恋の居場所

桜庭 葉菜

文字の大きさ
上 下
24 / 26

出会い 1

しおりを挟む
「きゃああああああ!」

 全力で走って洞窟の外に逃げる。

 なぜこんなに全力で逃げる羽目になったのか。

 数分前に1人で洞窟に来たところまではよかった。

 しかし、ダークウルフの動きが速すぎて遠距離武器の私には攻撃を与える隙がなく、一方的に攻撃を受け続けてしまった。

 気づけば目の前がほんのり赤色に変わっていて、HPが2割を切っていた。

 こんなにやられたのは初めてで、こうして逃げる羽目になった。

「はぁ、はぁ……やっぱり1人は、まずかったかな……」

 洞窟から逃げ出し、草原の上で1人反省した。

 やはり遠距離武器が1人で戦うのは難しい。

 周りに敵がいないことを確認してから回復ポーションを飲み、視界の悪さを治した。

「よかったら一緒に行きましょうか?」

 知らない声でそう言われる。

 まだ息を整えている途中だが、前方から話しかけてきた人に返事をするため顔を上げた。

 目の前にウエスタンな剣士が立っている。

 比べるのは申し訳ないが、アキラよりも背の高い男の人だ。

 赤と黒を基調とした服と、茶色い皮のブーツと手袋をしている。

 頭に被っている羽根帽子がやけに似合っているように感じた。

「あのー……?」

 その声を聞いて初めて目線を合わせた。

「あ、すみません! 出来れば、その、よろしくお願いします!」

 深々と頭を下げる。

 その頭を上げて再び彼の顔を見ると、彼は笑顔を見せてくれた。

「じゃあ、パーティ誘いますね」

 そう言って彼が素早くウィンドウを開いた。

『ユーキさんからパーティに誘われました』

「ユーキ、さん」

 初めて見たその名前を声に出してみた。

「はい、ユーキです。よろしくお願いします、ユリさん」

 私はウィンドウに表示されている承認に触れた。

「じゃあ、早速行きましょうか!」

 ユーキさんが赤と黒のマントを翻し、張り切って歩き出した。

 後ろから青い髪が少し見える。

 私とアキラは現実とほぼ変わらない色にしているけど、こうやってゲームならではの色を楽しんでいる人もいるんだよなぁ。

 気が向いたらこの世界の美容室で髪を染めてみるのもいいかもしれないと思った。

 ほんの少し前に1人で逃げ出したばかりの洞窟に、今度はユーキさんと2人で入る。

 ユーキさんがいるおかげか、さっきよりも洞窟の暗さが多少はマシに感じた。

「ここには何しにきたんですか? 国王にダークウルフの毛皮を頼まれてるとか?」

「それです!」

「それならすぐ終わりますね。行きましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

処理中です...