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2章86話
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工房に着いた時には外は暗くなって金属を加工する音も聞こえなかった。
「器が完成したようだね…」
「……うん」
「ルル姉…大丈夫?」
「……うん」
意識が飛んで幸せそうに笑っている顔も可愛くてたまらないが…こんな状態のルル姉を連れて行ったら…みんなに揶揄わられそうでちょっと気が引ける。
しかし…ルル姉を一人にする訳には行かないのでそのまま工房に入った。
「やっと帰った」
「主様!お帰りなさい」
「主様~待ってましたよ♪」
工房に入ると問題児トリオが待ち伏せていたように現れた。
「ん?あれ?牛チチ……魂が別次元に旅たったような顔だな…大丈夫か?」
「……うん」
「えっ?お、お兄ちゃん!一体何をしたの!まさか!またアレを使ったの?」
「ちがうから…その話は聞かないでくれ」
イチャイチャしてキスしたらこうなったと恥ずかしくて言えない…。
バルちゃんが意識が何処かに飛んだルル姉の胸をじっと見つめた。
「この二つの脂肪の塊がまじヤバイとラグレシアに聞いたけど…本当かな?」
ルル姉の無反応を見てバルちゃんは笑って近づいた。
「ククク!よぉし~これはチャンスだな…私の頭の仇!もぎ取ってやる!成敗!」
「バルちゃん!やめて!」
バルちゃんがルル姉の胸を握り潰そとした。
「ふんっ!」
「くぇ!痛い痛い!」
悪意を感じ取ったルル姉は絶妙なタイミングで正気を取り戻してバルちゃんの頭にアイアンクローをかけた。
「はい!残念…あと97回」
「あ…やめ!」
バルちゃんの小さいプチトマトは破裂してしまった…。
「バム、レヴィ…悪いが後の事を頼む」
「わかりました…」
「ルナちゃん…力入れすぎだよ…中身があちこちに飛んで行ったし…」
「うん…ごめん」
二人にバルちゃんを任せて僕とルル姉は作業場に入った。
作業場にはみんな集まっていて僕を待っていた。
それにカオスは既に新しい器に入れ替えていて出来具合を試していた。
「……ああ、辛かったよ」
「ラグレシアさん…お疲れ様でした」
ラグレシアとトルゥーガは何日も寝ずに徹夜したように顔が窶れていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「うううう…あの素晴らしい神具達をこの手で…二度とこんな仕事はやりたくないわ…」
「す、すみません…」
ラグレシアは数々の名作を自分の手で壊した罪悪感で精神的ダメージが半端ないようだ。
それに…主の辛そうな姿をずっと見ていたトルゥーガも気疲れしてぐったりしている。
「ほぉ!これは中々頑丈だな!ラグレシア…よ良くやった!創造の女神の名は伊達じゃないな!」
カオスは満足した顔で喜んでいた。
「お褒めの言葉…光栄です、ハルトよ私はもう休む…」
「はい…本当にお疲れ様でした」
ラグレシアは工房の隣の休憩室に入って…片隅にしょぼくれていたジズを見かけた。
「あの…ジズ姉さん?」
「分かってる…ナイアと約束したから門は開けてやる」
ジズは拗ねているし…元気もなかった。
「あの…ジズさん、今度二人でレガリア大陸に行きませんか?買い物に行きたいので付き合って欲しくて…」
「……そ、それって!デート?」
「買い物を済ました後…一緒に食事でもしませんか?」
「わ、分かったわ!うふふ」
設備の購入の為だが…デートと勘違いしてるようだ…。
有難い勘違いだがら…黙っておこう…。
[[この女たらしめ…]]
[[黙ってらっしゃい!]]
[[絶対楽な死に方出来ないぞ…]]
[[……だろうな]]
ヴァースの言う通り…呪いのせいか全く罪悪感も感じない…。
「おー!ハルト!元気になったようだね!心配したぞ?」
「プァフニールさん…心配かけてごめんなさい」
双子の事は内密にしていたがプァフニールもその話を耳にしたようで僕に会いに来てくれたようだ。
「ハルト君…あの姿…」
「僕も本当にびっくりしたけど…別人だよ」
「そ、そうだな…」
ルル姉は母の写真を見た事があって彼女を見て驚いていた。
「まあ…元気になって本当に良かった…儲け話が無くなるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ」
「そっちの心配でしたか…」
「も、もちろん君の心配もしたわよ!嘘じゃないよ?えへへ」
「わかってるよ…あはは」
儲け話を約束したのは僕だけなので…僕に何があればその話は白紙になるから嘘ではないだろう…。
「全て準備は整ったようだな…覚悟は出来ているか?」
「問題ないよ」
「そうか…しかし…あのティアマトの聖域だ…気をつけろ」
「うん…」
オーディンは僕の事を本気で心配していた。
あれほど僕を必死に殺そうとしたのに…今は心配されているし…それに僕もオーディンを憎む感情も薄れた。
絶対許すまいとあれほど憎んだのに…それを思い出すと少し複雑な気分になった。
「ん?お前…何処かで見た事があるような…」
プァフニールがオーディンを見て思い出そうとしている。
ついに来た二人の対面に僕は緊張した。
「ん?お主は…プァフニールか?」
「あー!思い出した…お前はあのイタズラ好きのロキの義理の兄…オーディンじゃないか!」
「久しいな…兄の事は本当に申し訳ないと思っている」
「まあ…お前はその時一緒いただけだし、ロキのやつから賠償金ももらった…責める筋合いはない」
その賠償金の出所と呪いの事もプァフニールはまだ知らないようで…助かった。
