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2章35話
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賑やかな祝宴も終わって朝が来た。
寝るのが遅かったせいかまだ眠いが、双子に叩き起こされた。
「う…なんだよ、まだ早いじゃん」
「領主の長い不在は領民を不安にさせるからだめじゃん?」
「そうです!早く帰ってみんなが困っていないか視察に行かないと!」
「領主?なにそれ?」
「さき、白髪のババァがね…」
「領民の事で話があるから領主のハルトさんに至急会わせたい者がいると」
「はぁ?」
一体なんの事かわからなくてバルちゃんに聞く事にした。
テスラ姉さんに挨拶兼ねて謁見の間に行った。
「……うう」
「出せよこら…クク」
「よこせこら…ふふふ」
「持ってこいこら♪…へへ♪」
そこにはバルちゃんと2匹の害獣がテスラさんを囲んでチンピラのように凄く悪の顔をしている。
まるで…カツアゲでもしているような雰囲気だった。
テスラ姉さんはバルちゃん一人相手も身が重いのにバムとレヴィまで来て顔が真っ青。
目の周りは涙で濡れていた。
昨日はあんなに喜んで元気だったのに…幸せな時間は長く続かないね…。
「あっ!お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!」
「主様!」
「会いたかったですぅ!主様!」
僕を見た犯罪未遂者達は抱きついて来て…先の悪党の顔が瞬時に無垢な笑顔に変わった。
こいつらある意味で怖いわ…。
「う、うん…それよりみんな大丈夫だった?邪神に襲われてなかった?」
「ああ…あいつらの事?来てたけどもう始末したよ」
「主様に不敬を働いたと聞き、厳重に処罰しておきました」
やっぱりそうなったか…可哀想に…。
「本当ひどーい奴らでしたよ!こんな可愛い私を海の狂龍とか言って心に傷付きましたよ!シクシク…慰めて下さい!」
海の狂龍か!それは的確な表現だな…。
予想通りではあるが…みんな怪我など無く元気な姿を見て安心した。
なんだかんだ色々あったけどこいつらは嫌いにならない…。
「イリヤとリリヤに聞いたけど領主って何の話だ?」
「そろそろ名前を決めて欲しいね」
「名前?一体なんの事だよ!」
「主様の領地なので!名前は主様が付けるのが同然かと」
「レヴィと主様の愛の巣…でもいいですよ!えへへ」
「話が通じない…僕が領主?なにそれ?ビヒモスはバムの物だから…バムじゃ?」
「さらっと無視された…ひどーい、シクシク」
「私は主様のしもべ!故にビヒモスも主様の物です!」
「いきなり過ぎるから頭が付いていけないんだけど」
「ハルトが領主ね…何か似合わない!ぷふ…あははは!」
イリヤにめっちゃ笑われたが僕もそう思うから言い返せない。
「そんな事無いよ!素敵です!ハルトさん」
リリヤは本当いい子だな!怒らなければだが…。
「あとメディアが自分では決められない大事な事があるから至急に戻って欲しいらしい」
バルちゃんは僕にメディアの手紙や報告書を渡されて読んだ。
現在ビヒモスには至急に大量の資材が必要との事でこれから生活に欠かせない必須品の製作に必要な道具が足りなくて困っていると書いてあった。
幸いに今後ビヒモスに凄く役に立つ凄腕の鍛冶屋を見つけたがその鍛冶屋さんが領主と直接会って話がしたいとの事であった。
「そうか…みんなが困っているなら仕方ないね、急いで戻るとしよ」
「ハルト殿…ちょっと宜しいですか…?」
テスラ姉さんが疑問があるような顔で質問して来た。
「短めでな…長かったらそのツノへし折る」
「バルちゃん…やめなさい」
「じょ、冗談だよーえへへ」
絶対冗談じゃないだろ…。
「妹様から提示された支援物資や先の領地の話…一体なんですか?」
支援物資?先の悪の顔は支援物資を寄越せと脅迫していたのね…。
「僕も今聞いた話ですが、実は…」
僕は漂流して出会ったラプス族とダークエルフ達…そして滅んだアラミティアの民をビヒモスに住ませるようした事とバルちゃんが勝手に僕を領主にしたと説明した。
「なるほど…それで支援物資の内容は資材と加工に使う道具が多かったですね…はっ?ハルト殿が領主!!」
「そうなったみたいです…名ばかりですが」
「魔王様…これはハルト殿と同盟を結んで友好な関係を築くのが魔王国にとって最善だと思いますぞ」
