異世界で僕…。

ゆうやま

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一章 22話

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一章22話

初めて亜人と出会って僕はテンションが上がり過ぎてしまい失敗した。

「こんなに沢山買ってもらって本当にいいんですか?」

「いやいや!怪我させたお詫びで受け取って下さい」

「ポーションでもう治ってますが…?」

舞い上がってその事を忘れてなんかいい言い訳がないか考えた。

「あー!痛い思いさせた!転がっていた時めっちゃ痛かったでしょ?そのお詫びで!」

「そ、そうですか…ありがとう」

よぉし!僕、天才!

彼女はお詫びを受け取ってくれて、もう少し話しがしたい僕は帰りにまで送ろうとした。

少し警戒している感じがしたがそれは当然であると思って出来るだけ彼女に気を遣いながら付いていった。

しかし、僕の好奇心ってやつは空気を読まなくて彼女の羽に興味津々で触りたい!欲しいとの衝動に駆られた。

「あの…羽を抜き取らないでくださいね」

「出会った記念で一つ…」

「痛いからいやです」

「ケチ…」

彼女は何故か僕が気になってる様子で質問してきた。

「あの、亜人…嫌いではないですか?」

「亜人って嫌われてるの?」

「はい…まぁ、この大陸の人はそうですね」

「あの?亜人ってケモノ耳とか尻尾とか生えたりします?」

「はい…種族に寄りますが生えてます…」

……キタコレ!

「そ、そ、そんなモフモフステキな方々を嫌いになるなんて!そんな人!人間やめたほうがいいですよ!信じられない!」

心を込めて熱く、チカラ強く!僕が思う亜人の素敵な所を語り出すと彼女は先まで固くてよそよそしい表情が笑顔に変わった。

「フフッ…そう思う人もいるんですね…あっ!私はラネース!その…司祭です、なったばかりのヒヨコですが…」

「僕は志村晴人!宜しくねラネース姉さん!」

「宜しくお願いします、シムラハルトさん!」

イェース!初めて会えた亜人さんと仲良くなれた!……気がする。

「ハルトでいいですよ!えーと…司祭って神様の祀って色々の?」

「はい…祭事や信徒の手助けをしてます」

「どの神様を祀ってますか?」

彼女は何故か僕の質問に答えるまで少し間があった。

「は、は、破壊の女神様です…」

「えっ……」

僕は聖都に来て早々…ルル姉の神殿の司祭と出会うと思ってもなかったのでびっくりしたが…彼女からは何故かただならぬ緊張感が漂った。

(やっぱ、この反応…お願いだから食材返してとか言わないでよ!)

それに急にこの人の目付きが変わった…。

「あの…お願いがありますが…」

(やっぱ来たわ!!やめろぉ!!この食材は絶対返さない!)

彼女は急に食材の包みを背後に隠しながらまるでいつでも逃げられるように僕から少しずつ距離を取り始めた。

「取らない!取らないから…そんなに距離取らないでよ」

「そ、そうですか…ご、誤解してすみません」

「それより…お姉さんの神殿に連れててー」

「あらまあ!破壊の女神様の信徒さんですか?」

「まあ、そうですね…」

「本当に!!嬉しい!!連れてあげますとも!もし祈りで遅くなったら今日、私と一緒におねんねしようね!」

はは…子供扱いかよ。

でも一緒におねんねか…本当にいいのぉ?

それに寝てる時、羽をニ、三本は取れそうで悪くないと思った。

僕は司祭ラネースさんの案内で破壊の女神の大神殿に着いた。

ルル姉の神殿に着いたのはいい事だが…僕は神殿を見て目を疑った。

ここに来るまで見てきた他の神殿と違って華やかさもなく…人の出入りのない殺風景でここが本当にルル姉の神殿か疑った。

確かにルル姉は神の中でも凄く偉い神とレイラさんから聞いている。

「あら、おかえりラネース!遅かったですね…何かあったか心配しましたよ」

「ただいまです」

神殿の中から司祭のような女性が出てきたが服装が華やかできっとラネースさんより上の者にみえた。

「遅くなってすみませんイッセリナ司祭長様!!ちょっと死にかけたですが大丈夫です」

「はい?ちょっと死にかけたって…?それにこんなに沢山の食材を買えるお金は渡してないですが…」

ラネースは今までの事情を司祭長に説明すると僕にお礼を言って飲み物を出してくれた。

お茶かと思ったがただのお水だった。

「司祭長のイッセリナと申します、ラネースを助けて頂いきありがとうございます…そしてこの温情も有り難く頂きます…」

「志村晴人です、こちらこそご迷惑をおかけしました…ごめんなさい」

「司祭長様!聞いて下さい!ハルトさんは我が女神様の信徒ですよ」

「まあー!本当ですか?」

「はい…」

信徒と聞いた二人は僕を女神像の前まで案内してくれた。

しかし、寂れたルル姉の神殿を見て僕は不満気に何故他の神殿と違うか聞いた。

それから司祭長から長々と亜人の事と聖魔戦争の事…その以降神殿の事を色々話しを聞かされた。

それで何故ルル姉が僕の世界にいたか理由を知った。

「残念ながら神の不在の神殿に寄付や祈りを捧げに来る者はいないでしょう……」

「不在?」

「イッセリナさん!!助けてください!」

その時…慌ててラネースさんが助けを求めると後ろから三人の亜人が神殿に尋ねて来た。

それに一人は大怪我をしていた。

「帰りに油断してやられた…これを治せるポーションは売れ切れて4日後に出来るらしい…」

どこも回復薬不足は同じのようで…こんな重傷を治せる薬は言うまでもなかった。

それにこの怪我を治せる回復薬は先使ってしまった。

「他の神殿に頼んではみたが…亜人だからって断れた…ちくしょー」

イッセリナさんは怪我を見て暗い表情で首を横に振った。

いくら司祭長でも崇める神が居なければこれほど大怪我を治せるような奇跡を使うのはできないらしく、この場のみんなは怪我した亜人を見ながらただ悲しむ事しか出来なかった。

どう見ても普通の人間なら即死するような深い傷なのにまだ意識もはっきりして話しも出来る…亜人の生命力は半端ないようだ。

「はぁはぁ…し、仕方ない…油断した私が悪…い…皆んな…ごめん」

「おい!ミレーナ諦めるな!」

「ちくしょー!」

神殿内は暗い悲しみに包まれていた。
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