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5話 その3
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なんとか店についたがルル姉は口あたり膨らんでご機嫌斜めだ。
「むぅ!美味しくなかったら口聞かないからな…」
「絶対美味しいですよ」
ご機嫌斜めの食欲魔人様に美味しい焼きカニを捧げてお怒りを鎮めてもらおう。
「むむむ…なんかキモいし…これ食べづらい」
「ちょっと待てて」
ルル姉はカニ食べた事が無さそうだった。
僕は丁寧にハサミでカニの殻を切り取り食べやすくしてルル姉に渡した。
「ん?もくもく……ほぅ!はむはむはむはむ……むぅ?なにじっとしてる!はよー切らんか!」
「はいはい…」
「おそーい!もっと早く手を動かせ!」
まだ機嫌は悪いけどその表情を見るとかなりお口に合うらしく安心した。
「うーん♪もくもくはむはむ…」
お気に召したようでルル姉はいつもの無邪気な笑顔に戻った。
よし、機嫌治ったな!チョロッ!
あっという間に山の盛りのカニ殻の山ができてルル姉は満足したような顔でお茶を啜っていた。
その幸せそうな表情を見ると僕も嬉しくなった。
「次はどこに行くんだ?随分あちこち行ったが…」
「ええ…最後に両親の墓参りと温泉で一泊して終わりって感じです」
葬式のあとから僕は一度も墓参りに行ってない。
僕のせいで事故が起きたと思い込んで両親の前に合わせる顔がなかった。
でも…もう大丈夫!誤解も解けて…それに僕の隣にはルル姉もいる。
早くお父と母に元気になった僕とルル姉を会わせてあげたい。
「ふむふむ…そうか!それで今までの旅でなにか変われた気がしたか?」
「ち、ち、力が溢れて…戦闘力が50万ほど増えました!」
「うおおおっ!旅ってすげーな!おい…真面目に答えんか…」
「あはは…特に変わってないですが、でも…生きているって悪くないと…思うようになりました」
「悪くないか…上出来だ!生き物として生の執着は何かを成し遂げる為の糧になる…一皮むけたね!」
「あはは……」
ルル姉はニコニコして僕の成長を喜んでいたが…その目は母のような眼差しでなんか複雑な気分でもあった。
そして、最後の目的地に行く為に飛行機を乗って30分程経って上空から目的地が見えて来た。
「見えてきましたよ!あそこです!」
「……」
「ルル姉?」
先まで機内で燥いでいたルル姉が急に静かになって今まで見て事がない真剣な表情で外を見ていた。
「原点…この気配はあいつか…ならすぐにでも」
「ルル姉?」
「ハルト君…あの場所に行き道を知ってるか?」
ルル姉は原点と言って珍しく一人でボソボソ喋ってある場所に指を刺した。
「はい、あそこはこれから止まる旅館の近くです」
「そうか…」
ルル姉が指を指した場所は泊まる旅館の近い場所であり、大昔からの心霊スポットで有名だ。
最近、雑誌に紹介されで面白気に勝手に入って来る人が増えて僕としては不愉快極まりない。
何故なら、そこは志村家の私有地であり、ご先祖様と父と母が眠っている墓地もあるからだ。
空港から出てからルル姉は益々表情が固くて何か考え込んでいるように見えた。
きっと、あの時呟いた事と関係があると思って僕も少し不安を感じた。
「ルル姉…。」
「ん?大丈夫!体調が悪い訳ではない…」
「ならいいんですが…」
旅館でチェックインして温泉に入ってから墓参りに行った。
長く来てない志村家の墓には雑草が沢山生えていてご先祖様に合わせる顔が無い。
「父さん、母さん…僕、元気だよ、遅くなってごめん!もう心配しなくていいよ!ルル姉のお陰で悩みもさっぱり解決してる、これから…これから…頑張って生きて行けそう、だから安心してね」
両親の墓参りを済まして墓石を綺麗に洗ったあと、周りの除草作業を始めた。
だが放置し過ぎて中々片付かない…。
腰が痛くなった…。
手も痛くなった…。
足も痺れてきた…!
お父さん、お母さん、ご先祖様…すみません帰ったら業者さんに頼んでおきます…!
僕が取った雑草を片付けている間にルル姉も両親の墓の前で両手を合わせてくれて何か話しているように見えた。
ありがとう…ルル姉。
寒い冬に汗を沢山掻いて風邪引きそうで急ぎ旅館に戻って温泉に入ろうと思った。
「ルル姉、帰ろう…」
「うん…」
「あっ!そうそう、ルル姉が指差してた場所はここだよ」
「うん、分かってる…」
「ん?…そう?」
何故か元気がないルル姉と僕は沈黙の中で旅館に戻った。
「むぅ!美味しくなかったら口聞かないからな…」
「絶対美味しいですよ」
ご機嫌斜めの食欲魔人様に美味しい焼きカニを捧げてお怒りを鎮めてもらおう。
「むむむ…なんかキモいし…これ食べづらい」
「ちょっと待てて」
ルル姉はカニ食べた事が無さそうだった。
僕は丁寧にハサミでカニの殻を切り取り食べやすくしてルル姉に渡した。
「ん?もくもく……ほぅ!はむはむはむはむ……むぅ?なにじっとしてる!はよー切らんか!」
「はいはい…」
「おそーい!もっと早く手を動かせ!」
まだ機嫌は悪いけどその表情を見るとかなりお口に合うらしく安心した。
「うーん♪もくもくはむはむ…」
お気に召したようでルル姉はいつもの無邪気な笑顔に戻った。
よし、機嫌治ったな!チョロッ!
あっという間に山の盛りのカニ殻の山ができてルル姉は満足したような顔でお茶を啜っていた。
その幸せそうな表情を見ると僕も嬉しくなった。
「次はどこに行くんだ?随分あちこち行ったが…」
「ええ…最後に両親の墓参りと温泉で一泊して終わりって感じです」
葬式のあとから僕は一度も墓参りに行ってない。
僕のせいで事故が起きたと思い込んで両親の前に合わせる顔がなかった。
でも…もう大丈夫!誤解も解けて…それに僕の隣にはルル姉もいる。
早くお父と母に元気になった僕とルル姉を会わせてあげたい。
「ふむふむ…そうか!それで今までの旅でなにか変われた気がしたか?」
「ち、ち、力が溢れて…戦闘力が50万ほど増えました!」
「うおおおっ!旅ってすげーな!おい…真面目に答えんか…」
「あはは…特に変わってないですが、でも…生きているって悪くないと…思うようになりました」
「悪くないか…上出来だ!生き物として生の執着は何かを成し遂げる為の糧になる…一皮むけたね!」
「あはは……」
ルル姉はニコニコして僕の成長を喜んでいたが…その目は母のような眼差しでなんか複雑な気分でもあった。
そして、最後の目的地に行く為に飛行機を乗って30分程経って上空から目的地が見えて来た。
「見えてきましたよ!あそこです!」
「……」
「ルル姉?」
先まで機内で燥いでいたルル姉が急に静かになって今まで見て事がない真剣な表情で外を見ていた。
「原点…この気配はあいつか…ならすぐにでも」
「ルル姉?」
「ハルト君…あの場所に行き道を知ってるか?」
ルル姉は原点と言って珍しく一人でボソボソ喋ってある場所に指を刺した。
「はい、あそこはこれから止まる旅館の近くです」
「そうか…」
ルル姉が指を指した場所は泊まる旅館の近い場所であり、大昔からの心霊スポットで有名だ。
最近、雑誌に紹介されで面白気に勝手に入って来る人が増えて僕としては不愉快極まりない。
何故なら、そこは志村家の私有地であり、ご先祖様と父と母が眠っている墓地もあるからだ。
空港から出てからルル姉は益々表情が固くて何か考え込んでいるように見えた。
きっと、あの時呟いた事と関係があると思って僕も少し不安を感じた。
「ルル姉…。」
「ん?大丈夫!体調が悪い訳ではない…」
「ならいいんですが…」
旅館でチェックインして温泉に入ってから墓参りに行った。
長く来てない志村家の墓には雑草が沢山生えていてご先祖様に合わせる顔が無い。
「父さん、母さん…僕、元気だよ、遅くなってごめん!もう心配しなくていいよ!ルル姉のお陰で悩みもさっぱり解決してる、これから…これから…頑張って生きて行けそう、だから安心してね」
両親の墓参りを済まして墓石を綺麗に洗ったあと、周りの除草作業を始めた。
だが放置し過ぎて中々片付かない…。
腰が痛くなった…。
手も痛くなった…。
足も痺れてきた…!
お父さん、お母さん、ご先祖様…すみません帰ったら業者さんに頼んでおきます…!
僕が取った雑草を片付けている間にルル姉も両親の墓の前で両手を合わせてくれて何か話しているように見えた。
ありがとう…ルル姉。
寒い冬に汗を沢山掻いて風邪引きそうで急ぎ旅館に戻って温泉に入ろうと思った。
「ルル姉、帰ろう…」
「うん…」
「あっ!そうそう、ルル姉が指差してた場所はここだよ」
「うん、分かってる…」
「ん?…そう?」
何故か元気がないルル姉と僕は沈黙の中で旅館に戻った。
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