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3章14話
しおりを挟むイビルゲートの異変から現れた空間に落ちた僕は周りは暗くて何も見えない場所に出られた。
バムとジズから逸れてここがどこかもわからない以上、無闇に動きたくないが…現在の状況を確認しないといけない。
出口を探しに動くと足音が遠くまで響いていたのでここは相当広い場所だと分かった。
「光視力ビーム!」
僕はヴァースのオプション機能のハイビームで周りを照らしながら探索を始めた。
ここの壁の材質や内部のカビ臭い匂いが落ちる前にいた階層と同じだったので…ここは同じイビルゲートのどこかだと分かってホッとした。
それにしばらく歩いたがこの階層から魔物に一度も遭遇しなかった。
その時、少し離れた場所から何かの声が聞こえてその方向に向かった。
昔の僕だったら何も考えずに大声で叫びながら走って大変な目に遭っただろうが…今の僕は上級冒険者だ。
そのようなヘマはしない。
僕は慎重に息を潜めてその場所を調べに行った。
「うわっ!な、なんだ?あの光は?」
「何かこっちに来ている!気をつけろ!」
僕はハイビームを出したままで…初っ端からヘマをした。
ふっ…僕は上級冒険者と名乗るには…まだまだ早いようだ。
バレた以上隠れる必要がなくなったので僕はその声がした所にゆっくり歩いていた。
「な、なんだお前は!」
「アニキ!あいつ…目がこぇーよ」
僕はハイビームを消してバックから松明を出して火をつけた。
発光魔法ブライトを使えばいいが…今の僕はナイア兄さんのあの桁外れの魔力はないので魔法は温存したかった。
たいまつで声がした場所を照らすとそこには二羽の鳥がいた。
一羽は歪なカラスのような姿でもう一羽は金色の見た事ない鳥だった。
「なんだよ…人間だったのかよ!新種の妖怪かと思ったわ」
「この私達を驚かすとは…ガキだから許してやる」
「驚かしてすみません…」
随分と態度がデカイ鳥で、今晩のオカズは鳥の丸焼きにしようかと思ったが我慢した。
「おい…小僧」
「はい…」
「貴様は何者でここはどこだ?知ってる事を洗いざらい吐けよ」
カラスに尋問されているようでイラッとしたが…コイツらから敵意はなさそうだったので僕は分かる範囲まで説明した。
「ま、まじか!おい…金鵄(きんし)!うちら四罪四凶の扉に巻き込まれたみたいだ」
「八咫烏(ヤタガラス)アニキ…どうしよう?ならここは最深部って事ですぜ」
「ん?キンシとヤタガラス?」
僕は二羽の鳥の名前を聞いて少し戸惑った。
勝利を運ぶ霊鳥金鵄と…御先神に仕える神鳥ヤタガラス…。
この二羽の特徴を見て間違いないと思った。
僕イビルゲートの中で思ってもなかった八百万の神の神鳥…キンシとヤタガラスに出会った。
「あの…ここが最深部と言いました?」
「そうだよ!怪しい空間が現れて入ってみたら……まさか四罪四凶の扉だったとは…」
「どうすんだよ!ちゃんと責任取れよ!」
「自分から勝手に入って来て…それはちょっと理不尽じゃないですか?」
「そ、それより…アニキ!このままここにいるとやばいですぞ」
「そ、そうだな…でもここからどう出ればいいのやら…」
僕が言い返すとさらっと話を逸らしてちょっと腹が立ったけど…今は喧嘩する場合ではなくて我慢した。
それに、この二羽の鳥の話を聞く限り…こいつらが最深部の主ではなさそうだ。
「アニキ…ア、アレ…」
「キンシよ…早くこの場から離れようぜ」
キンシとヤタガラスが前方の何かを見て凄く怯えて、岩の隙間に逃げた。
僕もそれを確かめる為にたいまつで照らした。
「うわー!な、なにこれ…」
「しっ!静かに!お前もこっちに来い」
「アレに見つかったらやばいぞ…隠れろ」
黒くて凄く巨大な蛇が眠っていて、これが召喚された最深部の主だとわかった。
僕も慌てて二羽の鳥と一緒に大きい岩の隙間に隠れた。
「小僧…この四罪四凶の扉を一体誰が開けた?」
「あんなやつ呼び出すなんて…」
「痛い痛い!やめて…尋問するならカツ丼ぐらい出して優しくから尋問しろよ」
「カツ丼?」
「あ?なに意味分かんない事言ってる?」
二羽の鳥はクチバシで僕の頭を突きながらまた尋問されたが…こっちも情報が欲しくて素直に話した。
「こ、ここって…マ、マムンティア大陸?うっそだろ…」
「アニキ…うちらどんでもない所に来てしまったね…」
この鳥達は…もう一つの大陸、ダースアクリアから少し離れたオノゴロと言う列島から来たらしい…。
オノゴロ…。
八百万の神々の最高神…アメノミナカヌシノカミの命によってイザナギとイザナミが作り上げた島。
アマテラスを筆頭としてツクヨミ、スサノオが支配していた日本の神々が住んでいた。
それが突如…八百万の神とオノゴロ島ごとこのアルケーミュスにに転移されてしまったと話してくれた。
「アニキ、それじゃ…カグツチ様が邪神界に行ったとの噂は本当みたいだな…」
「んだな…四罪四凶の扉は元々我らオノゴロの術だからな…」
イビルゲートを立ち上げる儀式が何故か和風的な感じがした事をその話を聞いて納得した。
「あの…それより…アレはなんでしょう?」
「アニキ…こいつ、自分達が呼んだくせにアレがなにかも知らないみたいですぜ?」
「呆れた…バカなのか?バカなのね…納得したぜ」
「はいはい…バカでいいから早く教えて」
こいつらとまともに相手すると血圧が上がるのは僕だけだと思って適当に流して情報だけ貰う事にした。
「うむ…あの後ろにいるデカイ奴は……ヤマタさん家のオロチ君だ」
「おっ?さ、さすがアニキ!痺れる!」
「えっ?ヤマタノオロチ!」
ヤマタノオロチをこんなに親近感溢るように呼ぶとは…。
こいつ…出来るな!
「しかし…ヤマタノオロチはスサノオにバラバラにされて死んでないんですか?」
「ん?この大陸のお前がなんでそんなむかの事を知ってる?」
「なにかの物語で聞いた事がありまして…」
「まあ…いいけど…あいつはやたらに再生力が凄くてその程度では死なない」
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「完全に浄化する為には時間がかかるから…適当にバラバラにして海にぽいっと捨てたらしい」
「えらくべっぴんさんだったからな…分かる気がするが仕事はちゃんとしてないからこうなるんだよ…」
「そ、そうでしたか…」
八百万の神もここの神と同じく面倒くさがり屋でいい加減だと思った。
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