急に現れたイルヨラスじっちゃんは同盟を結ぶようにテスラさんに進言した。
「あ?同盟?属国ならともかく…うぷぷぷ」
「バルちゃん…ちょっと黙っててくれる?」
僕はバルちゃんの口を手で塞ぎ話を進めようとした。
「ほほっ…面白いお嬢様で…うぷぷぷ」
「い、イルヨラス!口を慎め!」
テスラさんもイルヨラスの口を塞ぎ話を進めた。
「うぷぷぷ……!」
「うぷぷぷ………!」
「魔王国との同盟なら大歓迎ですよ!でも今はみんな色々困っていますのでそれを解決してからでもいいですか?」
「勿論です!我々も総力を持って物資を用意します」
「本当にありがとう!テスラ姉さん!助かります!」
「ぷぁー……では私も各領主に協力して貰うよう声をかけておきます」
テスラが手を離すとイルヨラスも協力すると約束してくれた。
「イルヨラス爺さんもありがとう!んじゃ皆んな行こー!」
「はい!主様」
「はーい!」
「うん!行こー!ハルトの領地か…何か変な感じだな」
「ビヒモスの下で見ただけでだったのでどんな所か楽しみです」
「うぷぷぷ………!(手を離してくれよ、お兄ちゃん)」
僕達は魔王城から出てビヒモスに向かった。
、
、
ハルトが出たあとイルヨラスは少し不満気な表情をした。
「しかし、魔王様…いくらハルト殿の妹君と言え…小さい少女にそんなに畏るとは王として下の者に示しがつきませんぞ…」
「イルヨラスよ…あの少女は女神だ(邪は抜いたがな)」
「はっ?」
「前な…獣人将が妹様に無礼を働いて事があってだな…お怒りになった妹様が拳一振りでこの頑丈な魔王城が半壊された事があった…ハルト殿が直してくれたが…あの時はさすがに魔王国の危機を感じた」
「えっ?」
イルヨラスは信じられなくて近衛の反応を伺うと近衛達は激しく顔を上下に振った。
「そ、そうでしたか…」
「それに隣の二人は最古の神獣バハームトとレヴィヤタンだぞ、それを知った時は生きた心地がしなかった」
「…………」
イルヨラスはしばらく無言になった。
「イルヨラス、余の心境がわかるか?」
「………魔王様はこの国の救世主であり…私の命の恩人です」
テスラは目を瞑って過去の出来事を思い出しながら…涙を流していた。
「わかってくれてありがとう…」
「魔王様万歳!」
以後イルヨラスは更にテスラの忠実な犬となった。
寝るのが遅かったせいかまだ眠いが、双子に叩き起こされた。
「う…なんだよ、まだ早いじゃん」
「領主の長い不在は領民を不安にさせるからだめじゃん?」
「そうです!早く帰ってみんなが困っていないか視察に行かないと!」
「領主?なにそれ?」
「さき、白髪のババァがね…」
「領民の事で話があるから領主のハルトさんに至急会わせたい者がいると」
「はぁ?」
一体なんの事かわからなくてバルちゃんに聞く事にした。
テスラ姉さんに挨拶兼ねて謁見の間に行った。
「……うう」
「出せよこら…クク」
「よこせこら…ふふふ」
「持ってこいこら♪…へへ♪」
そこにはバルちゃんと2匹の害獣がテスラさんを囲んでチンピラのように凄く悪の顔をしている。
まるで…カツアゲでもしているような雰囲気だった。
テスラ姉さんはバルちゃん一人相手も身が重いのにバムとレヴィまで来て顔が真っ青。
目の周りは涙で濡れていた。
昨日はあんなに喜んで元気だったのに…幸せな時間は長く続かないね…。
「あっ!お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!」
「主様!」
「会いたかったですぅ!主様!」
僕を見た犯罪未遂者達は抱きついて来て…先の悪党の顔が瞬時に無垢な笑顔に変わった。
こいつらある意味で怖いわ…。
「う、うん…それよりみんな大丈夫だった?邪神に襲われてなかった?」
「ああ…あいつらの事?来てたけどもう始末したよ」
「主様に不敬を働いたと聞き、厳重に処罰しておきました」
やっぱりそうなったか…可哀想に…。
「本当ひどーい奴らでしたよ!こんな可愛い私を海の狂龍とか言って心に傷付きましたよ!シクシク…慰めて下さい!」
海の狂龍か!それは的確な表現だな…。
予想通りではあるが…みんな怪我など無く元気な姿を見て安心した。
なんだかんだ色々あったけどこいつらは嫌いにならない…。
「イリヤとリリヤに聞いたけど領主って何の話だ?」
「そろそろ名前を決めて欲しいね」
「名前?一体なんの事だよ!」
「主様の領地なので!名前は主様が付けるのが同然かと」
