異世界で僕…。

一章55話

僕は目の前が真っ白で時間が停止したような感覚の中で誰かが僕を呼ぶような声が聞こえた。

この安らかになる綺麗な声…間違いなくルル姉の声…。

「ハルト君！目を覚まして！」

「イタタタタッ！」

意識を取り戻した僕は激痛を感じて目がパッチリ覚めた。

頭がふらふらして体のあっちこっち痛い、痛過ぎる！無の神にやられていた時より痛みが三倍に増した痛みだった…死ぬ死ぬ！

「目を覚まして本当に良かった！」

「ル…ルル姉？」

「ああ！ハルト君、私だよ…わかるか？」

「うん、大丈夫！意識ははっきりとしてるよ」

「こんなボロボロになってまで…また私を助けてくれたね…」

ルル姉は意識を取り戻した僕を見て安心したか涙をポタポタ落としていた。

「それより救ったってどういう事？無の神はどこ？」

僕は慌てて無の神を探したがどこにもいない、気配すら感じなかった。

「落ち着いてハルト君、ひょっとして覚えてないのか？」

「なにをですか？記憶に御座いません」

「あはは…やっぱこうなるか、こんなオチが定番だけどな…」

ルル姉は不満気な表情で訳が分からない事をぶつぶつ言っていた。

「安心せい…無の神はハルト君が八寒地獄の最奥まで落として…うん……そうね！マッチ売り少女になってる…もう終わったのよ…」

「もう終わった？私が誰を？何処に？…マッチ売り少女？訳がわかりません！」

終わったと聞いて安心したが…ルル姉のあまりにも適度な状況説明で僕は全く理解が出来なかった。

「仕方ないな…詳しく説明してあげるわ」

「お、お願いします…」

「ハルト君が！無の神をトッカン！と寒い地獄に突き飛ばしたよ！シュー～んと落とされたせいで奴はガクガク寒さに震えてたぞ？そして深い地獄の底で氷化して永遠に出れないようにしたじゃないか…凄かったぞ！」

「は、はい？僕が？」

ルル姉はまた意地悪な顔をして僕が気を失った間の状況を説明してくれた。

しかし、僕の驚く顔を見て楽しくなったようで今度はノリノリで状況再現まで加えて事の説明してくれた。

「その説明だと僕がまるで極悪非道な悪人みたいじゃん！」

「ふふふ、その姿を見ると、やっと私の可愛いハルト君に戻った気がするよ」

ルル姉の安心したような表情を見るとやっと終わったと実感出来た。

それで僕もルル姉を失わずに済んだと、嬉しくて涙が出た。

「ハルト君は本当に涙脆いのう…」

「うう…なんでそんな事するんだよ！」

「ごめんね…」

いつも通り泣いている僕をそっと抱きしめて頭を撫でてくれてる。

これが何故か凄く落ち着いて安心する。

「空間の崩壊が始まったか…」

「ルル姉、皆んな待ってる…帰りましょう！」

無の空間が急激に崩壊が早まって僕は一緒に帰ろうとルル姉に手を差し伸べた。

だが……ルル姉は僕の手を取る事を躊躇した。

「ごめんなさい……私はこの空間と共に消えるとする……」

「そうかそうか……………はあーーー？な、な、な、何を言ってるの！」

ルル姉のその言葉に僕は耳をを疑った。