の方は?」

「魔王よ、私の事は気にするやな……話しかけるな」

「ひぃー!は、はい…」

テスラさん地縛霊のように僕の背中に乗っているキングが気になって仕方ないようだったが…睨みつけられてからそれ以上聞いてこなかった。

「ハルト殿は聖都の噂をお聞きになりました?」

「聖都の噂?」

「はい…聖都のイビルゲートには主以外にもう一体の魔獣が封印されているらしいです」

「はい?初めて聴きました」

「その魔獣が目を覚まして封印を破ろうと暴れているせいで聖都のイビルゲートには今魔物が急激に増えて冒険者達の怪我人が絶えないと…」

「テスラよ…それを誰に聞いた?それは天界の秘密だ」

ルル姉はその噂話を聞いて怖い顔をしてテスラさんに問い詰めた。

「あの…その話は母から聞いた話ですが…母は聖都のイビルゲートで一緒だったルナ様から聞いたらしくて…」

「あ、あれぇ?私…そんな話言ったっけ?」

「ルル姉…イビルゲートに勝手に入ってたの?」

「あははは…過ぎた事よ」

「聖都の下に何が封印されているの?」

「オーフィスが封印されている」

「げっ!まじで?」

「うん…ラーが消滅して、制御が効かない奴を聖都の下に封印したが…そこにイビルゲートが現れたのよ…」

「へぇ…だから聖都のイビルゲートはあれほど難易度が高い訳ね」

今の神々には不死身のオーフィスを消滅させる術がないらしくて封印するしかなかったとルル姉はため息と呆れた顔をした。

「まあ…そんな柔な結界ではないから破れる前には神々も対処できるだろうし…心配はいらないわ」

「それじゃ…その対処が出来るまで冒険者達をうちに来てもらうのは難しそうね」

「あ………」

「残念ながら…そうなるでしょうね」

「ハルトお兄ちゃん…元気出して!なんとかなるだろう」

「この話はみんなには内緒ね」

バカンスを楽しんでいるみんなに水を差したくなくて聖都の話は黙っている事にした。

海に着くとレヴィは元の姿に戻って海の中を楽しく泳いでいて…その姿を見たテスラさんは不安そうな表情だった。

「あの…津波は大丈夫ですかね?」

「大丈夫ですよ!津波対策は万全です」

バムも神獣の姿に戻って防波材代わりに津波を防いでくれていた。

僕達は砂浜に降りて先に来たオーディン達と合流した。

「ただいま!」

「来たか…先に楽しんでいる」

「そうのようですね」

以外とゲーム廃人組カオス、アプスー、ナイア兄さんも来て日光浴をしていりる。

「テスラさん…あちらにはあまり近寄らない方がいいですよ」

「は、はい…なんかここ一帯危険な気配がプンプンしますが…特にあそこは死の気配がしますね…一緒に来た近衛に注意しておきます」

「はい…死者が出ないようにお願いします」

テスラさんは警護に来た近衛にカオスに近寄らないように厳重注意しに行った。ルル姉達とバルちゃんは水着に着替えに行った。

「ハルト…私達も着替えたい」

「キング様…こちらへ」

双子も早く海に入りたいらしくてキングを催促した。

「わ、わかったよ!ハルト…行こう」

「は、はい?僕も?ひょっとして背中に乗ったまま着替えるつもり?」

「当たり前じゃん?かはっ!」

双子はキングに首チョンパして気絶させて脱衣所に連れて行った。

主の娘をあのように扱って大丈夫かと心配になったが…アプスーは見てないふりして黙認した。

オーディンはヴァルキュレ達を連れて来ていてみんな海水浴を楽しんでいた。

戦場には一切の容赦ない彼女達もここでは可憐で美しい乙女達にしか見えない。

