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初恋の人 2

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 それから気が付いたら高校生になって。

 初恋はただの思い出になって。

 俺にも彼女ができて。

 東京に行った頃にはすっかり忘れていた。

 もちろん、三郷にそのことは言っていない。

「ほんと、久しぶりだね、いつ帰ってきたの?」

 取ってきた飲み物を一口飲んでから、三郷が聞いてきた。

「あー、ちょうど1ヶ月くらい前に」

「そうだったんだね! いつまでこっちにいる?」

 俺はその質問に答えることができなかった。

 いつまで。

 いつまでって、そりゃ、死ぬまで。

 予定では残り5ヶ月。

「二宮くん……?」

 予想外に返事が返ってこないことに戸惑っているという声で俺を呼ぶ。

 俺も彼女を伺うようにゆっくりと視線を上げる。

「俺さ」

 へにゃりとおかしな笑いを浮かべながら。

「もうすぐ死ぬんだ」

 初めて自分のことを家族以外の人に話した。

「し、え──」

「お待たせしましたー」

 幸か不幸か、頼んでいたペペロンチーノとオムライスが運ばれてきた。

「とりあえず、食べようか」

 俺がフォークを持って食べ始めると、やがて三郷もスプーンを手に取った。

 食べている間、特に言葉は交わさなかった。

 そりゃ、食べ始める前にあんな話を聞いちゃあ、何も話せないよな。

 あそこまで言ってしまったら最後まで話さないとだよな。

 そう思って俺は特に味わうことなく素早く食べ、続きを話そうと改まった。

「あの、食べながら聞いてもらっていいんですが」

 半分ほど食べ終わったオムライス。

 彼女は一瞬手を止めたが、やがて俺の様子を伺いながらまたスプーンを進めた。

 俺は今日までのことを一通り説明した。

 余命が残り5ヶ月なこと。

 その残りの時間を好き勝手生きようと決めたこと。

「俺さ、大学は卒業できたんだけど、就職できなくて。そうやって一回狂っちゃったらさ、もうどうにもできなくて。
気がついたら5年もニートしてた。
それで病気になって、こっちに戻ってきたってわけ。
それから死ぬまでにやりたい事のひとつにナンパしてみたいなってのがあって、そしたら相手がまあ見事に三郷だったわけで……」

 そっと三郷を見る。

「ありがとう」

 久々に発せられた言葉は感謝だった。

 オムライスを食べ終えて、俺の話を真剣に聞いてくれていた。

「話してくれてありがとう」

 ああ、最初に話せたのが三郷でよかった。

 少しの間その雰囲気に浸っていたら、三郷のスマホが鳴った。

 それを見た三郷の表情が一瞬にして変わる。

「ごめん、ちょっと電話出てくるね」

 そう言って三郷が席を立った。

 離れたところに行ってしまったため、何を話しているのかは全く聞こえなかった。
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