異世界で僕…。

ゆうやま

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3章1話

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第3章

<僕…冒険者なのに周りが過保護過ぎて冒険が出来ません…。>

ナンムから帰還して一カ月が経つた。

双子と再会を果たした僕はティルナノークに帰って来た。

また、双子と胸踊る冒険をする日が待ち遠しい。

しかし、現実は残酷である。

今僕は山のように積まれた報告書や決済書類と奮戦している。

魔王国の物資やラプス族から各集落の要請を纏めた報告書…それの確認と承認のハンコを押している。

こいつらはイビルゲートの上級下層の魔物よりしつこくて、リスポンも早い…。

「ハルト様、今日の午前の分です」

「えーーーー!」

メディアがまた大量の書類を持って来た。

こいつがこの書類をリスポンさせている根源…。

「あの…僕ハンコ押すだけですが、これって意味があるんですか?」

「何を仰いますか?領主の承認がないまま勝手に事を進めてはなりません!そのようにやってしまうとここの秩序が乱れて取り返しが付かなくなります!」

最近メディアは活き活きして仕事に熱心だ。

「メディアさん、ちょっと張り切りすぎではないですか?ちゃんと休んでます?」

「私もこの地をより良くしたいと思っています、体調管理もしっかりしてますので御安心を…」

「わかりました…でも、無理はしないで下さい」

「お気遣いありかとうございます…次の書類をまとめて持って参ります」

まだあるのかよ…。

[[ハルト…流石に私も疲れた]]

「目玉も疲れるの?」

[[眼精疲労しらないのか?眼球が血管が広がってるのがみえんのか?どれほどの書類を私に読ませているかわかっている?この鬼め!]]

「こ、こめん…」

[[アレでリフレッシュしたい…ささっと用意しろ]]

「うん…ちょっと待って」

僕はまだ文字を読むのが遅く、書類はヴァースに頼っている。

ヴァースが瞬時に読み上げて私の脳に伝えてくれているおかげで何とか書類の処理はギリギリ間に合っている。

「出来たよ」

スッポーン!

ヴァースは僕から飛び出して用意したアレに飛び込んだ。

[[ふう…塩水風呂は最高だな!眼球に染み渡るわ…]]

ヴァースはナンムで僕が塩水で洗った時、それがとても気持ち良かったと言って疲れると塩水に入って休憩するようになった。

ヴァースがリフレッシュする間に僕も休憩をする。

なんとかこの書類地獄から脱出出来る方法がないかと考えたが思い付かないまま、とある方を頼る事にしてラグレシアの工房に向かった。

ラグレシアの工房は息が苦しいほど凄い熱気が充満していた。

まだ…最新設備は一部のみで殆どがボロい設備しかない。

それでもラグレシアの腕で何とかなっている。

ラグレシアに教わりたいと集まった鍛冶師達も熱心に作業をしている姿を見ると…早く金銭的な問題を解決し、いい設備を設置してあげたいと思った。

「お疲れ様!ラグレシアさん」

「ふぅ…ハルトではないか!おい!約束した残りのレガリア大陸の設備はどうなっている?」

「それが…書類の山に埋もれて身動きが取れないんですよ」

「はぁ?」

僕は今の現状をラグレシアに説明して助けを求めた。

「なるほど…わかった、しばらく時間をくれ」

「出来るんですか?」

「私を誰だと思う!そんなの朝飯前だ」

「さすが!ラグレシアさん!貴女がここにいてくれて本当に心強いです!」

「そ、そうか?うふふ…であろう?」

ラグレシアは褒め言葉に弱い。

その機嫌が良さそうな顔を見ると書類は何とかなりそうだ。

それが出来たら今度こそジズとラーズ国にいこう。

僕は少し気が楽になって…執務室に戻って食塩水風呂を済ましたヴァースを装着した。

目の汚れが取れて視野がクリアだ…目の清潔も大事だな!

トントン!

「はい、どうぞ」

「ハ、ハルトや…」

「あれ?ナイア兄さん?何があったの!」

執務室に入って来たナイア兄さんは傷だらけで…身も心もボロボロな状態にみえた。

「は、ハルト、す、すまん…逃げろ…」

「は、はい?」

「カ、カオス様が…」

ああ…忘れていたよ…いや!忘れたかった!

我が領土には今どんでもない厄病神が滞在している。

「カオス様がどうしたの?」

「む、…む…むら」

「む?むら?」

「ムラビトクエストがやりたいと暴れて抑え切れない!」

あ、この領土は終わった。

どうにもならんわ…。

「ナイア兄さん…まず領民のみんな避難させよう」

「すまん…ハルト」

100万人ほどの人々をどこに避難させる?それより避難する前に全滅しそうだ。

ため息しか出ないこの状況に僕は身も心も真っ白な灰となった。

「不覚だった…あのぷにぷに大魔王を奴を倒すと意地になってBS6の構造を確認して置く事を忘れた」

「…そ、そうなんだ」

「せめて設計図、いや中身がどのような作りになっているか分かればなんと出来るのに…」

「今なんと言ったの?」

「中身の構造さえわかればの話しか?」

「中身が分かれば作れるの?ブラボーステーション6を!」

「ああ、私はハルトの世界の技術に詳しくてな…」

「ちょっと待って!ヴァース!僕の記憶を今すぐ読み取ってくれ」

[[はいはい…目玉使い荒い奴め]]

僕はブラボーステーション6を分解した事があった。

中に詰まった埃を取るつもりが、つい興味が湧いて全てバラして壊してしまった。

それで新品を買う羽目になったがそれが役に立つようだ。

その時…僕が小さい時…父がいつも遠慮しがちの僕に男は若い時には犯罪以外は何でもやるべきだと言っていた事を思い出した。

やっとその言葉の意味がわかったよ。

[[ハルト…お前は迷惑かけ過ぎだ自重しろ、あと準備出来たぞ]]

確かに…この世界に来て本当に沢山迷惑かけた。

気をつけよう。

「よぉし……光視力ビーーームっ!」

ヴァースのハイビームは映画館の投影機のように映像を映す事も出来る!

それで僕の記憶を読み取って映像化したBS6の内部構造をナイア兄さんに見せた。

「ほう、このような作りか!ハルトや、助かった!この程度ならすぐ作れそうだ」

「本当に?良かった!」

「あはは…これで私もムラビトクエストが出来る!待ってろプニプニ大魔王!」

「ナイア兄さん…目的が変わってませんか?」

「あははは…冗談だ」

ナイア兄さんは素早くブラボーステーション6の構造を複写し、作業に取り掛かった。

「やはりハルトに相談して良かった…本当に助かった」

いつも僕のピンチを助けてくれたナイア兄さんに助かったと言われて、ちょっと嬉しかった。

「えへへ…そう?ナイア兄さんにそんな事言われると照れるな」

「本当に助かった、それじゃ…私は作業に専念するから後の事は頼んだ」

「ん?後の事?」

「それが…今、バルとバム、レヴィ、ジズがなんとかカオス様を抑えてる…ハルトも応援を頼む!」

ナイア兄さんは眩しい笑顔を見せてさらっと一番緊迫感溢れてデンジャラスな役目を僕に押し付けた。

この人…僕以上食えない男である事を忘れていた。

さすがあの害獣達の主だなと僕は感心した。

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