異世界で僕…。

ゆうやま

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3章12話

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バム達の圧倒的な力を持って魔物達を薙ぎ払いながら僕はイビルゲートの下階層にぐんぐんと降りていた。

剣を振るチャンスすら与えてくれなくて、僕はただ後ろから付いていくだけだった。

「バム…今何階層?」

「はい!今46階層です」

「もう46階層か…魔物達も強くなって来たね、でも…僕には関係ない事だけど!」

「あ、あれ?若旦那様…」

「若様…なぜか怒ってるよ?」

「怒ってるハルトちゃんも可愛いー♪」

ここに来た目的は核たる主の確認だけで、バム達は僕の身を案じてやってる事は分かっっている。

が…過保護過ぎで少し拗ねてみた。

でも…彼女達はなぜ怒っているかわかってなかった。

「ねぇ…レヴィ」

「うん?ジズちゃん…どうしたの?」

「海から長く離れているけど…大丈夫なの?」

「これぐらい平気だよ♪」

それを聞いて僕も心配になって少し休憩をする事にした。

レヴィは海の生物…。

海帝と呼ばれても陸に長く止まって平気な訳がないと今になって気付いた。

「ねぇ…レヴィ、この件が終わったら休暇を取ってみんなと海に行こう」

「海!若様!本当に?えへへ♪早く海水に体を浸かりたいな…」

「ハルトちゃん…ありがとう」

レヴィは相当無理をしていたようで、ジズは海に行く話を聞いてレヴィより喜んでいる。

「本当に二人は仲がいいですね」

「そうね…ちょっとワガママだが、レヴィは私の恩人でもあるのよ」

「レヴィが恩人?」

「うん…本当はレヴィはナンムの守り手として、私はナンムから生まれた新たな生命体を下界に送る為に作られたのよ…」

「そうだったんですか!」

「でも、私は力が足りなくてね…役目を果たせられない私を神々は破棄しようと話を進めていた時、レヴィがティアマト様に頼んでその役割の半分を背負ってくれたんだ…」

「えーー!あのレヴィが?」

「今でも不思議だわ…あの子、昔はかなり神経質で無口だったのよ」

「へ、へぇ……」

「レヴィはなんの付き合いがなかった私を助けてくれて、下界に降りたあと私達はナンムから生命を送り出す仕事をしながら仲良くなったの」

「そうでしたか…」

なんの見返りを求めず、先に助けの手を差し伸べたレヴィとその善意によって助かったジズもまたなにも求めずに彼女の身を案じて世話をしている。

その話を聞いて僕はレヴィを見直した。

「この階層から魔物達も強くなってしつこいですね」

「大分進んだし、ちょっと休もう」

僕達が休憩の間にバムが周りの魔物を排除してくれているが少し手古摺っているように見えた。

「ここの魔物達ってそんなに強いの?」

「それもあるけど…私達は人化すると元の力の2割程度しか出せないからね…」

2割でそれか…マジないわ。

今までバム達の一撃を耐えた魔物は1匹もいなかった。

しかし、ここからはそうはいかなかった。

「ふぅ…やっと片付きました」

「お疲れ様…ありがとう」

それでもバムには敵わないようだ…。

「ふぅ…バックがもう限界だな、ちっ!もうちょい大き物を持ってこればよかったな…」

「かなり溜まりましたね…」

「イヒヒ…これだけで私の元の財産の1割相当になる!嬉しいな…」

プァフニールはバムが倒した魔物から魔核や素材を剥ぎ取ってモリモリ膨らんでいるバックを眺めながら笑った。

「プァフニールさん?そのバックもう限界に見えるけど一度持って帰るの?」

「大丈夫だよ!最悪の場合は…バハムートのように飲み込んで持ち帰ればいいから」

「えー?それ吐き出すのは大変だよ…ねえ?バム?」

「はい…喉に詰まって一人で吐き出すのは辛くて大変でした…あの時の事は思い出したくもありません」

「バムもそう言ってるからやめたほうがいいよ?」

「大丈夫大丈夫!いざとなったら…あのチビの…なんだだけ?内臓破裂アッパー?それで吐き出せばいい」

「あの…プァフニールさん…本気で言ってるの?」

「ん?そうだけど?」

「あはは……………死ぬよ?」

「あははははは………まさかね」

「お前がアレを食らったら確実に死亡すると私が保証する…」

バムの保証済みなら間違いなさそうだ。

「えっ?そのアッパーってそんなに凄いの?」

「貴様なら内臓ところか体ごと破裂するぞ?」

「プァフニールさん…それ…ここに置いて帰りに取りに来よう!ね?ね?」

「いやだよ!誰かに盗まれたらどうすんのよ!」

「ここには私達以外はいませんよ!」

「……と、とにかくいやだよ!んじゃ一人で戻ってまた来るから!」

「また来るつもり?ここ46階層だけど…」

プァフニールは竜であり、強いと分かっているが…一人で帰らせるのは気が引ける。

このイビルゲートの難易度は高いし、竜でも魔物の群れに囲まれると無傷ではいられないし…大事な仲間を一人で帰らせて怪我でもしたら後味が悪い。

それにプァフニールが怪我している姿は想像もしたくなかった。

「お願いだから…置いて行こう?」

「絶対いやだ……クッソ…財宝と一緒に死ねるなら…本望だ…ううう」

「ば、バム!止めて!」

「返してよ!返せ返せ返せ!置いて行くのはいやだよ…」

プァフニールは竜化してバックを飲み込もうとしてバムが素早くそのバックを取り上げてくれた。

この欲張りめ…。

しかし…プァフニールは財政の仕事をよくやってくれているし…ちょっとのワガママは聞いてあげたい。

それに僕はその素材の使い道を思い付いた。

「レヴィ…悪いけどプァフニールさんを外まで一緒に付いて行ってくれる?」

「えー?」

それでレヴィにプァフニールを外まで連れてあげるように頼んだが凄くいやそうな顔でプァフニールを睨み付けた…。

「若様…事故死、いや…何にかのアクシデントがあってプァフちゃんに何かあっても私の責任にならないですね?」

こ、こいつ……プァフニールをやる気だ!

それでレヴィの機嫌を取る為にイビルゲートの件が終わったら海で一緒遊ぶと約束して無事にプァフニールを外まで連れて行くと言ってもらった。

「悪いね…んじゃささっと戻ってまた来るわ」

「ゆっくりでいいですよ…」

レヴィとプァフニールが戻る前にここの主の確認を済ましたいと思った。

休憩しているとお腹が空いて来た。

「ここに入ってから大分時間が経ったよね」

「はい…10時間ほど経ちました」

「たった10時間で46階層か…全世界冒険者ギルドの新記録だね」

それで携帯食を取り出したが…魔物の返り血がべったり付いて食べる気が失せた。

その時…。

イビルゲート内部が立って居られないほど強く揺れた。

「若旦那様!気をつけてください!イビルゲート内部から異変が起きています」

「ハルトちゃん!私達から離れないで!」

揺れがもっと酷くなって僕の足元の地面が崩れ、何かの空間のようで僕はそこに落ちた。

「うわああぁぁぁぁ!」

「若旦那様!」

「ハルトちゃん!」

バムとジズもその空間に飛び込んだが間に合わず僕だけが空間の中に落ちた。

「そんな…」

「どうしよう…」

「……ここでレヴィを待とう」

「はっ?何故だ?」

「外で神々は私達をみている…この原因と対処法をレヴィに教えてくれると思う」

「なら私は下にいるかも知れない若旦那様を探す…ジズはここでレヴィと合流してから来て」

「わかったわ…」

バムはハルトを探しに下の階層に向かった。

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