異世界で僕…。

ゆうやま

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3章19話

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レヴィのバハムート特製弾を搭載したレールガンを食らってヤマタノオロチが倒れると守護神達はバム達から離れて、カンナカムイも素早く僕から退いてヤマタノオロチに戻った。

「ふふふ…これで勝負が決まりそうね」

「さて…終わりにしようか」

「ヤッホー♪血祭りだよ♪」

「待て待て待ってぇーい!」

バム達は戦いに夢中で目的を忘れているようで僕は慌てて止めた。

「若旦那様?」

「ん?ハルトちゃん?どうしたの?」

「若様♪見ました?私の必殺技!ばーちゃん!もう一回やる?」

「あの…やめてくれる?僕達はヤマタノオロチを討伐しに来た訳じゃないよ?目的を忘れてない?」

「あ……」

「レヴィ…祭りは中止だな」

「そうだね…残念」

バム達も目的を思い出したようでしょんぼりしながら退いてくれて、僕は守護神達の前に出て謝った。

「ごめんなさい!誤解があって戦いになってしまいましたが…僕達はヤマタノオロチを倒しに来た訳ではありません」

守護神達は僕達が戦う意志がないと分かってくれたようで先までのピリピリした殺気立つ感じはなくなった。

チキサニがハルニレの木を召喚し、ヤマタノオロチを癒すとカンナカムイとレタッリチはこのイビルゲートを調べているようにみえた。

「一体誰がこんな規模の四凶四罪の扉を開いたかしら?」

レタッリチの質問に僕はティルナノークに置かれた事情の為にイビルゲートを開いた事と核なる者の存在を確認する為に最深部に降りる最中に不安定な空間に落ちて最深部に来た事…それと、僕が食われたと勘違いしてバムがヤマタノオロチを襲って戦いになった事を説明した。

「そうか…外の騒がしい気配はアルケーミュスの神々の気配だったのね」

「しかし、まだここは不完全で外に戻るにはしばし時間がかかりそうです」

「あっ!そうだ!若様…カオス様からこれを渡されました」

「ん?なにそれ?」

レヴィから不思議な感じの黒い石のような物を渡されて見ているとバムがそれが何かわかっているような表情をした。

「バムはこれが何か分かる?」

「はい…若旦那様、それはカオス様の原点移動石です」

「原点…移動石?」

その石は設定された場所に空間移動出来るようで、時空繋ぐ事や空間を移動する魔法は未だに解明すら出来てない魔法…人間はおろか神々も完全に扱える者はほとんどいない。

「帰還魔法のようなものか…これは便利だね」

「はい…一瞬で外に出れます」

「わーい♪これで帰れるね」

「早くここから出たいわ…暗いし、湿気臭い」

「そこの者共よ…待ちたまえ」

僕達は目的を果たしたので原点石を使って帰ろうとし時、倒れていたヤマタノオロチが意識を取り戻し、僕達を呼び止めた。

「痛たたたた……先のアレはなんだ?骨の芯まで響いたわい」

ヤマタノオロチはその巨体を立ち直して8つの頭を僕の前に近づけた。

その顔を間近に見るとすごい迫力が半端なくて怖かった。

「先の女が若旦那と言った者は君か?」

「は、はい…うちのバハムートが失礼しました」

「なるほど…素手でわしに襲いかかって来て正気じゃないと思ったが…彼女があの天界の柱か…通りで強いはずだ…」

「まず…勝手にここに呼び寄せた挙句に襲ってしまった事を謝罪します…」

「ああ…それはもうにいい、ここに来たのはわしの意志でもあるからな」

しかし、ヤマタノオロチは村の娘を食い殺した悪神と聞いた。

自らここに来たその理由次第ではイビルゲートを諦めるしかない。

「自ら…?何か理由でも?」

「そ、それが…」

ヤマタノオロチはスサノオに酷くやられたせいで完全に回復出来るまではかなり時間がかかるらしく…それで、回復の為に一旦山に戻ったが…その山に村娘の両親が現れてヤマタノオロチは見つかってしまった。

報復を恐れた彼らは倒し損ねたヤマタノオロチを完全に始末するまで娘との結婚を延期して、スサノオはヤマタノオロチを探す為に必死になったらしく、必死に逃げていた。

最終的に深海に潜って身を隠し、スサノオもまさか自身の領域の海に隠れていると思ってもなかったようで、捜索を諦めた。

「その時、四罪四凶の扉が現れてな…わしはここに来た訳よ」

「あはは…な、なるほど…自己都合って事ですね」

「もうゆっくりしたいのさ…歳だからな」

「は、はい…」

「ああ…やっとあの娘達から解放されて精々するわ!あれが食べたいとか…新しい服が欲しいから作ってとか…根所が汚いとか…散歩に連れててとか…ちょっと拒むと連れてきてそれはないでしょー!と逆ギレして大変だったわい…」

「はい?なんの話しですか?7人の村娘を食べたんじゃなかったんですか?」

「おいおい、これでもわしは山神だ…最初は長女の娘が飢えに耐えきれずにわしがいる山で身を投げようとして…それを助けたのさ」

確かに…悪神にこの守護神達が必死に助けるはずがないと思った。

「妹達が心配になった長女がわしに他妹達も連れ出してくれと頼まれて連れて来ただけだ」

「そ、それをスサノオに言えば戦いにならずに済んだはずじゃないですか?」

「あいつは末っ子の娘にベタ惚れしてさ…舞い上がって話を聞いてくれなかった!」

「ほぇ…?」

「結婚結婚と舞い上がって…完全ににやけてな…容姿なく斬りかかってきたわい…」

「そ、そうでしたか…それは災難でしたね」

「全くだ…でな訳で…ここでしばらく世話になるぞ…」

「じ、事情はわかりました…こちらこそ、よろしくお願いします」

僕はヤマタノオロチにイビルゲートの維持の協力を頼んだ。

「逃げて来た身でこんな事言うのもアレだが…ここは薄暗くて…ちょっと気が参りそうだな」

「確かに…ここは暗いし湿気くさい…それにその巨体ではちょっと憂鬱になりそうですね」

それで僕は気を紛らす為にレヴィに頼んで将棋盤を作ってヤマタノオロチに差し上げた。

「ほぅ…これは下界の遊びか!懐かしいのう…一局付き合え」

「えっ?は、はい」

一人で将棋は出来ないし…仕方なく一局だけ付き合う事にした。

「あと…みんな助けに来てくれてありがとう…借りはいつか返すぞ」

ヤマタノオロチが礼を言うと守護神達は消え去った。

「ん?雷神よ…どうした?」

「………」

何故かカンナカムイは帰らず将棋盤をじっと見ていた。

「あの……代わりにお願いしてもよろしいでしょうか?」

カンナカムイは無言でヤマタノオロチの前に立って将棋を指し始めた。

やりたいなら素直に言えばいいのに。

それで僕達は原点石を使って地上に帰還した。



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