異世界で僕…。

ゆうやま

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一章53話

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一章53話

ルル姉が無の神に体を乗っ取られて元に戻す方法もわからないままで、この世界の全てが消えてしまう。

「では、この私に不敬を働いたお仕置きしましょうか」

「くあっ!」

無の神は瞬く一瞬で僕の懐に入って腹部と後頭部を拳で強打し、目の前が真っ白になった。

「う、うう…」

「ほぅ?普通はバラバラになって死ぬはずだが…人の子に思えないほど丈夫ですね」

無の神は僕のクビを掴み頭と腹部を殴り続きながら楽しそうに笑っていた。

「くっ!かっ!うう……」

「あら?今の私ってまるで前の貴方のようだわ、ルナファナリールッカ?ふふふ」

無の神は攻撃を緩めず続けて、僕は意識が飛ぶような激痛に泣きたくなった。

「もう、やめて…くれ…」

「ほう…まだ抵抗する力が残ってますの?」

一瞬、攻撃が止まってから切ない声で泣いていて血塗れになっている僕を見っているルル姉の顔はとてもつらそうにみえた。

僕は内蔵が全て破裂したような激しい腹痛と目を開けているだけでも辛く、このなんとも言えない激痛から早く楽になりたいと一瞬思うようになった。

しかし、ここで諦めたら何もかも無駄になって僕の大切なものを全て失う事になる。

「時間の無駄だわ、もう諦めなさい!」

「ル、ルル姉……諦めたら、、、め、よ」

「お黙りなさい!」

「かはっ!」

僕は必死に意識を保ってはルル姉に手を伸ばした。

オゥカスの剣撃で同化率が下がったおかげでルル姉は少し体を動かしたり喋るようになったようだ。

「ああ、ハルト君…ごめん」

「ル…姉…、、まけないで、、、めた」

「こんなに傷ついて…必ず君を守ると誓ったのに情け無い…本当に私なんかがこの世に存在してはならなかったかもね」

「そんな事…は、ない…諦めた…だめ…はぁはぁ」

「ごめん…ハルト君、君には迷惑ばかりかけてる…異界に連れて来て一度死なせて…生き返って早々に苦労ばかりだったよね…ごめんなさい」

「へへ、楽で、なかっ、けど…楽しかっ、よ…ル、、姉には感謝、て、よ…」

ルル姉は僕の手を取り優しく抱きしめたあと血を拭き取って傷だらけの僕の顔を見て悲しい顔をしている。

そんな顔はルル姉には似合わないし、見たくないと思った。

「私の為に命がけでこんなに傷ついて…ハルト君、ごめんね」

「泣くなよ…大丈夫だから…ゲホッゲホッ」

「もういいのよ、こんな私の為に傷だらけになって…私って迷惑ばかりかける厄介者だね」

ルル姉は傷だらけの僕の姿に耐えきれずもう諦めた表情だった。

「さようなら…ハルト君」

「る、姉…!あきらめ、、いや、…」

意識が朦朧としてルル姉の顔もよく見えなくなって意識を保つのも辛い。

しかし、ルル姉を守りたい一心でなんとか耐えている。

「もう…私はこの世にいない方がいいだろ」

「ル、ル姉…だめだ!」

ルルは涙を拭き歯を食いしばって何か決心したような表情してから僕から離れた。

(ふふふ…やっと私に全て委ねる気になったようですね…)

「あはは…勘違いするな、この世からお別れは私だけではなく貴様もだ」

(はぁ?何を言ってます?貴方はまともに動く力も残ってないのに…ふふふ)

「破壊の女神の名において命じる…我が魂魄の自壊を発動せよ…」

(なに!まさか、貴方!)

「この私が誰だと思ってる!!私は破壊の業を受け継ぐし者…自分の身体を貴様などに好きにさせてそのままくたばる女では無いわ!!」

(魂魄の自懐?自分の存在ごと消すつもりか!ハッタリを…きゃっ!あ、貴方、本当に…正気か!)

器が猛烈に光を発するとルル姉の体から出てきた無の神は苦しそうに体を震えていた。

「あははは!それがどうした?貴様に乗っ取られて悔しくて泣きながら生きてるより一億倍マシだ!さあ、一緒に消えるとしようか」

(く、狂ってる…イかれてる!)

「私の目の前でハルト君をこんなに痛めつけて狂わない、イカれない訳ねぇたろうがぁぁ!」

(まだ消える訳には!あいつらに復讐しないと!やめろぉぉ!)

「…ル姉、ダ…メだ」

悲しみと怒りに満ちたルル姉は自ら消滅する最悪の選択をした。

好きな女の子一人守れない惨めで無力な自分が情けなく、ただルル姉を失いたくないと心の底から切なく願うしかなかった。

[[彼女を救えるように力を貸そう]]

その時、頭の中から知らない声が聞こえて、藁でも縋りたい気持ちでルル姉を助けられるならなんだっていいと、なんでもすると僕は願った。

[[後は任せろ…そしてバ、、、、、を……よ、、た、む…]]

しかし、何故かその声は懐かしく、頼もしく、ルル姉を失ってしまう不安を沈める海のような深い安心感を感じさせる。

ドクン!…ドクン!…ドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!

その瞬間、急に心臓の脈が急上昇し、胸の奥から何かが解き放たれるような感覚がし、目の前が真っ白になった。

「くっ…う、う、うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ハ、ハルト君?」

「Vindicare Fortia…dellenda Hostium!Sum Pertur batio!(力を解き放て、仇なす全ての者を滅せよ!)」

「これは一体なんなのよ!この人の子は?」

「こ、この歪な魔力の波動はあの時の見た渦と同じ…」

意識を失ったハルトは全身から黒いオーラを激しく放って鋭利な刃物のような殺気を無の神に向けていた。

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