異世界で僕…。

ゆうやま

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1話 その3

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夜に女の子を置き去りにして帰るのも気が引けるのもあるが、こんな美少女と一夜ともにいられる事にドキドキ感が止まらないのが本音である。

「しかし、大晦日の夜なのに一人で腹ごしらえとは…君、ボッチなの?」

否定はしないが流石に傷ついた僕は顔に似合わないその無神経さを労わって心を込めて黙祷した。

「な、なに?その私に向けた哀れみの雰囲気は!」

「いや、それはお姉さんも一緒だと思って」

「な、なにを!…あはは!君、面白いね」

「いやいや…暴力反対!」

何故か今までの距離感が吹っ飛んでまるで友達のように僕とこのお姉さんは戯れあった。

「あ、そうね…私も自己紹介しないとね」

彼女は急に身なりを整えて優しい笑みを僕に見せながら凛々しく自己紹介を始めた。

「よく聞きがいい、そして子々孫々光栄に思いなさい!私の名はルナ、ファナリールッカ…そして!」

「えーーっ!お姉さんって外国人だったんですか!日本語が流暢でわかりませんでした」

「………」

日本人ではないとびっくりした僕は思わず自己紹介の話をポキっと折った。

「ねぇ…他人の自己紹介を最後までちゃんと聞かないとどっか怒り狂った女に蹴られて殺されるとかそんな話し教わってない?」

「そんな話は初耳ですが…気をつけます、続きをどうぞ」

「ふ、ふむ…今度話折らずにちゃんと聞きなさいよ!」

ただの自己紹介に彼女は何故か凄くこだわってる感じでどんな自己紹介か少し気になった。

「私の名はルナ、ファナリールッカ、そして、私はこの世界の者ではない」

その話を聞いて僕が聞き間違えたか彼女が日本語を間違えたかと思って突っ込むか否か迷ったがそのまま聞く事にした。

「私はこの世界と異なる、全宇宙の生命の根源地である始まりの地で16の大神の一柱である、破壊の業を司る女神である」

両方とも違った。

何を言ってるんだ?このお姉さん…。

生命の起源地?始まりの地?女神?

「ふぅ…2000年ぶりの自己紹介でちょっと照れるな…あはっ」

「………」

あまりも壮大で痛々しい自己紹介を聞いてガチガチに固まって言葉も出なかった。

そっち系に理解がある僕でもあれほど恥じらいなくまるで本当の事ように堂々と話す人は初めて見た。

彼女は僕が何を考えているか気付いたようでちょっと怒った表情をしていた。

「あのな…ひょっとして、私を痛々しい厨二病の病に侵されている哀れな女だと思ってない?」

「いや、そ、その、それが…はい、ちょっとだけ」

それを聞いた彼女は意外と怒らずに虚しい表情で落ち込んでただ空を見上げていた。

その姿を見ると何故か胸が締め付けられる感じがして怒ってくれた方が良かったと思った。

「そうだな、ここはあの事件以来最早神々も精霊もいなくなって長い時が経ったもんな…当たり前か」

あの壮大な自己紹介や末期の厨二病であっても彼女の悲しむ顔に比べれば耐えられると思った。

それで僕はどんな話でも真面目に聞こうと決めた。

「あの…お姉さんの事、ルルさんと呼んでいいですか?」

「うん?…ルル?」

「はい…愛称ようなもので可愛いし、呼びやすいと思って…」

まあ、長いし、言い辛いし、舌を噛みそうで是非受け入れて欲しいのが本音であったが今考えると我ながらいい愛称だと思った。

「ルルか……いい呼び名だ、気に入ったよ、ありがとう」

「よかった…えへへ」

「よし、これからルル様と呼ぶ事を許す!」

「はい、ルルさん」

「だから、ルル様…」

「ええ…ルルさん」

「ほぇ…顔に似合わないほど根性が座ってるね」

僕は彼女が少し笑顔を取り戻すと嬉しくなって自己紹介で話していた事を聞くと嬉しいように話し始めた。

確かに自分が一生懸命考えた設定を他人に聞いて貰える事は嬉しいだろう…。

「それより、ルルさんのアル…何ちゃらってどんなところか聞きたいです」

「はぁ?何ちゃらってなんだ!うちの世界ばかにしとるの?」

「いやいや…一度聞いて覚えられないですよ」

「ふん、そ言う事にしとくからちゃんと覚えてよ」

少しずつルルさんの表情が明るくなってそのアルケーミュスというところの話しに僕も盛り上がった。
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