創成の錬金術師

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;殺される運命

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俺には才能がなかった。
運動神経が良いだとか身長が高いとか少し人より手が器用だったとか、そんな人とはちょっと違うような才能がなかった。
もしかしたら才能がないのが才能だったのかもな、全く笑えるぜ。才能がないから目標がなかった。才能がないから誰の気持ちも分からなかった。
当然だが結婚もしてないし、彼女も居ない。他の兄弟はみんな自立して家庭を築いているというのに、俺は実家で親のスネかじりをしていた。いわゆる自宅警備員とやつだ。
しかし終わりは突然やってくる。

殺されたのだ何者かに。

人生何があるのか分からないものである。

その日は久しぶりに早起きしてニュースを見ていた。何か大きな事件があった訳ではない。
上○動物園のパンダがどうとか、天気が良いだとか、
人が俺の家近くで死んでいたのは事件だが気にせずに過ごした。
その日は何を思ったのだろう、天気が良かったからだろうか、外に出たのだ。
何か言いたそうな目をする両親を横目に外に出ていた。

案外外も悪くなかった。久しぶりの外なので太陽光がキツかったが、それでも風が吹いてなかなか悪くなかったのだ。
道路を歩いていると見えたのがハローワーク。

「・・・全くやめてほしぜ。」
ため息と悪態をつきながら、またとぼとぼ歩き出していた。

少し昔話をしよう。これは小学校の頃だ。

小学生だった俺はなんにでもなれると思っていた。
誰だってそういう過去があるだろう。
自分には才能があるんだと。 他の人にない特技を持っているだと。

少年の俺はやる気に満ち溢れていた。クラスの人気者でムードメーカーだった。誰からも頼られ、みんなを笑わせ女子からもモテていた気がする。

しかしここで転機が訪れる。確かテスト返しの時だ。
担任の先生は少年の俺にこう言い放った。
「お前は何をさせてもダメダメだな。」と
俺はもちろん反論したさ、
「俺はやろうと思えばなんだってやれるんだぞ!」

この時思った。
努力していつかこいつを見返してやるんだってね。

現実はそんなに甘くなかった。何をしても1番になれなかった。精一杯頑張って中の上程度。自分より頑張ってない奴が1番を取っていることに苛立ちを覚えた。中の上では満足いかなかった。

それからどれだけ頑張ろうと伸びることはなく
小学校を卒業する頃には自分に才能がないことを自覚していた。

中学、高校に入るともっと酷かった。才能がないのはわかってた。だから努力をしようと決意したんだ。

勉強もスポーツも人並み以上に努力した。
しかし 世界ってのは理不尽だ。
勉強もスポーツも人並み以下しかできなかった。

ここで俺は人生で1度目の挫折をする。
そんな人間は学校で上手く行くわけがない。

高校からイジメを受けた。この時期に比べると今はまだマシかもしれない。何度も自殺しようも思った。でも勇気がでなかった。これが2度目の挫折だ。

そして引きこもってしまった。
高校も中退した。俺の最終学歴は中卒になる、卒業くらいしとけば良かったと思う。

家族はそんな俺を受け入れてくれた。

あえて何も言わなかったのだ。それはとても嬉しかった記憶がある。昔と同じように接してくれた。

だが、俺だって馬鹿じゃない。

陰で色々言われているのだと薄々気づいていた。
その事に気づいた日から家族とは一切話さなくなった。
それから数年たち俺以外の兄弟は自立し実家には俺と両親しか居なくなった。

引きこもっている間は毎日、寝て、起きて、ゲームして、アニメを見て、オ○ニーして、寝る。そんなことを繰り返していた。 別のことをしようと思ったことはある。

だが才能ある者達を見ると挫折してしまう。俺の人生は挫折ばかりだ。

そんな生活を送ってもう10年とちょっとくらいだろうか。

親も何も言ってこないが、さっきのように何か言いたそうな目して訴えてくる。リビングの机に求人の雑誌が置いてることだってある。無論全て見なかったことにする。

そして今日に至る訳だ。・・・どうだ笑えるだろう?惨めだと思うだろう?もう何を言われても言い返す気力がない。

「・・・・・疲れた。」
そう、俺は疲れていた。もう先の見えない自分の人生に、もう誰とも関わることがないであろうこの「世界」に、どっかの神父さんに世界でも一巡させてもらいたいものだ。

フラフラと街を歩きそろそろ帰ろうかと思っていたその時である。

派手な2人組がこっちに近づいて来るではないか。
明らかに俺の方を向いて近づいて来るのだ。なんだポケ○ンバトルでもしようってか?
悪いが小学校から対戦では1回も負けたことはないんだ。
中学からはする相手が居なくてずっとインターネット対戦だったが。

その2人組はゆっくりこちら側に近づくと懐からナイフのような物を取り出した。

そういえば朝のニュースのひとつに家の近くで人が死んでいたって·····。犯人が捕まっていなかったのだろうか。もしそうだと仮定すると、これは危険だ。

俺は慌てて走ろうとした。しかし久しぶりに歩いた反動と慌てていた事もあるだろう。その場で盛大に転んでしまった。周りに人は居ないため、警察に通報されてないだろう。

2人組の顔は隠れて見えないが、髪が派手なのは見えた。
これが噂に聞くDQNってやつだな。

何故か怖いとは思わなかった。逆に安堵している自分がいる気がする。

2人組は俺の目の前に来ると持っているナイフを俺に突き立てた。

「周りが見えない。」
刺されたのだろうか。痛みはない。

すると2人組の声が聞こえた。1人は何か唱えている様である。もう1人は俺に何か語りかけているようである。
何を言っているのかまったくわからんが一言だけ、はっきりと、聞き取れた。

「頑張れよ。」

俺はDQNからも鼓舞されるほどダメダメ人間なのだろう。

何も見えないがお腹辺りが痛くなってきた。どうやら痛みが麻痺していたらしい。あぁ血が足りない。痛い。

どうせ死ぬなら最後に家族に謝らせて欲しい。俺のせいで苦労をかけただろう。俺のせいで迷惑をかけただろう。
だからせめて謝りたい。

「ごめんなさい。産んでくれてありがとう。」


俺は死んだ。
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