異世界で僕…。

ゆうやま

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一章 29話

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一章29話

ギルドでおじさんにクイル兄達は修業の為に聖都に残った事、ガランディアの事、ここまではそのままで話した。

「そうか、クイルめ…やっと火がついたか、日々腐っていくのが見るに耐えなかったけと、よかった」

おじさんはこうなる事を予想して僕を組み込んだようで、依頼で苦労した事で文句を言うつもりだったかが、その仲間想いに腹も立たなくなった。

「しかし…よくあれほどの依頼を無事にやり遂げたな、よし!今日の日付でハルトは昇級を認めて上級者冒険者に認定する!」

「えーー!やったじゃん!ハルト!」

「おめでとうございます!ハルトさん!」

「まじて?」

今までおじさんが受け付けだと思っていたが依頼中にクイル兄さんからギルドマスターだと教えてもらった。

冗談だと思ったが、上級の昇級権限はどのギルドもギルドマスターしか持ってない。

ちなみにおじさんの名前はオジーベルクロでみんなもおじさんと呼んでいた。

「ハルト!今日はぱーっとお祝いしよ!!」

「そうです!!」

「あはは…気持ちは嬉しいけど、今日は疲れた…明日にしない?」

「ん?」

「は、はい…」

珍しくお祝いの誘いを断った僕にみんなは違和感を感じたようでイリヤとリリヤは戸惑う様子だった。

「わ、わかった!」

「はい!明日にみんな呼んぱーとやりましょう!」

「ありがとう…んじゃ先に宿に戻るね」

「わかった……」

「はい……」

「…………」

疲れたのは本当だが、お祝いを断るほどではない…。

それなのに断った理由は僕は今夜最深部まで突っ走らないといけない。

体もかなり鍛えて、ルル姉の加護のおかげで誰よりも強くなった自覚もある。

それにラズリックさんからもらった装備もある…。

全て準備は整ったが、最深部まで一人で行くのが心持たない。

最深部にどんな魔物がいるかわからなく、勇者一行を壊滅まで追い込んだ未知の存在、そんな危険な場所に双子を巻き込みたくない…。

僕は宿の帰り道にある市場で沢山の道具と回復薬を買い込んで今日の夜から攻略すると決めた。

ごめん…イリヤ、リリヤ…。

宿に戻った僕は準備を済まして休憩をした。

ああっ!久しぶりのフカフカで暖かいベット!気持ちいい…。死ぬならここで永眠したい。

ルル姉の器を手に取って見つめながら気持ちの整理をして、暗い夜…村の明かりが薄ら闇を照らす時…。

僕はラズリックさんから貰った装備を身につけて一人でイビルゲートに向かった。

行くぞ……最深部まで!

