異世界で僕…。

ゆうやま

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2章64話

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イリヤとリリヤ…二人と出会ったから僕は少しずつ変わった。

イリヤからいつも元気をもらい…リリヤには思い遣り習った。

イリヤは怒りながらも僕の事を一番理解して受け入れてくれてリリヤはいつも遠慮がちなのに僕が困った時はどんな事も構わず献身的に助けてくれた。

今思えば…僕はルル姉に貰った加護に自惚れ、二人を守っていると勘違いしていた。

実際、僕は何一つ守れてない、逆にイリヤとリリヤに守られていた…。

それを今になって気付いた。

最後の二人のその言葉…もう返事をする事すらできない。

いや、そんな資格などない…。

でも許せるなら…伝えたい。

僕も…イリヤとリリヤが…………。

「…………とても大事な宝を見つけました♪この出会いの奇跡に感謝して♪」

……歌?

心が安らぐ良い香りと歌が聞こえた。

この心が穏やかになる子守唄のような歌…綺麗な歌声…。

ルル姉の声だ。

「失いたくない気持ち♪切なくて♪それを守りたいと誓って私は歩き行くの♪」

まるで今の僕の気持ちをルル姉が歌ってくれてるようで…涙が出そうだった。

「幾千幾万の屍を超えて♪血の海を渡って♪」

むっ!台無しだ!

優しいメロディと歌詞が一致してない…なんだこの殺伐とした歌詞は…。

「守りたいよ♪阻む者は滅殺♪歯向かって来る者は撲殺♪」

どんな子守唄だよ…。

「ルル姉」

「ハルト君!目が覚めたかい?」

はい…その刺激的でデンジャラスな匂いがプンプンする素敵な子守唄のおかげでね…。

バルちゃんの話ではルル姉ほどの神が器の状態から力を取り戻すまで早くても100から200年はかかると聞いてまた会えないと思っていた。

しかし、本当にルル姉は約束を守ってくれた…。

「ルル姉、本当に会いに来てくれたんだ…」

「言っただろ?天界の力吸いまくって最速で会いに行くと」

「うん…こんなに早く会えると思わなかったから…本当に嬉しくて」

「そうかそうか…その言葉が聞けて急いだ甲斐があったよ」

ルル姉はいつも通り僕をそっと抱きしめて頭を撫でてくれた。

「ルル姉…お願いがある…」

「なんだい?」

「………」

僕はこの願いを口に出す事が出来なかった。

そう…死者復活、禁忌中禁忌を僕はルル姉に願っているからだ。

「ハルト君が何を願いたいか…言わなくても分かるさ」

「ごめん…ごめん…ルル姉」

「禁忌ってわかっても君が私にお願いしたいと…その二人に対しての気持ち…正直言って妬けるな…」

「ごめん…ルル姉」

「でも…無理だね」

「……だよね、禁忌中禁忌だもんね……痛っ!」

ルル姉は少し拗ねた表情でデコピンをした。

「言ったはずだよ、全て敵を回してもハルト君の手助けは惜しまないと…禁忌を破る事ぐらい今まで数えられないほどやって来たわ!今更なんとも思わないし!気にもしてない」

それを望んでいる僕が言うのは可笑しいが……ちょっとはきにしてくれ。

「なら何故…無理なの?」

「まずハルト君の勘違いを正そう」

「僕の勘違い?」

「単刀直入に言うおう…君と一緒居たあの双子は……」

「…双子は?」

「人間ではないのよ」

「えっ?何を言ってるの?そんなはず無いよ」

「間違いない…」

双子が人間ではないと…ルル姉は冗談を言っているようには思えない真剣な顔だった。

「何の根拠でそんな事を?」

「うん…前に会った時の彼女達は紛れもなく人間だったよ…オーディンに殺されて生の終わりを迎えてしまったまではね」

「何を言ってるか意味がわからないよ」

「ハルト君…下界の生命体は生を終えたら必ず行く場所がある」

「……冥界?」

「ああ…その通りだ…しかし、彼女達は冥界じゃなく…ある神の聖域に行った…その意味はわかるかい?」

「ん?それって!その神の眷属って事?」

「そのとおりだ…何の意図かはわからないが、その神の秘術でその眷属か使徒を人間に生まれさせたと思う…」

その衝撃的な真実を僕は簡単に受け入れる事が出来なかった。

でもその話を聞いた僕は…双子は生きていると…また会えるかもしれないと心の底から喜んだ。

「だが、問題は聖域に戻ってから…その主人が下界の記憶が不必要と判断したら消してしまう事もある」

「えっ?」

「双子が君を覚えているか定かじゃない…人間として過ごした記憶がないかも知れない」

「双子に僕の記憶が…ない?」

「しばらくここを見回って来るから気持ちの整理がついて…それでも双子に会うと思うなら私を呼んで…」

ルル姉はそう言って外に出た。

双子が人ではない事は構わない…。

でも今までの僕との想い出まで忘れてしまったら…会っても意味がない。

その最後の言葉の返事をしても伝わらない。

ルル姉の話に僕は完全に双子を失われてしまったんじゃないかと思って絶望感に包まれた。

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