ニート生活5年、俺の人生、あと半年。

桜庭 葉菜

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初恋の人 1

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 今まで1人で色んなところにいってきた。

 てことで、今日からは人と関わっていこうと思う。

 手始めにナンパから。

 いや、最初にすることじゃないかもしれないけど。

 でも、東京での友人とはもう会うことは難しいだろうし、こっちの友人とは上京してからみんな疎遠になってしまった。

 つまり、今の俺には友達が1人もいないことに等しい。

 ってことは作るしかない。

 だからナンパする。

 そういうこと。

 ナンパするならやっぱ駅前。

 仕事帰りくらいの時間を狙う。

 まあ、やったことないんだけどもさ。

 人生初ナンパ。

 東京の駅とかでやった方が成功しそうだけど、仕方ない。

 やるだけやってみるんだ!

 そう考えながら改札から出てくる人をもう何人も見つめている。

 どうせナンパするならやっぱ綺麗な人がいいよなぁ……

 という言葉を言い訳に、本当は声をかける勇気が出ない俺。

 そんな俺の視界の隅に映ったもの。

 一瞬見えた横顔。

 長い髪。

 メリハリのあるボディライン。

 まさしく俺が求めていたもの!

 さっきまでの勇気の話とかはもうすっ飛んで、俺は勢いで話しかけていた。

「あの、お姉さん!」

 そう声をかけると、その人は黙ってこちらに振り向いた。

 綺麗な瞳とばっちり目が合う。

「二宮くん?」

 目の前の美人は確かにそう言った。

「えっ、と……?」

 それはそうなんだが、どういうことなんだ?

「私、ずっと学校一緒だった三郷みさとだよ!」

 三郷……思い出した。

「三郷あかね!」

 俺の、初恋の人。

「そうだよ、久しぶりだね。まさかこんな所でナンパでもしようとしてたわけじゃあ、ないでしょうね?」

 ズイズイと近付いて顔を覗き込まれる。

「う……その、まさかです……」

 語尾がだんだんと小さくなった。

 恥ずかしい。

 まさか同級生、ましてや初恋の相手をナンパしてしまうなんて。

「せっかく会えたんだし、どこかお店入ってお話ししない? 奢ってくれたら許します!」

「もちろん、奢ります!!」

 そう言って俺たちは歩き出した。

 三郷は去年職場の人と結婚したこと、今でもその仕事を続けていることなど、ファミレスにつく間、軽く話してくれた。

 店につくなり、俺はドリンクバーとペペロンチーノ。

 三郷は同じくドリンクバーと、オムライスを注文した。

「飲み物、取りに行く?」

「あ、う、うん!」

 三郷に言われて、俺は慌ててついて行った。

 正直、緊張してる。

 まさか昔の同級生に会うなんて思わなかった。

 しかも何度も言うが、初恋の人だ。

 三郷とは小学校から高校までずっと学校が一緒だった。

 彼女を好きになったことに、これといった特別な理由はなかった。

 小学生の頃。

 仲が良かったから、可愛かったから、優しくしてもらったから。

 それくらいの理由。

 その頃は付き合いたいとかいう気持ちもなかった。
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