万全の準備を整った僕はナズーラ村のイビルゲート前に着いた。

勝つか死ぬか二択のみのデスゲーム。

リタイアって選択肢はない、逃げたらレイラさんに殺される…。

憂鬱な気分でブツブツ不満を言いながら僕はイビルゲートの中へと進んだ。

でも…これはルル姉の為。

それが唯一僕を突き動かす原動力になっている。

下級魔物達は僕のピリピリした気配に怯えて隠れて出てこない。

おかげで思ったより早く中層まで行けそうだ。

12階層に着いてから双子とトロール攻略した時の場所でその周りを目に焼き付けた。

イリヤとやってたアレは楽しかったな。

リリヤの恥ずかしかった姿…可愛かったな。

もう…会えなくなるかもな…。

一瞬に過ごした日々を思い出すと辛くなった僕はその場から逃げるように去った。

なにも考えずに下へ下へとグングン降りて29層で軽く休憩と食事を済まし、また降り続けた。

38階層まで着くと魔物の攻撃も激しくて数も増えた…。

でも…次々とこの剣撃に魔物達は倒れた。

ラズリックさんから貰ったこの剣は予想以上で重みも丁度いいし魔物を切る感覚がまるで豆腐を切る感じだった。

それに切り目が浅いと切り口が破裂して動きが鈍くなって倒しやすい。

本当にエゲツない。

それに100を超える魔物を切ったが刃こぼれ一つ…傷一つ残ってなかった。

鋼の魔神の血肉で出来てると聞いてはいたか、刀身が再生までしているようだ。

40階層の入り口まで着いて道具の再整備をした。

ここ40階層から降りるのは初めて内部や魔物の情報など知らなくて、そろそろ気合い入れて行こうと思った。

薬や道具の確認し、瞬時に使えるようにベルトポーチに薬や道具を入れた順番を暗記して入り口に入った。

もし僕が死んだらルル姉の器はどうなるか…下へ進むほどその事ばかり考えてしまう…。

「はぁ……なんとかなるだろ」

考えても答えは出なくて気の重いまま40階層に着いた。

「なに辛気臭い顔してるのよ?」

「夜更かしが過ぎるのでは?ハルトさん」

「えっ?」

何故か40階層に僕が来るとわかっていたような顔で待っていた。

「イリヤ、リリヤ…なぜ、ここに?」

パッチ!パッチ!

二人は質問になにも答えず泣かないように我慢している顔で僕にビンタをした。

怒ってる理由は言わずとも分かっている。

「なんで一人で突っ走るのよ!あんた…」

「私達は仲間ですよ、なのに…なんで一人で…私達を置いて行くんですか…ばっかぁぁ!」

ギルドで僕の様子がいつもと違うと感じた双子は…ギルドを出た僕をずっと付けていたと双子は打ち明けた。

お前ら忍者かよ…本当に気付かなかった。

ポーションや道具を急ぎ揃える姿を見てイビルゲートに黙って潜ると確信した双子は先に来て待っていたと話してくれた。

「いつも一緒だと言ったじゃないですか!」

「この嘘つき!バカ春人!」

「……ごめん」

二人はは僕の胸を叩きながら泣き出した。

「ハルトがなにか悩みを抱えてるのは知っていたわよ…探索が上手くいかない時は突っ走して…時間に追われているよな感じだった」

「その訳をいつかハルトさんは打ち明けてくれると信じて待っていたんです、それなのに…」

「……ごめんなさい」

二人がこんなに僕をよく見てくれていたと思うと胸が苦しくてなった。

「アンタが強いのはわかってる…でも一人じゃ危険すぎるわよ!」

「バカバカバカばかあああっ!一人で何やってるんですか!何かあったらどうするつもりですか!」

「心配してくれてありがとう…僕には事情があってね…今から最深部に行かないといけないんだ、訳があって死んでも退けないんだよ!本当は僕も、僕も…怖いんだよ…」

「だから三人で…」

「バカ言うな…歴代勇者が運良く生き延びたと言われた最深部だよ…そんな危険な場所には二人を連れていけないよ!それに…僕が死ぬより…イリヤとリリヤが死ぬのがもっと怖いんだ!わかってくれよ!」

僕の為に先に来て待っていた二人が愛おしいと思うほど辛い気持ちも増した。

もし一緒に行ってこの二人に何かあったら死んでも楽に死ねない…。

「あんた、本当…バカね」

「そうですよ…本当にどうしようもないバカですよ」

二人は優しく僕を抱きしめてから耳元で優しく囁いた。

「それは…私達も一緒だよ……」

「ハルトさんになにがあったらと考えるたけで…怖くて辛いです」

「そうか…」

イリヤとリリヤは僕に手を差し伸べた。

「一緒に…ねぇ?」

「私達三人ならきっとやれますよ!」

「………うん」

僕は二人の手を取って感謝の言葉の代わりに今の気嬉しい気持ちを込めた精一杯の笑顔を彼女達に送った。

「私…その笑顔一生忘れられないよ…ハルト」

「ハルトさんと私達の為にも負けません!」

「うん!」

双子のおかげで死の恐怖や不安を乗り越えた僕はもう怯えない…挫けない、逃げないと決めた。

そして、意気投合した僕達は電光石火の如く下へ下へと降りて行った。


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