11 / 27
久しぶり 2
しおりを挟む
やっぱり私はどこか期待していた。
でも違った。
こうちゃんは完全に私のことを忘れている。
こうちゃんの前から立ち去ろうとした瞬間、涙が溢れ始めた。
「え、いや、その違くて。ご、ごめ──」
突然の涙を隠しきれず、こうちゃんになんとか言い訳をしようと考える。
「こっち、きて」
こうちゃんがそう言うのと同時に、私の手を取り歩き出した。
こうちゃんの手は昔よりも大きくて、今の私にはとても暖かかった。
私が連れて行かれた場所は体育館の裏と思われる、人の少ない場所だった。
「ちょ、ちょっと待ってて」
慌てた声で言われ、私は近くのベンチに座った。
こうちゃんに迷惑をかけてしまった。
知らない女の子に泣かれてきっと嫌な思いをしているだろうな……
せっかく履いてきたスカートに、涙の模様が1つ、また1つと増えていった。
「あの、ごめん。ほんと、泣かないで」
どこに行っていたのか、いつのまにか戻ってきたこうちゃんに言われる。
顔を上げると、こうちゃんが手に2つのペットボトルを持っていて──
「はいこれ。何が好きかわからなかったから俺の好きなやつだけど……飲める?」
ゆっくりと差し出されたのは、小さめのりんごジュース。
急に人前で泣き出した私をわざわざ人がいないところに連れてきてくれて、飲み物も買ってくれた。
困っておどおどしている姿も昔のまんまで。
私のことは忘れてしまったのかもしれないけれど、昔と何も変わっていなくて安心した。
気がつけば涙も止まっていた。
「ありがとう」
笑顔でそう言う私に安心したのか、こうちゃんの雰囲気が少し柔らかくなった。
だがこうちゃんはその場で立ったまま。
何か、話した方がいいのかな。
静かな場所で2人きり。
もらったりんごジュースを両方の手で転がしながら考える。
「連絡先、交換しませんか?」
頭で色々考えていたはずなのに、気づけばそんなことを口に出してしまっていた。
「連絡先?」
どうしよう、引かれていないかな……
「ほら、これで知り合いってことで!
私は人違いしてないーみたいな……あはは、そんなわけ、ないですよね……」
言い訳がどんどん苦しくなってきて苦笑いで最後の方をごまかす。
もっと変な人だと思われている……
どうにも出来なくなり、りんごジュースをギュッと握った。
「くっ……なにそれっ、変なの……」
こうちゃんが思わず笑っている。
予想と違う反応で一瞬戸惑ったが、笑ってくれたならよかった。
やっぱり笑顔も昔と変わっていない。
私の知っている、大好きなこうちゃんのままだった。
「連絡先、交換しよう」
まだ笑いが治まらないこうちゃんが、そう言いながら携帯を出した。
私を忘れてしまったのは悲しいが、もしかしたら思い出してくれるかもしれないし、思い出せなくても、新しい思い出をまた作ればいい。
あんなに不安いっぱいだったのに、最後はこうちゃんのおかげで前向きにいこうと思えるようになった。
連絡先を交換すると、こうちゃんの携帯に友達から連絡が入る。
どうやらクラスの片付けに向かう途中でたまたま私を見つけたそうで、やらなければならないことを友達に任せてきたようだった。
そのため、そろそろ帰ってこないと担任にバレるとのことだった。
こうちゃんにこれ以上迷惑をかけるわけには行かない。
連絡先を交換することができたので、これからはいつでも連絡を取ることができる。
今は早めに帰るべきだろう。
考えをまとめた私はベンチから立ち上がる。
でも違った。
こうちゃんは完全に私のことを忘れている。
こうちゃんの前から立ち去ろうとした瞬間、涙が溢れ始めた。
「え、いや、その違くて。ご、ごめ──」
突然の涙を隠しきれず、こうちゃんになんとか言い訳をしようと考える。
「こっち、きて」
こうちゃんがそう言うのと同時に、私の手を取り歩き出した。
こうちゃんの手は昔よりも大きくて、今の私にはとても暖かかった。
私が連れて行かれた場所は体育館の裏と思われる、人の少ない場所だった。
「ちょ、ちょっと待ってて」
慌てた声で言われ、私は近くのベンチに座った。
こうちゃんに迷惑をかけてしまった。
知らない女の子に泣かれてきっと嫌な思いをしているだろうな……
せっかく履いてきたスカートに、涙の模様が1つ、また1つと増えていった。
「あの、ごめん。ほんと、泣かないで」
どこに行っていたのか、いつのまにか戻ってきたこうちゃんに言われる。
顔を上げると、こうちゃんが手に2つのペットボトルを持っていて──
「はいこれ。何が好きかわからなかったから俺の好きなやつだけど……飲める?」
ゆっくりと差し出されたのは、小さめのりんごジュース。
急に人前で泣き出した私をわざわざ人がいないところに連れてきてくれて、飲み物も買ってくれた。
困っておどおどしている姿も昔のまんまで。
私のことは忘れてしまったのかもしれないけれど、昔と何も変わっていなくて安心した。
気がつけば涙も止まっていた。
「ありがとう」
笑顔でそう言う私に安心したのか、こうちゃんの雰囲気が少し柔らかくなった。
だがこうちゃんはその場で立ったまま。
何か、話した方がいいのかな。
静かな場所で2人きり。
もらったりんごジュースを両方の手で転がしながら考える。
「連絡先、交換しませんか?」
頭で色々考えていたはずなのに、気づけばそんなことを口に出してしまっていた。
「連絡先?」
どうしよう、引かれていないかな……
「ほら、これで知り合いってことで!
私は人違いしてないーみたいな……あはは、そんなわけ、ないですよね……」
言い訳がどんどん苦しくなってきて苦笑いで最後の方をごまかす。
もっと変な人だと思われている……
どうにも出来なくなり、りんごジュースをギュッと握った。
「くっ……なにそれっ、変なの……」
こうちゃんが思わず笑っている。
予想と違う反応で一瞬戸惑ったが、笑ってくれたならよかった。
やっぱり笑顔も昔と変わっていない。
私の知っている、大好きなこうちゃんのままだった。
「連絡先、交換しよう」
まだ笑いが治まらないこうちゃんが、そう言いながら携帯を出した。
私を忘れてしまったのは悲しいが、もしかしたら思い出してくれるかもしれないし、思い出せなくても、新しい思い出をまた作ればいい。
あんなに不安いっぱいだったのに、最後はこうちゃんのおかげで前向きにいこうと思えるようになった。
連絡先を交換すると、こうちゃんの携帯に友達から連絡が入る。
どうやらクラスの片付けに向かう途中でたまたま私を見つけたそうで、やらなければならないことを友達に任せてきたようだった。
そのため、そろそろ帰ってこないと担任にバレるとのことだった。
こうちゃんにこれ以上迷惑をかけるわけには行かない。
連絡先を交換することができたので、これからはいつでも連絡を取ることができる。
今は早めに帰るべきだろう。
考えをまとめた私はベンチから立ち上がる。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております

【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる