異世界で僕…。

ゆうやま

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一章 20話

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一章20話

ラーズの王都レナダンの中央にあるヘリトリ・ラーズ公爵家の屋敷は殺伐とした雰囲気とピリピリした緊張感に包まれていた。

「えい!フィリア姫がまだ生きてるとはどいう事だ!」

公爵は八つ当たりにワイングラスを家来に投げつけた。

「申し訳ございません!あの用心棒の冒険者達が想定以上のようで…まさかあれほどの魔物達を撃退するとは…」

姫を襲った執行犯の執事は冷や汗を流しながら弁明を述べた。

「言い訳はいい!聖都まで後少しだ!着いてしまったらわしは全て失う!どんな手を使っても姫を殺せ!」

「はっ!必ずや…」

「くそ!奴らの口車に乗るんじゃなかった…失敗してもイズリだけは…」

公爵は姫が聖都に到着するではないか不安感に怯えて椅子に座って頭を抱えていた。
.
.
.

僕達は魔物と刺客達に襲われながらグングンと聖都に進んであと丸一日で到着予定になった。

「くっそ…随分と露骨になって来たな」

「ああ…後1日で着くからな」

「あれほど戦って軽傷2人で済んでよかったわ」

「あいつのお陰だな…」

「気を引き締めていこう…次は奴らも出し惜しみなしで襲って来るからな…」

「ああ…」

馬車の中で僕は睡眠不足でウトウトして寝ないように我慢していた。

依頼主を狙って休む暇もなくしつこく襲って来る刺客達を撃退し続けて僕はグロッキーだ。

相次ぐこの悪質で粘着過ぎる襲撃もあと一日で終わる。

「ハルト様、お労しい…こんなに疲れて…」

「だ、大丈夫です、もうちょっとで聖都に着きます」

依頼主のラーズの姫は僕の頭をそっと自分の膝に置いて髪を撫で始めた。

「ちょっとこのまま休んでください、お嫌ですか?」

「嫌いじゃないです」

(ああ…なんて破壊的な愛らしさ!私の理想のお顔!たまりません!ああ…手が勝手に…)

頬が緩んだ姫は僕の頭を撫でながら次はオデコから鼻筋を辿り…くちびるまで着いた。

初めての襲撃があった夜、依頼主である、フィリア姫は自分の正体を明かし、僕達に謝った。

それとこの三日間に色々話しをして少し仲良くなったと思えばグイグイ密着して来た。

嫌ではないが…一国の姫でもうすぐ女王になる方で少し畏れ多い感じがして落ち着かない。

「来たぞ!!総員戦闘体勢!」

「はっ!」

僕は外から敵襲の知らせを聞いて、起きようとしたが姫の手が僕の頭を放してくれない。

それにかなり力が強くて完全に頭が固定されていて、姫はとてもご機嫌斜めだった。

「あ、あの、姫さま…動けないです…」

「もう、フィリアと呼んでくたさると約束して頂いたのに…」

フィリア姉さんは王になると親しく名前を呼んでくれる人がいなくなる立場になるので寂しいと僕に言ってこれからも名前で呼んで欲しいと言われてそれを受け入れた。

「そ、そうでしたね…フィ、フィリア姉さん」

「も、もう一度呼んで下さい…」

「ん?フィリア姉さん?」

「ああ!!たまりません!」

「ん?」

フィリア姉さんは顔を赤くして嬉しそうに身悶えていた。

恥ずかしそうな顔を耐えながら…僕の身を案じて膝枕まで…なんといい姫様なんだと思い、お気持ちに甘えてもうちょっとだけ…ちょっとだけ…このままいようと思った。

ああ…柔らかい…膝枕!最高!疲労感がぶっ飛ぶ♪このまま寝ていいかな?

その時…急に馬車が止まって、護衛達が慌ただしく馬車を囲み構えた。

きっと最後の襲撃になると…今までより多い数になると思った。

これは出るしかないな…おのれ!

