7 / 27
こうちゃんとの日々 2
しおりを挟む
なんでここにいるのか、その服装はなんなのか、私に話しかけた理由はなんなのか、色々な疑問が思い浮かぶ。
「ど、どうしたの?」
「え?」
全ての言葉を省略してそれだけ言ってしまった。
さすがにこれでは意味がわかるまい。
私がきちんと説明しようと考えていると、こうちゃんの方が先に口を開いた。
「今ちょうど部活から帰ってきたところだったんだけど、家に誰もいないのに家の鍵忘れちゃって……
時間潰すためにウロウロしてたらことねっぽい人がいるなって」
なるほど。
私はようやくこうちゃんの状況を理解することが出来た。
そして何よりも私のことを覚えていてくれて、私だと思って声をかけてくれたことが嬉しかった。
「じゃあさ、うちくる?」
少し大胆なことを言ってしまったかな。
こうちゃんが少し驚いている気がする。
でもこれ以外にこうちゃんともう少し一緒にいれる方法がない気がしたから……
なんて意味もなく自分自身に言い訳をした。
「いいの?」
「今お母さんいなくて、でも連絡入れておくから大丈夫だよ」
そう言うとこうちゃんが笑顔になり、喜んでくれた。
お母さんには「友達が鍵忘れちゃったみたいで少しの間だけ家にあげるね」と連絡をした。
仕事中なので返事は期待していない。
私はすぐに携帯をしまった。
「おじゃましまーす」
こうちゃんが靴を綺麗に揃えて部屋に入った。
ここは週に1度しかこないお母さんの家なのに、まるで自分の部屋に招き入れたような気になり、緊張してきた。
本当に自分の部屋に招き入れる時は事前に掃除するんだろうな。
おじいちゃんおばあちゃんの家にある自分の部屋を思い浮かべながらそう考えた。
「あれ、これ学校の宿題?」
「え? あ……」
しまった。
学校の宿題を机の上に広げたまま公園に行ってしまい、その事をすっかり忘れていた。
こうちゃんが近くによって私の宿題を見ている。
間違ってるところとか、字が汚いとか、大丈夫かな。
「やっぱ学校は違ってもやってる範囲は同じなんだな」
「そうなの?」
「そうだよ」
そんなこと言われたらこれから授業を受ける度、この単元こうちゃんもやってるのかなとか考えてしまいそうだ。
「でも俺の方がちょっとだけ進んでるかも。
よかったら一緒にこの宿題やらない?
他にやることもないしさ」
私の宿題を、一緒に?
「いいの?」
「もちろん。ちゃっちゃと終わらせようぜ」
こうちゃんが張り切って宿題の前に座る。
なんか昔も今もこうちゃんに助けられてるなぁ……
私もこうちゃんの隣に座り、2人で宿題を始めた。
思っていたよりもこうちゃんの教え方が上手く、1人でやった時とは比べ物にならないスピードで宿題が進んだ。
もちろんこうちゃんが頭悪いとは思っていなかったけど、まさかそんなに頭良かったとは。
運動もできて勉強もできるなんて……いいなぁ。
運動が人並み以下で勉強はそこそこな私には少し羨ましかった。
その後は黙々と2人で宿題を進めた。
1時間ほどで私の宿題も無事に終わり、こうちゃんもそろそろお母さんが帰ってくる頃だと言うのでここまでだ。
せっかく久々にこうちゃんに会えたというのに。
もっと長く一緒にいたいという願いは届かないものなのか。
とはいえ、こうちゃんにまだ一緒にいようと言える勇気もないので仕方ない。
「じゃあ、またね」
私はこうちゃんをマンションの出口まで送った。
「ああ、また」
こうちゃんが軽く手を振ってから背を向けて歩き出す。
私はこうちゃんが見えなくなるまで見送ったが、こうちゃんは1度も振り返ることはなかった。
それからしばらくしてお母さんが帰ってきたが、こうちゃんを家に入れたことについて、特に聞かれることは無かった。
次の日には何事もなく元の家に戻った。
「ど、どうしたの?」
「え?」