このまま見過ごせばややこしくなる事はないと思って僕は黙っておく事にした。
「器が完成したようだね…」
「……うん」
「ルル姉…大丈夫?」
「……うん」
意識が飛んで幸せそうに笑っている顔も可愛くてたまらないが…こんな状態のルル姉を連れて行ったら…みんなに揶揄わられそうでちょっと気が引ける。
しかし…ルル姉を一人にする訳には行かないのでそのまま工房に入った。
「やっと帰った」
「主様!お帰りなさい」
「主様~待ってましたよ♪」
工房に入ると問題児トリオが待ち伏せていたように現れた。
「ん?あれ?牛チチ……魂が別次元に旅たったような顔だな…大丈夫か?」
「……うん」
「えっ?お、お兄ちゃん!一体何をしたの!まさか!またアレを使ったの?」
「ちがうから…その話は聞かないでくれ」
イチャイチャしてキスしたらこうなったと恥ずかしくて言えない…。
バルちゃんが意識が何処かに飛んだルル姉の胸をじっと見つめた。
「この二つの脂肪の塊がまじヤバイとラグレシアに聞いたけど…本当かな?」
ルル姉の無反応を見てバルちゃんは笑って近づいた。
「ククク!よぉし~これはチャンスだな…私の頭の仇!もぎ取ってやる!成敗!」
「バルちゃん!やめて!」
バルちゃんがルル姉の胸を握り潰そとした。
「ふんっ!」
「くぇ!痛い痛い!」
悪意を感じ取ったルル姉は絶妙なタイミングで正気を取り戻してバルちゃんの頭にアイアンクローをかけた。
「はい!残念…あと97回」
「あ…やめ!」
バルちゃんの小さいプチトマトは破裂してしまった…。
「バム、レヴィ…悪いが後の事を頼む」
「わかりました…」
「ルナちゃん…力入れすぎだよ…中身があちこちに飛んで行ったし…」
「うん…ごめん」
二人にバルちゃんを任せて僕とルル姉は作業場に入った。
作業場にはみんな集まっていて僕を待っていた。
それにカオスは既に新しい器に入れ替えていて出来具合を試していた。
「……ああ、辛かったよ」
「ラグレシアさん…お疲れ様でした」
ラグレシアとトルゥーガは何日も寝ずに徹夜したように顔が窶れていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「うううう…あの素晴らしい神具達をこの手で…二度とこんな仕事はやりたくないわ…」
「す、すみません…」
ラグレシアは数々の名作を自分の手で壊した罪悪感で精神的ダメージが半端ないようだ。
それに…主の辛そうな姿をずっと見ていたトルゥーガも気疲れしてぐったりしている。
「ほぉ!これは中々頑丈だな!ラグレシア…よ良くやった!創造の女神の名は伊達じゃないな!」
カオスは満足した顔で喜んでいた。
「お褒めの言葉…光栄です、ハルトよ私はもう休む…」
「はい…本当にお疲れ様でした」
ラグレシアは工房の隣の休憩室に入って…片隅にしょぼくれていたジズを見かけた。
「あの…ジズ姉さん?」
「分かってる…ナイアと約束したから門は開けてやる」
ジズは拗ねているし…元気もなかった。
「あの…ジズさん、今度二人でレガリア大陸に行きませんか?買い物に行きたいので付き合って欲しくて…」
「……そ、それって!デート?」
「買い物を済ました後…一緒に食事でもしませんか?」
「わ、分かったわ!うふふ」
設備の購入の為だが…デートと勘違いしてるようだ…。
有難い勘違いだがら…黙っておこう…。
[[この女たらしめ…]]
[[黙ってらっしゃい!]]
[[絶対楽な死に方出来ないぞ…]]
[[……だろうな]]
ヴァースの言う通り…呪いのせいか全く罪悪感も感じない…。
「おー!ハルト!元気になったようだね!心配したぞ?」
「プァフニールさん…心配かけてごめんなさい」
双子の事は内密にしていたがプァフニールもその話を耳にしたようで僕に会いに来てくれたようだ。
「ハルト君…あの姿…」
「僕も本当にびっくりしたけど…別人だよ」
「そ、そうだな…」
ルル姉は母の写真を見た事があって彼女を見て驚いていた。
「まあ…元気になって本当に良かった…儲け話が無くなるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ」
「そっちの心配でしたか…」
「も、もちろん君の心配もしたわよ!嘘じゃないよ?えへへ」
「わかってるよ…あはは」
儲け話を約束したのは僕だけなので…僕に何があればその話は白紙になるから嘘ではないだろう…。
「全て準備は整ったようだな…覚悟は出来ているか?」
「問題ないよ」
「そうか…しかし…あのティアマトの聖域だ…気をつけろ」
「うん…」
オーディンは僕の事を本気で心配していた。
あれほど僕を必死に殺そうとしたのに…今は心配されているし…それに僕もオーディンを憎む感情も薄れた。
絶対許すまいとあれほど憎んだのに…それを思い出すと少し複雑な気分になった。
「ん?お前…何処かで見た事があるような…」
プァフニールがオーディンを見て思い出そうとしている。
ついに来た二人の対面に僕は緊張した。
「ん?お主は…プァフニールか?」
「あー!思い出した…お前はあのイタズラ好きのロキの義理の兄…オーディンじゃないか!」
「久しいな…兄の事は本当に申し訳ないと思っている」
「まあ…お前はその時一緒いただけだし、ロキのやつから賠償金ももらった…責める筋合いはない」
その賠償金の出所と呪いの事もプァフニールはまだ知らないようで…助かった。
このまま見過ごせばややこしくなる事はないと思って僕は黙っておく事にした。
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