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6話 その3
しおりを挟む原点に飛び込みまでとルル姉のいいつけを守った僕は目を開けて見ると、そこは光もない暗い空間で僕達はただ身を任せて流れ落ちていた。
「ひーー!この感じ本当に気持ち悪ー」
「うう…吐きそう」
「そんなに時間かからないから我慢してね」
「うん」
まるで初めて高層ビルのエレベーターに乗ったように目眩と吐きそうな感じがした。
ルル姉は僕の背中から腰をしっかりと抱きしめて離れないようにしていた。
その背中から伝わる胸の不思議な感触のおかげで気が紛れた。
こっちに行く決心して良かったよ♪
「本当はこんなのあってはならない物だが…あの三馬鹿がね…」
「前の雪だるま?」
「そう!あいつらの卑怯な手で私がハルト君の世界に飛ばされた訳よ」
「どんな卑怯な手を…」
「私の聖域にこっそり潜り込んで異界に飛ばす罠を仕込んでね」
「あら…」
その時、ルル姉の後ろから何かが近づいて来るのが見えた。
ピカピカっと光るその何かはどんどん近づいて来て見間違いではないとわかった。
それにチキンと自負している僕は本能的にあれが危険だと感じた。
「ルル姉!なんか変な光がこっち来てるですが」
「ん?時空の亀裂に動く光?何かの異物が入り込んだ?ガウルヤヌースが守って居たからそんな事はあり得ないが……」
ルル姉もその光を確認すると抱きしめている腕が息ができないほど凄く力が入っていた。
「あ、あれは……雷獣カライホ!メルディアの使い魔が何故?そうか…向こうの穴から入って来たか!」
門番ガウルヤヌースの最後の言葉と不気味に笑った事を思い出してきっとやつは知っていたとわかった。
「念の為の保…なんちゃらってやつ?あのブスのバアバア!やってくれる!」
「うん、保険ね」
「そうそうそれ!」
美の女神をブスとかバアバアとか言ってるルル姉は本当にすごいと思った。
「奴にやられるのが早いか到着が早いか…くそぉ!こんなところででやられてたまるか!!」
「う、うわっ!」
雷獣カライホは獅子のような獣で全身に雷を纏っていてルル姉は襲い掛かって来た雷獣から僕を抱えたまま間一髪ギリギリ避けていた。
必死に避け続けてはいるがルル姉は雷獣の爪に引っかかって黒ずんだ傷だらけになっていた。
僕には傷一つ負わせなかった…。
全て…自分の体で受け止めている…。
「ルル姉…傷が…」
「大丈夫だ!こんなの向こうに着けば一瞬で治るから!」
そう言われても心配にならない訳がない。
僕は動物が大好きだが、しつこくルル姉を攻撃してる雷獣に怒りを感じた。
「出口だ!やったぞ!ハルト君!」
「あ、あれか!」
穴が空いたような空間から光が見えるとルル姉さはホッとした表情をした。
しかし、僕達は出口に気を取られて後ろに雷獣が近くまで気付かなかった。
「くはっ!」
「ルル姉!」
雷獣はルル姉の背中を抉るように引っ掻いたあと激しい雷を全身に放出しながら突進して来た。
これは避けれない…。
距離が近くて絶対間に合わないと、このままだと二人共終わりだと思った僕は…必死に痛みを耐えながら僕を守ろうとしている初めて好きになった女の子…僕が守らねば男じゃないと決心した。
ルル姉ともっと一緒に居たかった…。
おのれ!呪ってやる!童貞の怨念…舐めるなよ!チクショウ!!!!
「ルル姉、ごめんね」
「ハ、ハルト君?」
「うわああああぁぁ!!」
「ハルトぉぉ!!!!」
僕はルル姉さんの腕を解き襲い掛かって来た雷獣に体当たりした。
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