全ての言葉を省略してそれだけ言ってしまった。
さすがにこれでは意味がわかるまい。
私がきちんと説明しようと考えていると、こうちゃんの方が先に口を開いた。
「今ちょうど部活から帰ってきたところだったんだけど、家に誰もいないのに家の鍵忘れちゃって……
時間潰すためにウロウロしてたらことねっぽい人がいるなって」
なるほど。
私はようやくこうちゃんの状況を理解することが出来た。
そして何よりも私のことを覚えていてくれて、私だと思って声をかけてくれたことが嬉しかった。
「じゃあさ、うちくる?」
少し大胆なことを言ってしまったかな。
こうちゃんが少し驚いている気がする。
でもこれ以外にこうちゃんともう少し一緒にいれる方法がない気がしたから……
なんて意味もなく自分自身に言い訳をした。
「いいの?」
「今お母さんいなくて、でも連絡入れておくから大丈夫だよ」
そう言うとこうちゃんが笑顔になり、喜んでくれた。
お母さんには「友達が鍵忘れちゃったみたいで少しの間だけ家にあげるね」と連絡をした。
仕事中なので返事は期待していない。
私はすぐに携帯をしまった。
「おじゃましまーす」
こうちゃんが靴を綺麗に揃えて部屋に入った。
ここは週に1度しかこないお母さんの家なのに、まるで自分の部屋に招き入れたような気になり、緊張してきた。
本当に自分の部屋に招き入れる時は事前に掃除するんだろうな。
おじいちゃんおばあちゃんの家にある自分の部屋を思い浮かべながらそう考えた。
「あれ、これ学校の宿題?」
「え? あ……」
しまった。
学校の宿題を机の上に広げたまま公園に行ってしまい、その事をすっかり忘れていた。
こうちゃんが近くによって私の宿題を見ている。
間違ってるところとか、字が汚いとか、大丈夫かな。
「やっぱ学校は違ってもやってる範囲は同じなんだな」
「そうなの?」
「そうだよ」
そんなこと言われたらこれから授業を受ける度、この単元こうちゃんもやってるのかなとか考えてしまいそうだ。
「でも俺の方がちょっとだけ進んでるかも。
よかったら一緒にこの宿題やらない?
他にやることもないしさ」
私の宿題を、一緒に?
「いいの?」
「もちろん。ちゃっちゃと終わらせようぜ」
こうちゃんが張り切って宿題の前に座る。
なんか昔も今もこうちゃんに助けられてるなぁ……
私もこうちゃんの隣に座り、2人で宿題を始めた。
思っていたよりもこうちゃんの教え方が上手く、1人でやった時とは比べ物にならないスピードで宿題が進んだ。
もちろんこうちゃんが頭悪いとは思っていなかったけど、まさかそんなに頭良かったとは。
運動もできて勉強もできるなんて……いいなぁ。
運動が人並み以下で勉強はそこそこな私には少し羨ましかった。
その後は黙々と2人で宿題を進めた。
1時間ほどで私の宿題も無事に終わり、こうちゃんもそろそろお母さんが帰ってくる頃だと言うのでここまでだ。
せっかく久々にこうちゃんに会えたというのに。
もっと長く一緒にいたいという願いは届かないものなのか。
とはいえ、こうちゃんにまだ一緒にいようと言える勇気もないので仕方ない。
「じゃあ、またね」
私はこうちゃんをマンションの出口まで送った。
「ああ、また」
こうちゃんが軽く手を振ってから背を向けて歩き出す。
私はこうちゃんが見えなくなるまで見送ったが、こうちゃんは1度も振り返ることはなかった。
それからしばらくしてお母さんが帰ってきたが、こうちゃんを家に入れたことについて、特に聞かれることは無かった。
次の日には何事もなく元の家に戻った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております

【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる