命の対価

友【死神】

　真っ白な空間。

　キミがいなくなった空間にボクはまだいた。

　ようやくボクの役目が終わった。

　キミと初めて言葉を交わした救急車でのことを思い出す。

「俺は生きて琴音に会いたい。そして今度こそ好きだと伝えたい」

　そして最後の契約の話をしたあの夜。

「俺が鈴木さんに好きだと伝えた後、俺の命を奪ってくれ」

　キミは記憶を奪われてもなおキミのままだった。

　初めて会った時から最後まで。

　キミはボクにきつく当たってくることもあったけど。

　それでも。

　不覚にも、まるで人間のような感情を思い浮かべてしまった。

　キミとの1年間はボクにとっても貴重なものとなった。

　人間のさまざまなことを理解することができた。

「天使、ね」

　キミから言われた言葉を思い出し、つい笑みがこぼれた。

　ボクにそんなことを言うなんてキミくらいだよ。

　ありがとうと言われたのもキミが初めてさ。

　こんなこと、死神のボクが思ってもいいかな。

　死神にとっては一瞬のような1年を思い出しながら。

　キミのことはきっと忘れないよ。

　ボクの友。