異世界で僕…。

ゆうやま

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2章最終話

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この男が…爆淡水の大洋と信仰された熱を司る原始の神アプスー…。

ティアマトの夫であり…一人の眷属を持たず1匹狼のように拳一つで原始の神々の上位に成り上がった怪傑…。

その漢気に惚れたティアマトはアプスーに求婚して夫婦になった。

「あ、あなた…」

「ティア、何故そこまで意地悪い事をする?君らしくないな…」

アプスーの少し怒っている声と悲しそうな表情で見るとティアマトは泣いてしまった。

「うう…だって!寂しかったもん!あなたが家出して居ないというのにギルタフリルとこの子がイチャイチャしやがるじゃん!」

「おいおい…そんな理由で?」

今までのヒステリックな態度は嫉妬によるもので…大海母神も女だなと思うと今までの嫌な感情もなくなった。

「ねぇ……アナタ、今までどこにいたのよ!全然見つからないし!どんな手を使ったか今すぐ吐け!」

「そ、それは言えないな…」

「はぁ?ま、ま、まさか!女でも出来た?一体誰よ!私の夫に手を付けるとはいい度胸してるわね…捻り潰してやる!ナンムの海に沈めてやる!」

ティアマトは行方をくらましたアプスーが浮気をしているではないか疑って女の痕跡が残っていないか隅々チェックしていた。

「や、やめんか…違うから!ワシの事はティアがもっと知っているだろ!」

「う、うむ…」

「それより…意地悪な事はやめなさい」

「わ、わかったわよ…」

それで、ティアマトの暴走を止めてくれたアプスーに礼を言った。

「アプスー様…ありがとうございます」

「いや…こちらこそすまなかった…妻のいたずらを許してくれ」

「いいえ…大事な娘のようなギルタフリルを守れなかった僕はティアマト様を責める資格などありません」

「良い子だな…彼が君を気にかける理由が分かる気がするわい」

アプスーは優しく笑って僕の頭を撫でてくれた。

「ティア、ワシはこの子に大変世話になっていた…これ以上言わなくても君なら分かるな」

「まあ!そうなの?それを早く言ってくれればこんな意地悪はしなかったのに…夫が大変お世話になりました…」

「あ、はい?…ん?」

アプスーに初めて会った僕はその話を理解に苦しんで、ティアマトは手の平を返すような身返った。

アプスーの話は気になるが今はその事より…双子の話を進めるチャンスだと思ってティアマトにもう一度お願いした。

「あの…ティアマト様、先の話ですが…」

「わかったわ!すぐには無理だけど…またギルタフリルに別の生を与えて君に預ける事にするわ」

「ティアマト様!本当にありがとうございます!」

「まあ♪アプスーが世話になったもの♪これぐらいは大した事ないわ♪」

今までの苦労が虚しくなるほどあっさりお願いを叶えてをもらった。

アプスーの再会にティアマトは超ご機嫌だったので…ダメ元でアレも頼んでみる事にした。

「ティアマト様、図々しいと承知しての事ですが…もう一つお願いがありますが…」

「あら?なぁに?」

「僕の知り合いが肉体を失って…生き別れた家族と会わせてあげたいです、その為に天命の石版と印を貸して頂きたいですが…」

「少年よ…あまり図に乗るな!」

予想通り…ティアマトは激怒した。

天命の石版…自分が望んだ内容を書いてティアマトの印を押すと全て承認されてそのまま実行される…神々の秘宝の中で秘宝だ。

よく知られている天命の粘土板は…石版から型を取ったレプリカで、元の石版の性能は神々の運命すら変える事も可能な恐ろしい恐ろしい神具だ。

それを人間が貸してくれと言われると怒るのは当然だ。

「アレがどんなものか分かって言ってるのか?」

「はい…」

「ティア、この子が言っている肉体を失った者はワシもよく知ってる…」

「あなた…でも」

「ワシを退屈させずに色々おもてなしをしてくれた者だ…悪用されない事はワシが保証するからワシからも頼む」

「退屈させずにね……ひょっとして浮気相手!女なのね!」

「いや…違うと言っただろ!その者は男だ」

「あらー♪そうなの!わかったわ!アプスーの保証なら貸してあげる♪ただし…それ以外は使わないと約束してね」

「はい!誓います」

アプスーはナイア兄さんとお知り合いで…僕の中にいるナイア兄さんがおもてなししていたと聞いて…アプスーは僕の中に入って隠れていたとカオス様から聞いた。

それに腕と下半身が勝手に動くのもナイア兄さん達の仕業と知った。

