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幸せって 1
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週が明けて、俺は前に三郷をナンパしたのと同じくらいの時間に駅に行った。
都会ではないといえ、何人もの人が仕事や学校から帰ってくる。
俺は絶対に三郷を見逃さないようにと、通り過ぎる人々を見つめた。
改札から出てきたフォーマルな格好にひとつ結びの女性。
──三郷だ!
俺はつい嬉しくなって駆け寄った。
すると三郷は俺と目が合うなり、見えなかったふりをして通り過ぎる。
「ちょっ、待って!」
体をびくつかせて立ち止まる三郷。
こっちは向いてくれない。
「びっくりさせてごめん、少しだけ、話をさせてくれないか」
そっと近づいて精一杯優しい声で言う。
「ごめんね、連絡返せなくて。スマホ壊れちゃって、次の休みに修理しようと思ってるんだよね」
作られた笑顔でこちらに向く。
「三郷の旦那に会った」
間髪入れずに発せられた俺の言葉を聞いて、三郷の表情一瞬で変わる。
「何言われた!? どっか怪我してない!?」
慌てて俺に駆け寄る三郷。
「俺の連絡先を消させたって。もう関わるなって。それだけ」
「ごめんなさい……」
三郷が謝ることじゃないのに。
「俺は大丈夫だから、それより──」
「もう私には関わらないでね。じゃあ、そろそろ帰らなきゃだから」
そう切り替えて、三郷は行ってしまった。
でも俺は諦めない。
また明日も明後日も、何度でも、ほんの少しの時間でも、こうやって三郷に会おう。
それから1週間。
俺は駅で三郷に声をかけ続けた。
でもあれ以来、俺の返事には答えてくれなかった。
もう本当に俺と関わりを断つつもりのようだ。
「三郷──」
「君、待ちなさい」
今日もまた改札から出てきた三郷に声をかけようとした時、なぜか俺が別の人に呼び止められた。
振り返るとそれは警官で。
「最近夜に駅で女性に話しかけている不振な男性がいると通報があってね、もしかして君かい?」
「え、っと……」
はい、それ、間違いなく俺。
もしかしてやばい?
このまま連れてかれる?
「すみません、この人私のツレなので。では」
警官の制止なんぞお構い無しに、俺は気づけば三郷に手を引かれていた。
都会ではないといえ、何人もの人が仕事や学校から帰ってくる。
俺は絶対に三郷を見逃さないようにと、通り過ぎる人々を見つめた。
改札から出てきたフォーマルな格好にひとつ結びの女性。
──三郷だ!
俺はつい嬉しくなって駆け寄った。
すると三郷は俺と目が合うなり、見えなかったふりをして通り過ぎる。
「ちょっ、待って!」
体をびくつかせて立ち止まる三郷。
こっちは向いてくれない。
「びっくりさせてごめん、少しだけ、話をさせてくれないか」
そっと近づいて精一杯優しい声で言う。
「ごめんね、連絡返せなくて。スマホ壊れちゃって、次の休みに修理しようと思ってるんだよね」
作られた笑顔でこちらに向く。
「三郷の旦那に会った」
間髪入れずに発せられた俺の言葉を聞いて、三郷の表情一瞬で変わる。
「何言われた!? どっか怪我してない!?」
慌てて俺に駆け寄る三郷。
「俺の連絡先を消させたって。もう関わるなって。それだけ」
「ごめんなさい……」
三郷が謝ることじゃないのに。
「俺は大丈夫だから、それより──」
「もう私には関わらないでね。じゃあ、そろそろ帰らなきゃだから」
そう切り替えて、三郷は行ってしまった。
でも俺は諦めない。
また明日も明後日も、何度でも、ほんの少しの時間でも、こうやって三郷に会おう。
それから1週間。
俺は駅で三郷に声をかけ続けた。
でもあれ以来、俺の返事には答えてくれなかった。
もう本当に俺と関わりを断つつもりのようだ。
「三郷──」
「君、待ちなさい」
今日もまた改札から出てきた三郷に声をかけようとした時、なぜか俺が別の人に呼び止められた。
振り返るとそれは警官で。
「最近夜に駅で女性に話しかけている不振な男性がいると通報があってね、もしかして君かい?」
「え、っと……」
はい、それ、間違いなく俺。
もしかしてやばい?
このまま連れてかれる?
「すみません、この人私のツレなので。では」
警官の制止なんぞお構い無しに、俺は気づけば三郷に手を引かれていた。
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