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こうちゃんとの出会い 2
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私は1人で大きく息を吐いた。
自分の手を見ると豆ができていて少し痛い。
この調子で本当にできるようになるのかな。
1人になった途端、急に不安になり、視界が滲んだ。
「あげる」
私の手の前に小さなペットボトルがひょっこりと現れる。
それが現れてきた方を見ると、こうちゃんが同じものをもう1本持って立っていた。
「何が好きかわからなかったから、俺が好きなやつにしちゃった」
「ありがとう」
私は目の前のものをそっと両手で握りしめる。
なんだか手の痛みが和らいだ気がした。
私が飲み物を受け取ったことを確認したこうちゃんは、私と少し間をあけてベンチに座った。
2人で同じりんごジュースを飲む。
それからこうちゃんがぽつぽつと、なんでもないような話を始めた。
少しの休憩だったはずが、気づけば学校のことやお家のことなど、時間を忘れて話していた。
「そろそろやろうか」
そう言われた時にはもうすっかり日が傾き始めていた。
「がんばれー!」
こうちゃんが近くで見守ってくれている。
たくさんアドバイスももらったし、きっとできる。
鉄棒をぎゅっと握った手からじんわりと冷たさを感じる。
もう一度鉄棒を握り直してから、勇気を振り絞って思いっきり足を上げた。
今までにない感覚と景色。
気がついた時には一回転して地面に着地していた。
「わぁ! で、できた……!」
満面の笑みでこうちゃんを見ると、こうちゃんは自分のことのようにすごく喜んでくれた。
「すげぇ! 今のめっちゃ綺麗だった!」
「ありがとう! こうちゃんのおかげだよ!」
両手を上げてハイタッチをする。
「いたっ……」
私はすっかり手の豆のことを忘れていた。
「ご、ごめん!」
びっくりしたこうちゃんが慌てて謝ってきた。
「大丈夫だよ」
そうは言いつつもだんだんと、痛みを感じ始めた。
「ど、ど、どうしよう……」
こうちゃんが私の手を見てソワソワと動き出した。
「ことね?」
思わぬ方向から聞こえてきた声は、仕事を終えてきたお母さんだった。
「お母さん! 手に豆が出来ちゃったの」
そう言って私はお母さんに手を見せる。
こうちゃんはお母さんがきたおかげか、少しだけ落ち着いた。
「あらあら、お家に帰って絆創膏貼ろっか」
お家に帰る……こうちゃんとバイバイしなきゃいけなくなっちゃう。
手の豆は手当てしたいけど、こうちゃんともっと遊びたい──
「うん……」
私は悲しい気持ちを隠しきれずにいた。
「ことね、またここに来る?」
こうちゃんの口から出た意外な言葉。
え、それって──
「また、一緒に遊んでくれるの?」
少し小さめの声で聞く。
「もちろん! だから今は手の豆治して、今度学校で逆上がりできたか教えて」
またこうちゃんと遊べる。
それだけですごく嬉しかった。
こうちゃんに言われた通り、今は手の豆を治して、次会った時にいい報告ができるようにしたいと思えた。
「じゃあ、帰ろっか」
お母さんがこうちゃんにお礼をしてから、私の手を握った。
「またね」
こうちゃんが笑顔で手を振ってくれる。
またねって言葉には次も会えるって意味があるようで、バイバイするはずなのに嬉しい気持ちになった。
「またね!」
私も同じように手を振りながら返事をした。
それからお母さんと一緒にお家に帰った。
手の豆の手当をしながら、私はこうちゃんのおかげで逆上がりができたことをお母さんに話す。
お母さんはとても喜んでくれて、また次もこうちゃんと遊べるといいねと言ってくれた。
その夜はお母さんと2人でゆっくり過ごし、次の日におじいちゃんおばあちゃんの家に帰った。
自分の手を見ると豆ができていて少し痛い。
この調子で本当にできるようになるのかな。
1人になった途端、急に不安になり、視界が滲んだ。
「あげる」
私の手の前に小さなペットボトルがひょっこりと現れる。
それが現れてきた方を見ると、こうちゃんが同じものをもう1本持って立っていた。
「何が好きかわからなかったから、俺が好きなやつにしちゃった」
「ありがとう」
私は目の前のものをそっと両手で握りしめる。
なんだか手の痛みが和らいだ気がした。
私が飲み物を受け取ったことを確認したこうちゃんは、私と少し間をあけてベンチに座った。
2人で同じりんごジュースを飲む。
それからこうちゃんがぽつぽつと、なんでもないような話を始めた。
少しの休憩だったはずが、気づけば学校のことやお家のことなど、時間を忘れて話していた。
「そろそろやろうか」
そう言われた時にはもうすっかり日が傾き始めていた。
「がんばれー!」
こうちゃんが近くで見守ってくれている。
たくさんアドバイスももらったし、きっとできる。
鉄棒をぎゅっと握った手からじんわりと冷たさを感じる。
もう一度鉄棒を握り直してから、勇気を振り絞って思いっきり足を上げた。
今までにない感覚と景色。
気がついた時には一回転して地面に着地していた。
「わぁ! で、できた……!」
満面の笑みでこうちゃんを見ると、こうちゃんは自分のことのようにすごく喜んでくれた。
「すげぇ! 今のめっちゃ綺麗だった!」
「ありがとう! こうちゃんのおかげだよ!」
両手を上げてハイタッチをする。
「いたっ……」
私はすっかり手の豆のことを忘れていた。
「ご、ごめん!」
びっくりしたこうちゃんが慌てて謝ってきた。
「大丈夫だよ」
そうは言いつつもだんだんと、痛みを感じ始めた。
「ど、ど、どうしよう……」
こうちゃんが私の手を見てソワソワと動き出した。
「ことね?」
思わぬ方向から聞こえてきた声は、仕事を終えてきたお母さんだった。
「お母さん! 手に豆が出来ちゃったの」
そう言って私はお母さんに手を見せる。
こうちゃんはお母さんがきたおかげか、少しだけ落ち着いた。
「あらあら、お家に帰って絆創膏貼ろっか」
お家に帰る……こうちゃんとバイバイしなきゃいけなくなっちゃう。
手の豆は手当てしたいけど、こうちゃんともっと遊びたい──
「うん……」
私は悲しい気持ちを隠しきれずにいた。
「ことね、またここに来る?」
こうちゃんの口から出た意外な言葉。
え、それって──
「また、一緒に遊んでくれるの?」
少し小さめの声で聞く。
「もちろん! だから今は手の豆治して、今度学校で逆上がりできたか教えて」
またこうちゃんと遊べる。
それだけですごく嬉しかった。
こうちゃんに言われた通り、今は手の豆を治して、次会った時にいい報告ができるようにしたいと思えた。
「じゃあ、帰ろっか」
お母さんがこうちゃんにお礼をしてから、私の手を握った。
「またね」
こうちゃんが笑顔で手を振ってくれる。
またねって言葉には次も会えるって意味があるようで、バイバイするはずなのに嬉しい気持ちになった。
「またね!」
私も同じように手を振りながら返事をした。
それからお母さんと一緒にお家に帰った。
手の豆の手当をしながら、私はこうちゃんのおかげで逆上がりができたことをお母さんに話す。
お母さんはとても喜んでくれて、また次もこうちゃんと遊べるといいねと言ってくれた。
その夜はお母さんと2人でゆっくり過ごし、次の日におじいちゃんおばあちゃんの家に帰った。
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