他人の身体を持って遊ぶなよ…。

でも今はそれはどうでも良かった。

双子とまた、一緒にいられるようになって、天命の石版も貸して貰えた。

これで何千年も待ち続けたバルちゃん…そしてバムとレヴィにナイア兄さんを会わせてあげられる…。

今まで何度も僕の窮地に力を貸してくれたナイア兄さんと……ほとんど迷惑な事ばかりだったが…色々頑張ってくれた三人にも借りを返せる。

しかし、問題児トリオから解放されると思うと…嬉しい反面…寂しくもある。

バルちゃんとバム、レヴィが喜ぶ姿とナイア兄さんの顔が早く見たくなった。

「うむ…それじゃワシはこれで…」

「ねえ…あなた、どこに行くつもり?ふふふ…もう逃がさないわよ?」

「くはっ!ティ、ティア!何をする!」

ティアマトはナンムから慌てて逃げようとしたアプスーを光の呪縄で縛った。

「このワシを呪縄程度で…ふんっ!え?」

「ふふふ…それは私の神力で作ったものよ?アナタでも簡単に抜けられないよ?さあー♪観念しなさい」

「ティ、ティア?」

「アプスー♪100年は寝かさないわよ♡」

「えっ?ちょっと!ワシはまだ君を許してないぞ!」

「その事はじっくりと体で話し合いましょう♡」

「ちょ、ちょっと!子供の前で何を言ってる?」

ティアマトは欲情に塗れた顔で笑っていた。

「みんな…アプスーを館に連れてくれる?」

「はい!」

「それと…アプスーがまた家出しないように警備を最大にしなさい」

「はっ!承りました!さあ…アプスー様、館に…ティアマト様の寝室に帰りましょう!」

「お、おい!や、やめろ!離せ!離さんか!」

そして…アプスーは眷属達に館まで連行された。

「ティアマト様…本当にありがとうございます」

「まあ…いいわ…今まで意地悪い事をして悪かったわ…活発なギルタフリルは昔から下界に憧れてね…」

その活発な子はイリヤの事を言っているとすぐわかった。

「中々頼み事しない大人しいもう片方の子まで突然下界に行って人間として暮らしてみたいと言い出して驚いたわ…」

「へぇ…そうでしたか…」

きっとイリヤが下界に行きたいと駄々をこねて…放っておけない姉想いのリリヤも一緒になって頼んだようだ。

二人は昔から変わってないなと思って笑ってしまった。

「今度こそ…ギルタフリルを頼んだわよ」

「はい!今度こそ…必ず守って見せると誓います」

「そう…その言葉を信じるわ、さあ!ささっと行きなさい…私はアプスーとやりたい事があるから…」

「あ…はい…」

「ティア…あんまりアプスーを無理させるなよ」

「おほほほ♪」

カオスは哀れな目でティアマトの館を見ていて…ルル姉は顔が真っ赤になってもじもじしている。

「さあ…お邪魔虫は早く退散して頂戴ー♪」

ティアマトはナンムから下界に繋がるゲートを開いて僕達を追い払おうとした。

「そうだ…カオス、君には話があるからちょっと残って」

「あ?私に?まあいいけど…」

「ハルト君、私達は先に帰ろう」

「うん…ではカオス様、お先に帰ります」

「カオス…先に行くわ!」

「おう!…私もすぐ戻るわ」

カオス様は永遠にここに残って欲しいと思った。

しかし、カオス様のおかげで色々助かって僕は感謝し切れない恩を感じた。

「ハルト君…あとでちょっとお仕置きするから」

「あれ?ルル姉?」

「私がいるのに…他の女とイチャイチャして…ただで済むと思った?」

「えへぇ……お手柔らかにお願いします…」

「キ、キス10回で許してあげる」

「う、うん」

僕とルル姉は手を繋いでゲートをくぐってティルナノクに戻った。





ナンムに残ったカオスにティアマトは意味深な表情でゲートが閉じるまで黙って観ていた。

「ティア、私に何の話だよ?」

「あの少年、もしかして…あの時の者か?」

その話を聞いたカオスはティアマトに猛烈な殺気を放った。

「そんなピリピリしなくていいわ…あの時のこと、貴女には本当に悪い事をしたと思っている…」

「……」

「あの少年の事は秘密にしておくわ」

「そう……あの子にまた手を出したら今度こそ本体にかかった全ての制約を解除して全てを無に戻すぞ」

「あら…こわいわね、言わなくてもわかってるわ」

「なら良い…話しはそれだけなら私も戻る」

カオスもナンムのゲートを乗ってティルナノクに向かった。

「はぁ…まさかまた二人があのような形で出会ってしまうとは…また血で血を争う事にならないと祈るしかないな…」

ティアマトは暗い表情をして、気絶しているギルタフリルを連れて館に戻った。

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