「マトニちゃん…怖くないよ?こっちおいで……」

「グルルル…」

水を怖がって中々入ろうとしないマトニをスクルドは不安そうな目で見守っている。

マトニはスクルドに懐いてしまって…僕の事はもう忘れた感じだ……薄情者め。

「おっ!来たか…言われたもの持ってきたわ」

「さすがラグレシアさん!」

昼にはバーベキューをする予定でラグレシアにバーベキューセットと炭を頼んで作って貰った。

「いつも頼りぱなしですみません…」

「これぐらいは大したことないわ…それより神殿の事は頼んだわよ」

「は、はい…ラグレシアさんもゆっくりして下さい」

「お昼…楽しみに待ってる」

「はい!任せて下さい」

ティルナノークの一番功労者のラグレシアには頭が上がらないほど色々無理を言って助けて貰っている。

彼女がティルナノークに流れ込んだ事は本当に幸運だったと思う。

昼まではまだ時間があったのでレヴィの楽しんでいる姿を見て僕もちょっと泳ぎたくなった。

水着に着替えて海に入ろうとしたが…凄い勢いの波が岩を砕くのを見てあきらめた。

「ハルトちゃん…あと少しでレヴィも満足しそうだから…ちょっと待っててくれる?」

「楽しそうに泳いでいますね…これからジズさんにレヴィを定期的に海に連れて行く事を頼みたいですが…」

「うん…気を使ってくれてありがとう」

ジズはレヴィの泳ぐ姿を見ながら優しい笑顔で笑っていた。

「しかし…バムの体、眩しいね」

「うん…凄くピカピカだね」

レヴィの津波は高圧洗浄のようにバムの体を新車のようにピカピカにした。

「気持ちいいな!レヴィ!もうちょっと波の強度を上げろ!」

「あいあい♪」

バムも気持ち良さそうにレヴィの津波を利用して体を洗っていて…海に入るにはしばらく時間がかかりそうだ。

プァフニールが貝を沢山拾って僕に持ってきた。

「なぁ…ハルト!この中に真珠が出来るって本当なの?」

「貝が全部真珠を作る訳ではないよ…クロチョウ貝とかアゴヤ貝、ホタテ貝などだけど…この貝達の中には残念ながらないよ」

「そうなのか…一儲け出来ると思って必死に集めたのに…」

プァフニールはどこに行っても頭の中にはお金の事しかないようだ。

「でも…その貝…美味しそうだよ?」

「あ?貝って食べれるのか?」

「うん…美味しいよ」

「へぇ…それは楽しみだね」

アルケーミュスには貝は食材と認識してないようでプァフニール集めた貝を貰って水に入れて砂抜きをした。

「ハルトォー!」

「うわっ!」

「やっぱ…ここが一番落ち着く」

キングが飛んできてスズメが巣を作ったように僕の背中に張り付いた。

「おい…いい加減ハルト君から離れてくれないかな…」

「あ?破壊の女神よ…彼は私を守る義務があるんだよ」

「ここでは君をどうにかする者は居ない!それに下界の者が君に敵うもんかよ!」

「油断大敵だ…私も父も油断して痛い目にあったから二度とそんなヘマはしないつもりだ」

「あのね!」

短気で我慢を知らないルル姉は爆発寸前でこのままでは流血事態になると思った。

「ルル姉…水着…凄く似合ってる…可愛い!」

「あ?…うん、そう?」

「ルル姉の水着姿…初めて見て…ちょっとドキドキするよ」

「うふふ…もう…ハルト君たら…いやらしい♡」

ルル姉は水着を褒めるとすぐ機嫌が良くなった。

ルル姉の清純なツーピースでスカートの水着であのダイナミックな胸と完璧なボディラインをバランスよく見せつけていて…このデザイナーは男心を知り尽くした者だと感心した。