馬車から出ると先頭に立っていたクイル兄達とマリーヌが呆れた顔で止まっていた。

「最後の襲撃だと覚悟してたが…こりゃ…」

「なりふり構わずも程がある…」

総勢3000の傭兵らしき者達と私兵と見られる騎馬兵200が僕達の道を阻んでいた。

「どうしたらいいものかね…」

「呆れたね…」

傭兵達は僕達を見て拍子抜けたように笑ってる者や武器で遊びながらふざけてる者もいた。

へぇ、そうかそうか…これが舐められているって事ね。

「ねぇ、クイル兄さん…」

「ああ、なんだ…」

「あれ、なぁに?」

「敵だ…」

「ウザウザいるね…」

「ああ…」

「うっとしくなってきたね…」

「だな…早くフカフカなベットで永眠したいぐらいた…」

「お、永眠っと来たか…逝っちゃうにはまだはやいよ?」

「あはは…」

「じゃ…もう潰していい?」

「ん?ん?いいけと…どうやって?」

「ウヒヒヒ……」

僕は今までの古い油汚れのようにしつこい襲撃や今挑発している敵に怒りを感じた。

「ハ、ハルト?」

「クイル…なんか逃げた方がいいような予感が…」

「そうだな…ぜ、全員退却準備を!」

「は、はい!」

僕は傭兵達の前に出て怒りを込めて叫んだ。

「次から次へと休む暇も…食事もロクに出来ずに…腐って捨てた食材に恨み晴らしてくれるわ!」

それより…気持ちいいフィリア姉さんの膝枕を邪魔されたのが一番腹が立った。

「おお!怖いね!オシッコちびりそうだ」

「坊やママのチチもうちょっと飲んでから来な!」

「あははは!」

傭兵達笑いながら僕にまた更に挑発してきた。

聖都は目の前でこれが間違いなく最後の襲撃とみて今までのストレス発散の為、遠慮なく取って置きを見せてあげようと思った。

「闇の魔神よ…我が身に纏え!」

魔神、それは精霊より高位な存在、別名として精霊王とも呼ばれてる。

猛烈な闇のオーラが身に纏われて僕は詠唱を続けた。

「汝…全ての破滅を導く!偉大として、悍ましく漆黒の闇の魔神よ…」

上空を埋め尽くす程の巨大な魔法陣が現れると強風が吹き出し雷と竜巻が発生した…。

「ネイビー、マリーヌ…なんかあれ…まじヤバイ気がするが…」

「なんか知らんが…あの傭兵達を相手するのがマシかも…」

「ひぃ!!全員全速緊急退避!」

クイル兄達と近衛は全速で僕から離れた。

詠唱中の術者を放置して逃げるのはどうかと思うが…この距離なら詠唱が終わるまで大丈夫そうだったので文句は後で言うと詠唱を集中した。

「我は求む…慈悲なき舞い落ちれ闇の魔神の鉄槌! 燃やし砕け!我に仇なす全てを滅せよ、殲滅の暴君メテオ ストライク!」

この目でメテオストライクを見る時が来るとは…ドキドキが止まらなかった。

日本の全厨二の方々が知れば羨むだろう!ふふふ。

傭兵達も危険を感じで先の威勢がなくなって乱れていた。

「ひ、ひ、怯むな!敵はだったの12人だ!それに子供もいるぞ?ハッタリだ!奴らを殺せ!」

ヘリトリ公爵の使いが傭兵達に攻撃命令を出したが動揺して動かない。

「あのヤロ…そのだったの12人にこの数揃えて何を言う?」

「てぇめー!その子供が一番ヤバそうなんですけど?」

「な、長年傭兵やって生き延びた俺の本能が言ってる…あれはやばいぞ、退却しよ」

傭兵は危険だと直感がしたようで雇い主のヘリトリの手の者の命令を聞かず動揺が広がるばかりだった。

詠唱が終わると今は昼になる前なのに空が暗くなった。

おかしいと思ったこの場の全員空を見上げると…その瞬間、彼等の顔は恐怖に染まった。

「た、た、助けてくれーー!!」

「死にたくない!!!」

「あぁー悪夢よ、悪夢に違いない…」

魔法陣から闇の魔神が空間をこじ開けて赤く燃える巨大な隕石を空の果てから落とした。

あ……やっべぇ!あれはデカ過ぎんだろ!

ちょっとちょっと闇の魔神さん!僕達まで巻き込まれるよ?術師まで殺す気?どんだ自爆魔法だよ!

予想よりどんでない魔法だった。

「ちょーおま!これじゃうちらまであの世行きだぞ!!」

「ハルトのバカぁぁああー」

「姫さまぁぁああー」

全力で逃げるクイル兄とネイビー姉さん、マリーヌや護衛達も顔が真っ青で傭兵達は必死に逃げる者も諦めて祈りをする者も許しを請う者もいて最早この戦場は戦場じゃなくなった。

「ああ……そうだ!アレがあった!」

焦った僕はある魔法を思い出した。

無属性魔法で自分の魔法陣を無理矢理改変する事が出来る術式介入魔法…カグナフーラ。

「全ての世界の意思よ、我が望む、我の願いを聞き入れたまえ…変革の光輪、カナグフーラ!」

それで魔法陣の向きを変えて落とす目標を僕達が通った無統治区域に変更した。

くがががぁぁぁーん!!

数百キロも離れた場所からの爆発なのにここまでその熱風が伝わった。

あーー暖かい風たな…凄い花火だね。

ううう…生態系全滅だろうな…人がいたらどうしよう?

以後…その地は恐怖の大悪魔によって破壊されて開拓は永久に不可能になったと言い伝わる事になった。
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