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どうせ死ぬなら 1

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 皿洗いと風呂と寝る支度を終わらせてベッドに入ったその夜。

 俺は珍しく考え事をしていた。

「あと半年……」

 ここにきてやっと実感がわいたというか、言葉の意味を理解してきたような気がした。

 あと半年。

 余命は絶対ではない。

 早く死ぬこともあるし、長く生きることもある。

 でも治すことを望まない俺は死ぬまでの残りの時間について考える必要がある。

 毎日毎日何もせずにいるのでは生きている意味がないように感じる。

 かといって今までみたいに毎日ゲームをすればいいだろうか。

 週一くらいならバイトをしてみてもいいかもしれない。

 今、俺がやりたいこと――

 どうせ、死ぬんだもんな。

「かわいい女の子に囲まれて過ごしたい! キャビアとかめっちゃ高いもん食いたい! 有名人に会いたい! んで、一緒に写真撮りたい! 旅行したい! 宝くじ当てて豪遊したい! ってか彼女欲しー!」

 夜中になんてことを叫んでるんだ俺。

 てか、言ってること中学生かな。

 いざ死ぬってなったらやっぱりどうしたらいいかわからないな。

 幸いなのは、俺が死ぬことを思ったほどネガティブに考えていないこと。

 なんかもっと「あー俺って死ぬのか、どうしよ、やだな」みたいな、病むようなことを想像してたけど、いざこうなってみると俺はそうはならないらしい。

 そりゃ、全く悲しくないと言ったら嘘になるけど。

 なんだろう。

 半年後、どうせ死ぬんだよな、だったら――

「いっそ、好き勝手生きてみるか!」

 そうだよ。

 どうせ死ぬんだ。

 美女ナンパして失敗してもどうせ死ぬから怖くない。

 余ってる金使い切ってもどうせ死ぬから困らない。

 最高だ!!

 なんでもかんでも「どうせ死ぬ」で片づけられる!

 明日から外出て、やりたいことして、好きなことに金使って……俺は幸せになって死ぬんだ!

 明日から、俺は変わるんだ。

 あと半年、されど半年。

 俺は俺の人生を生きる。

 底辺ニート童貞の俺はもう終わりだ!

 遠足前日のようなワクワクを胸に、俺は眠りについた。

 次の日、俺はまずくじを買った。

 近くにあった小さな店で1万円分。

 ギャンブルとか全くやった事なくて、これが人生で初めて。

 そこそこのばあちゃんが慣れた手つきで1万円分の宝くじを数えて渡してくれる。

 当たるだろうか?

 昨日「宝くじあてたい!」なんて叫んだけど、本当は当たらなくてもいい。

 俺は今人生で初めての体験をした。

 それだけでもう満足。

 その日は宝ぐじを飼うだけで家に帰った。

 俺の買った宝くじは、どうやら1か月後に結果がわかるやつだった。

 なので忘れないよう、部屋の机のわかりやすい所にまとめて置いた。

 明日からも外に出て、色々なところに行って知らない体験をしよう。
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