「へぇ…そいう風に女を口説くのね」

「ハルトさん…目がいやらしいです」

海に来た時からこうなると予想していた僕は事前に対策していた。

「あ、あの…僕も一応…男なので…不可抗力だよ」

「んじゃ…私は?」

「どうでしょう?似合ってますか?」

「へぇ…二人とも…水着姿が凄く似合ってる…綺麗だよ」

「ふ、ふーん…そう?」

「ハ、ハルトさん…お口が達者ですね」

双子も照れて…褒められて悪い気分ではないようだ。

露出を控えめだがしっかりとボディラインを見せるタイトなワンピースの水着で胸がちょっと大きく見えるパットいりの水着だった。

胸の事にはあまり触れないのが身のためだと思って突っ込むのはやめた。

「ハルトお兄ちゃん!私はどう?」

バルちゃんは黒いワンピースの水着で綺麗な銀髪が目立って可愛いかった。

でも…幼女なので何も感じない。

「うん…凄く可愛い可愛い…似合ってる」

「えへへ♪でしょー♪」

それに気付いた双子は喜んでいるバルちゃん哀れな目で見て鼻で笑った。

「ハ、ハルト殿…私は…どうでしょうか?」

「おぅ……テスラさん!凄く似合ってます!大人って感じで魅力的です」

「そ、そうですか!ありがとうございます!」

テスラさんも僕の感想に満足した感じで喜んでいた。

赤い水着で少し露出があるところをレースでカバーしたチラと見せつける憎いデザイン…。

テスラさんのあのコーディネーターのセンスは凄かった。

「テスラよ…ちょっといいか?」

「なぁなぁ…魔王…こっちにいらっしゃい」

「は、はい?」

ルル姉とバルちゃんがテスラさんを連れて脱衣所に入った。

「ル、ルナ様!妹様!何を!いやー!」

「暴れるな!その水着はハルト君の目に毒だから着替えてもらうぞ」

「魔王のくせに…生意気だ!」

「うううう…」

テスラさんはお色気など微塵もないシマシマのタイツの水着に着替えさせられた。

「ハルトハルト…私は?」

「キング様も…最高です…」

「そう?えへへ♪」

キングも水着の感想を求めたが…背中に張り付いていたので見えない。

でも!背中にダイレクトに伝わる生肌の感触と暖かい体温は最高だった。

その時…背筋が凍るほどの冷たい視線を感じて振り向くとカオスが不機嫌そうに僕を見ていた。

「キング様…ちょっとカオス様の所に行きます」

「……ハルト、生きて帰ってきて」

キングは背中きら降りて素早く双子の後ろに隠れた。

カオスのおかげで取り憑かれた霊は払えたが…機嫌を直してもらえないと…僕の命が危うい。

「なぜか…カオス様が凄く怒ってるように見えるけど…」

「そんなに怖がらなくていいよ?私がいるじゃん」

「お兄ちゃんも隣にいるから大丈夫だよ」

ルル姉とバルちゃんが付き添ってくれてちょっと安心した。

ルル姉は…元々怖いもの知らずで…バルちゃんはナイア兄さんの前には強気だ。

「カ、カオス様…怒ってように見えますか…僕、何かしました?」

「あ?怒ってない…」

「……そ、そうですか?」

「ふーん…それにしても凄いモテぶりだな…この女たらしめ」

「はうっ!」

カオスの言葉は刺々しかった。

「すみません…自重します」

「あははは!なんだ?カオス…嫉妬か?」

「黙れ…筋肉ダルマ」

「や、やめんか!」

カオスはアプスーを砂に埋めて顔だけ残して落書きを始めた。

「カオス様…これをどうそ」

ナイア兄さんが何かの液体が入った瓶を取り出してカオスに渡した。

「ん?なんだこれは?」

「海の定番のイベントです」

「海の定番のイベントはポロリじゃないの?」

「いやいや…今はオイル塗りが流行りです」

「なるほど…さすがだな!」

ナイア兄さんのおかげでカオスは機嫌が直って…あのピンポイントを狙った機嫌取り法を是非僕も習得したいと思った。

「ハルトや…塗って差し上げなさい」

「えっ!ぼ、僕が?」

「な、なんだ…私じゃ…いやなのか?」

「いいえ…そんなんじゃなくて…恐れ多くて」

「そんなの気にするな!さあー!早く塗って♪」

「は、はい…では失礼します」

僕はオイルを手に付けてカオスの背中に塗った。

