異世界で僕…。

ゆうやま

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2章75話

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天界に戻ったルルは冥界の主…女神メタファールとの交渉の準備をしていた。

それをラズリックが心配そうな顔でルルを見ている。

「ルナ様…本当にお一人で行かれるんですか?」

「ああ…交渉法はお前に耳にタコができる程聞いたから問題ない」

「しかし…」

「それに自分の力で成し遂げないとハルト君との約束を守って貰える資格がなくなる、あとバルトゥールをトマトにする楽しみもな…ククク」

「へぇ……ハルトちゃんと何か約束を?」

「うふふ♡まあねえー♪」

(何かか知りませんが…抜け駆けはさせませんわ…ふふふ)

ラズリックの口が微かに笑った。

「ルナ様!せめてこの私だけでも付き添いで連れてて下さい!」

「あ?お前はだめだろ…」

「な、何故ですか!」

「当たり前だろ!お前の匂いでケルベロス達が騒ぐからな…」

「くぅー!…この肉が憎い!無念なり!」

レイラは地面を叩きながら自分の肉を呪った。

「冥界の開門時間だ…んじゃ行って来る」

時間になるとルルはゲートを開き冥界に入って行った。

「この先が冥界の境界線、気合い入れて行こう…まず手探りから…そして相手の反応を見て徐々に交渉を進めて行く…よし!」

境界線を越えて冥界に入ったルルは気を引き締めて凛々しく歩いて行った。

その瞬間…。

エエエーーーーーン!

「ん?なんの音?一体何事だ?」

冥界全域からサイレンの音が鳴り響いた。

[[緊急事態!緊急事態!破壊の女神の反応が検出されました]]

「はぁ?こ、この私を何かのヤバイウィルスみたいに言いやがって!腹立つな!」

しかし、ルルはハルトの為に堪えた。

[[これより冥界は戒厳令を発します!全ての死神は職務を中断して戦闘及び警戒態勢の配置について下さい]]

「おいおい…ちょっとやり過ぎじゃない?」

ルルが冥界の入り口に立つと数万の死神とメタファールが待ち構えていた。

「ほぇ……凄い歓迎だな」

「破壊の女神よ…何しに来た!」

死神達とメタファールは怯えながらもルルを囲んで包囲した。

「これ…本当にやめてくれないか?私はただメタファール…君に用があって来ただけだ…何かやらかしに来た訳じゃないから!」

「う、うむ…そうか…ならちょっと調べさせろ」

「あ?いいけど」

死神達はルルの周りを隅々に確認し、メタファールも厳重なボディチェックをしてようやく信じる事にした。

「……本当のようだな」

「ああ…すんげー血圧上がって爆発しそうだが…今は我慢しよ」

「……って私に何の用だ?使いを出せばいい事を…自ら来た事はあまりいい話ではなさそうだがな?」

メタファールはルルが何を言い出して来るか検討も付かなくて緊張して冷や汗をかいる。

「冥界によっては悪い話だけではないと思う」

「うむ…話でみろ」

「ジズの魂を譲って欲しい」

「ジズ?……はっ?あの空帝ジズを?」

「まだ冥界にいるのはわかっている…それを貰ったらササっと冥界から出る」

「あまり調子に乗るなよ、私の業は死者の魂を浄化して輪廻に送り届ける事だ…お前は私に不正を要求してる!冥界を統べる私がそれを受け入れると思うか?それは断じて許されない!」

(いよいよ交渉開始だ…始めは軽く手探りから…)

予想通りメタファールは頑固に拒否してルルは最初のカードを切った。

「まあまあ落ち着けよ…ただでくれとは言わない…」

「舐めるな!私は物欲しさに死者の魂を売ったりしない!」

「わかっている、ジズを譲ってくれたら私…破壊の女神とそのシモベ達は今後一切冥界に迷惑行為や破壊行為をしないと約束しよ」

「…ククク、あはははははは」

メタファールはそれを聞いて大笑いをした。

「驚いたな…迷惑かけていた自覚はあったのね……君にそんな言葉を聞けると思ってもなかったぞ」

(チッ…甘かったか?最初のカードは弱過ぎて手探りにもならなかったな…すぐ次のカードを切るしかなさそうだ…次は!)

ルルは条件の上乗せて交渉を続けようとする時…メタファールは背を向けた。

「何だよ?ちょっと待って!まだ交渉は終わってないぞ!」

「破壊の女神よ…これを…」

メタファール紙を取り出してルルに渡すと…それをルルは黙々と読んだ。

そして…読み終わったルルはその紙に自分の名前を書いてメタファールに返したあと二人の女神は握手を交わした。

「破壊の女神よ…交渉成立だ」

「ああ…君の英断に敬意を払おう」

最初のカードでさらっと交渉は終わってしまった。

「おい!誰かジズの魂を持って来い」

「しかし…メタファール様、それは…」

「バカヤロ!破壊の女神の気が変わる前に早く持って来んか!」

「は、はい!」

ルルはジズの魂を貰って冥界から出るとメタファールは死神を集めてその前に立ってルルとの誓約書を見せた。

「皆の者!よく聞け!これは破壊の女神と私の契約書である!この内容はジズの魂を譲る代わり破壊の女神一派は冥界に一切の迷惑行為をしないと誓うと書いてある!」

「何ですと!」

「まじかよ?あの破壊の女神とそのシモベ達が?」

「そんなバカな!あり得ない!」

死神の皆は信じられないような表情で騒いでいた。

「思えば長き苦難であった…番犬のケルベロス達が絶滅瞬前まで減ったせいで…逃げられた魂の数は数え切れないほど…挙句に冥界で派手にドンパチやって魂魄の収容設備は壊れ…補修でまだ警備に穴が開いて…また大量の魂が逃げらて冥界の威信は地に落ちて…皆が苦労してたのは私もよぉーく分かっている…大義であった!」

メタファールと死神達は過去の数々の出来事を思い出しながら涙を流していた。

「うううう…メタファール様」

「メタファール様の心境に比べれば我々の苦労など些細な事でしょう…」

「ジズの魂を譲る事になったが…しかし!この冥界の未来と君達の為ならその汚名!私は喜んで受け入れよう!」

「メタファール様を非難する者などいるはずがありませぬ!」

「そうだそうだ!」

「皆…ありがとう!今日は破壊の女神からの解放日としてこの日を祝日とする!皆…今宵は宴会だぁぁあああ!」

「わあああー!」

これで…冥界にも平和が訪れた。
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