「レヴィと主様の愛の巣…でもいいですよ!えへへ」
「話が通じない…僕が領主?なにそれ?ビヒモスはバムの物だから…バムじゃ?」
「さらっと無視された…ひどーい、シクシク」
「私は主様のしもべ!故にビヒモスも主様の物です!」
「いきなり過ぎるから頭が付いていけないんだけど」
「ハルトが領主ね…何か似合わない!ぷふ…あははは!」
イリヤにめっちゃ笑われたが僕もそう思うから言い返せない。
「そんな事無いよ!素敵です!ハルトさん」
リリヤは本当いい子だな!怒らなければだが…。
「あとメディアが自分では決められない大事な事があるから至急に戻って欲しいらしい」
バルちゃんは僕にメディアの手紙や報告書を渡されて読んだ。
現在ビヒモスには至急に大量の資材が必要との事でこれから生活に欠かせない必須品の製作に必要な道具が足りなくて困っていると書いてあった。
幸いに今後ビヒモスに凄く役に立つ凄腕の鍛冶屋を見つけたがその鍛冶屋さんが領主と直接会って話がしたいとの事であった。
「そうか…みんなが困っているなら仕方ないね、急いで戻るとしよ」
「ハルト殿…ちょっと宜しいですか…?」
テスラ姉さんが疑問があるような顔で質問して来た。
「短めでな…長かったらそのツノへし折る」
「バルちゃん…やめなさい」
「じょ、冗談だよーえへへ」
絶対冗談じゃないだろ…。
「妹様から提示された支援物資や先の領地の話…一体なんですか?」
支援物資?先の悪の顔は支援物資を寄越せと脅迫していたのね…。
「僕も今聞いた話ですが、実は…」
僕は漂流して出会ったラプス族とダークエルフ達…そして滅んだアラミティアの民をビヒモスに住ませるようした事とバルちゃんが勝手に僕を領主にしたと説明した。
「なるほど…それで支援物資の内容は資材と加工に使う道具が多かったですね…はっ?ハルト殿が領主!!」
「そうなったみたいです…名ばかりですが」
「魔王様…これはハルト殿と同盟を結んで友好な関係を築くのが魔王国にとって最善だと思いますぞ」
急に現れたイルヨラスじっちゃんは同盟を結ぶようにテスラさんに進言した。
「あ?同盟?属国ならともかく…うぷぷぷ」
「バルちゃん…ちょっと黙っててくれる?」
僕はバルちゃんの口を手で塞ぎ話を進めようとした。
「ほほっ…面白いお嬢様で…うぷぷぷ」
「い、イルヨラス!口を慎め!」
テスラさんもイルヨラスの口を塞ぎ話を進めた。
「うぷぷぷ……!」
「うぷぷぷ………!」
「魔王国との同盟なら大歓迎ですよ!でも今はみんな色々困っていますのでそれを解決してからでもいいですか?」
「勿論です!我々も総力を持って物資を用意します」
「本当にありがとう!テスラ姉さん!助かります!」
「ぷぁー……では私も各領主に協力して貰うよう声をかけておきます」
テスラが手を離すとイルヨラスも協力すると約束してくれた。
「イルヨラス爺さんもありがとう!んじゃ皆んな行こー!」
「はい!主様」
「はーい!」
「うん!行こー!ハルトの領地か…何か変な感じだな」
「ビヒモスの下で見ただけでだったのでどんな所か楽しみです」
「うぷぷぷ………!(手を離してくれよ、お兄ちゃん)」
僕達は魔王城から出てビヒモスに向かった。
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ハルトが出たあとイルヨラスは少し不満気な表情をした。
「しかし、魔王様…いくらハルト殿の妹君と言え…小さい少女にそんなに畏るとは王として下の者に示しがつきませんぞ…」
「イルヨラスよ…あの少女は女神だ(邪は抜いたがな)」
「はっ?」
「前な…獣人将が妹様に無礼を働いて事があってだな…お怒りになった妹様が拳一振りでこの頑丈な魔王城が半壊された事があった…ハルト殿が直してくれたが…あの時はさすがに魔王国の危機を感じた」
「えっ?」
イルヨラスは信じられなくて近衛の反応を伺うと近衛達は激しく顔を上下に振った。
「そ、そうでしたか…」
「それに隣の二人は最古の神獣バハームトとレヴィヤタンだぞ、それを知った時は生きた心地がしなかった」
「…………」
イルヨラスはしばらく無言になった。
「イルヨラス、余の心境がわかるか?」
「………魔王様はこの国の救世主であり…私の命の恩人です」
テスラは目を瞑って過去の出来事を思い出しながら…涙を流していた。
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