「ひゃっ!」

「うわっ!どうしました?」

「い、いや…ちょっと冷たくてびっくりしただけよ…続けて…」

「す、すみません…初めてなのでよくわからなくて…」

「そ、そう?初めてないのか?それは仕方ないね…」

カオスの驚いた声を聞いてみんなキョトンと見ていた。

「うむ…お前のそのような声…初めて聞いたわい…中々可愛い声だったぞ?」

「アプスー…顔まで埋めるわよ?」

「…すまん」

気を取り直してオイルを塗っていたが…カオスは幸せそうにリラックスしていた。

「う…うむ…あっ…はぁはぁ…」

「あの…カオス様?変な声出さないでください」

「あ、私も…ど、努力して…る…あっ…はぁはぁ」

そんな気を抜いているカオスを見てちょっとサービスして情報を引き出そうと思った。

それで…小さな頃によく父と喧嘩して機嫌が悪い母のために磨いたマッサージの腕を披露した。

「あっ…はぁはぁ…なんか凄く気持ちいいわ」

「そうですか?イビルゲートの件でお世話になったお返しですよ」

「中々上手いわね…そこ!気持ちいい」

「肩が凝ってますね…ゲームのやり過ぎでは?」

「そうね…ちょっと控えておくわ…」

丁度いい雰囲気になって情報を引き出そうとした時に後ろから怖い視線を感じた。

「なぁ…ナイア」

「な、なんだ?破壊の女神よ…」

「そのオイル…私にもくれ!それで前の事は許してやる」

「……う、うむ、バルのトマトの刑もチャラにしてくれるか?」

「チッ…わかった」

「ううう…お兄ちゃん!ありがとう」

ルル姉はオイルを持って僕の背後でじっと見ながら待機した。

「ナ、ナイア…私もそれをくれ…それで前の事は許してやる」

「キ、キング…?」

「あの…ナイアさん?私達には?」

「貴方の友人の方に私達…殺されたんですが?」

「う、うん…?わ、わかった」

ナイア兄さんは最初から準備していたように皆にオイルが手に渡った。

人の気も知れず欲望に忠実な4人にもオイルを塗る羽目になった。

「それよりなんか聞きたい事がある顔だね」

「えへへ…カオス様には敵いませんね…す、すみません…ここも凝ってますね」

「素直でいい子ね…はぁはぁ…そこもうちょっと強くね」

カオスには嘘や下手な言い訳をするより素直に謝って助けを求める方がいいと思った。

「せっかく建てたイビルゲートが聖都の事で今までの努力が無駄になりそうで…」

「ウロボロスの事か?そうだな…せっかく建てたイビルゲートがあのままではね」

カオスは既に状況を知っていたので説明する手間が省けた。

「なぜウロボロスが聖都の下に封印されました?」

「うむ…話は長くなるが…」

臆病なラーは益々文明が発達して増え続ける人間を恐れた。

それで…セグメントとウロボロスを下界に送り込んで滅ぼす計画を立てた。

セグメントは伝染病をばら撒き…人間を減らしたあとウロボロスが病気が広がらないように凍結するつもりだった。

しかし……その計画は失敗に終わった。

セグメントの伝染病で人間は沢山死んだが…伝染病は凍結されなかった。

「人類が…何万年前から急速に拡散したウィルスから苦しんで…その後風土病となって数千万の人が死んで数々の文明が滅んだ…話ですね?」

「うむ…そうだ、しかし、イシスがウロボロスの半身を引き離す事で凍結は出来きた…その後、計画に失敗して様々な神々から批判を受けたラーは力と権威をイシスに奪われた」

「半身ですか?確かにウロボロスは2匹!じゃ…もう1匹は今どこに?」

「アルケーミュスのどこかの海にいるはずだ…そいつを探して会わせてあげればあの子も理性を取り戻せる」

「ありがとうございます!レヴィに捜査を頼んでおきます…」

「そうだな…レヴィヤターンならやつを見つけるのは難しくないはずだ…」

「もう1匹のウロボロス…」

「やつは凶暴だが…真名を言えば話ぐらいは聞いてくれるだろう…」

「真名ですか?」

「聖都に封印されている子の名はオフィス…もう片方の名はヨルムンガンドだ… 」

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