恋の居場所

桜庭 葉菜

文字の大きさ
上 下
8 / 26

アキラとユリ 1

しおりを挟む
「そろそろパーティ組んでストーリー進めようか」

 アキラがそう言って、何やらウィンドウを触り始めた。

 アキラのウィンドウが閉じたと思うと、今度は私の目の前に新しいウィンドウが開いた。

『アキラさんからパーティに誘われました』

 その文の下に〈 承認 〉〈 拒否 〉の選択肢が現れる。

 もちろん、拒否する理由はない。

 迷わず承認に触れる。

 すると、アキラの名前が黄色に変わった。

 どうやらパーティメンバーの名前は黄色で表示されるらしい。

 他にも、フレンドはピンク、ギルドメンバーは緑で表示されるようになっている。

 色で判断できるのはとても便利だ。

 私はずっと開きっぱなしだったウィンドウを閉じる。

 閉じる時も開く時と同じことをする。

 パチンと綺麗な音が鳴り、ウィンドウと名前の表示が消えた。

「まずはあの赤いビックリマークの人に話しかけよう。そうすれば進むらしい」

 らしい、ということはアキラもまだ何も進めていないのだろう。

 早速2人でその赤いビックリマークの人のところへ向かった。

 可愛いピンクのワンピースを着た女性。

 その頭の上にはしっかりとメインクエストをくれる人である証、赤いビックリマークがある。

 しかし……

「これ、どうすれば進むのかな?」

 普通のゲームなら近づけば話しかけるマークが出るのだが、どうやらこのゲームにその機能はないようだ。

「あ、あのー……」

 そう声をかけてみるとその女性が反応した。

「ルーネシア王国で9匹の竜を倒してくれる人を探しているそうです。もし興味がありましたらここを出て北に進むと着きますよ」

 なるほど。

 話しかけるマークがあるわけではなく、本当に話しかければいいってことなのね。

「じゃあ言われた通り北に行こうか」

 先に歩きだしたアキラの腰を見る。

 横向きの小さな鞘。

 あれは──短剣?

「これが気になるのか?」

「ふえっ……?」

 びっくりして間抜けな声を出してしまった。

 アキラがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

「俺、短剣にしたんだ。短剣はさ、ただ戦うだけじゃなくて相手に毒を与えたりとかできるんだよ。そういうのあった方が面白いかと思って」

 立ち止まって右手を後ろに回し、短剣を手に持って見せてくれた。

「ユリはなんの武器にしたの?」

 出した短剣をしまいながら私に聞いてくる。

「私? 私は弓だよ」

 くるりと一瞬だけ背中を見せて言った。

「そっか。近距離と遠距離とでちょうどいいかもな」

「確かに」

 今度こそ行こうか、そう言われて私はやっと歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【完結】日本で生まれたのに見た目はファンタジーな私!日本語しか喋れないんだけど、何か悪いの?~ピンク髪のヒロインはVRゲームの中で恋愛する~

黒幸
恋愛
旧々題『ピンク髪のヒロインは今日も不機嫌』 旧題『日本で生まれたのに見た目はプリンセスな私!日本語しか喋れないんだけど、何か悪いの?~ピンク髪のヒロインは電子の妖精の夢を見るか?~』 三度目の正直で今度のタイトルで決定です。 2022/1/15に本編は完結しました! アリスは幼馴染のタケルと友達以上恋人未満の関係。 傍目には両想いにしか見えない二人の関係はもどかしいまま、一向に進まない。 彼女は想いを素直に口に出せない天邪鬼な性格。 そんな彼女はタケルが全て、分かってくれた上で自分と付き合ってくれていると信じて、疑っていない。 自分は恋物語のヒロインなのだと思い、日々を過ごしていた。 本編25話、後日談16話の構成となっています。 表紙はノーコピライトガール様のイラストをお借りしています。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...