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28 人間からのアドバイス
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「ふわあぁ~~~~!! すごい! すごいです! 佳祐先生の生原稿! うわ~! 『巫女っ娘探偵カグヤちゃん』のあのシーンだ~! すごい感激です~!」
「ははっ、こんなので喜んでもらえるなら好きなだけ原稿を見ていっていいよ」
「本当ですか!? ありがとうございます! 佳祐先生!」
あのあと、雪芽を部屋の中へ招いた佳祐は彼女が見たがっている原稿を見せてあげた。
すると彼女はまるで童のように受け取った原稿をマジマジと見つめては嬉しそうな声を上げて、はしゃぎ出す。
「すご~い! 絵もそうですけれど、佳祐先生の漫画はやっぱりお話がすごく面白いです! はじめての連載作品である『侍一人犬一匹』! あれのストーリーがすごく面白くて、一目見た時からずっとファンでした! 私もいつかこんな漫画を描きたと先生の描く漫画をずっと見てきました! 『妖怪メシマズ道』『巫女っ娘探偵カグヤちゃん』どれも本当に面白かったです!」
「はは、ありがとう。って言ってもどれもすぐに打ち切りになったけれど……」
絶賛する雪芽にしかしどこか申し訳ない表情で謝る佳祐。
無論、雪芽はそんなことなど気にすることなく傍にある原稿を次から次へと読んでいくが、そこで何かに気づいたのか雪芽は眉をひそませる。
「あれ……? あの、この原稿って雑誌に掲載されていないやつですよね?」
「ああ。それは以前、担当に見せて没になった漫画だよ。いくつかそういうやつも混ざってたみたいだね。今見るととても見れたものじゃないから、無理に読まなくてもいいよ」
「い、いえ! そんなことはありません! むしろ、ありがたく読ませて頂きます! 先生の没になった漫画を読めるなんて光栄です!」
「そ、そう? あ、ありがとう」
その後も没になった漫画を見ては何度も表情を変え、感情のまま叫ぶ雪芽。
他にも没になったネームや、オクラ入りになった企画など様々なものを見せて欲しいと懇願され、仕方がないとばかりに佳祐は雪芽にそれらを見せていく。
「すごい……こんなにたくさん……それにどれも面白いです。どうしてこれらが全部没になったんですか?」
「まあ、半分はオレが自分で没にしたんだけど、やっぱ雑誌の色にあわなかったり、読者が望むものじゃないからかな」
「読者の望むものじゃない?」
「そうそう。連載ってさ、やっぱりある程度読者に受けなきゃいけないわけだよ。そうすると読者にウケるための要素をいくつか盛り込まなきゃいけないわけ。自分勝手に作品を作ってそれがヒットするなんてまずありえない。そういうのは本当の天才の作品であって、オレみたいな凡人が好き勝手に使った作品じゃまずそうはならない。だから、少しでも担当とかの意見を聞いて、読者にウケそうな作品にしていく。その中で自分が作りたい作品に変えていくんだ」
そう告げる佳祐であったが、その表情は複雑そうであった。
そこにはそうした考えに至るまでの苦悩や苦労。様々な出来事があったことを匂わせていた。
「……でも、たとえそうでも佳祐さんはすごいです。何が読者にウケるのか。そうしたことまできちんと考えて漫画を描いている。それができる時点で佳祐さんは才能ありますよ。才能ないなんてことはありません」
「いや、そんなことは……」
「佳祐さん」
なおも否定する佳祐に雪芽が近づく。その雪のように白い肌と林檎のように赤い唇が佳祐の顔に近づき、彼は思わず視線を外す。
「佳祐さん。私にお話作りのコツを教えてもらえませんか?」
「え?」
突然の雪芽からのそのお願いに佳祐は慌てて雪芽の目を見る。
それは冗談でも、まして単なる憧れからのセリフではない。真剣に、彼女なりに自らの漫画をよりよきものにしたいという真摯な姿勢がその瞳に映っていた。
「いや、だ、だけど……雪芽さんの作品はすでに作品として完成されているし、オレがどうこう言う必要なんて……」
「いいえ、佳祐さんの漫画に対する姿勢を聞いて、私はただ佳祐さんに憧れただけで漫画を描いて、それがたまたま掲載されただけのものだと知りました。私にはもっと漫画に対する知識、見解、その先にある読者への目線や配慮が足りませんでした。お願いします、佳祐さん。私に佳祐さんの漫画に対するアドバイスを少しでもいただけないでしょうか?」
そう言って頭を下げる雪芽に佳祐の方が慌てる。
現状、自分から連載を勝ち取った雪芽に己が教えられることなどあるのだろうか。
そんな疑問が佳祐の中に渦巻くが、しかし雪芽は頑としてそれを聞かず、あまりの彼女の熱心な頼みにとうとう佳祐の方が折れてしまう。
「……わかった。けれど、そんな大層なものは教えられないよ」
「はい! ありがとうございます! 佳祐先生!」
その後、持ち込んだノートに佳祐からの様々なアドバイスを雪芽は逐一書き込むのだった。
「ははっ、こんなので喜んでもらえるなら好きなだけ原稿を見ていっていいよ」
「本当ですか!? ありがとうございます! 佳祐先生!」
あのあと、雪芽を部屋の中へ招いた佳祐は彼女が見たがっている原稿を見せてあげた。
すると彼女はまるで童のように受け取った原稿をマジマジと見つめては嬉しそうな声を上げて、はしゃぎ出す。
「すご~い! 絵もそうですけれど、佳祐先生の漫画はやっぱりお話がすごく面白いです! はじめての連載作品である『侍一人犬一匹』! あれのストーリーがすごく面白くて、一目見た時からずっとファンでした! 私もいつかこんな漫画を描きたと先生の描く漫画をずっと見てきました! 『妖怪メシマズ道』『巫女っ娘探偵カグヤちゃん』どれも本当に面白かったです!」
「はは、ありがとう。って言ってもどれもすぐに打ち切りになったけれど……」
絶賛する雪芽にしかしどこか申し訳ない表情で謝る佳祐。
無論、雪芽はそんなことなど気にすることなく傍にある原稿を次から次へと読んでいくが、そこで何かに気づいたのか雪芽は眉をひそませる。
「あれ……? あの、この原稿って雑誌に掲載されていないやつですよね?」
「ああ。それは以前、担当に見せて没になった漫画だよ。いくつかそういうやつも混ざってたみたいだね。今見るととても見れたものじゃないから、無理に読まなくてもいいよ」
「い、いえ! そんなことはありません! むしろ、ありがたく読ませて頂きます! 先生の没になった漫画を読めるなんて光栄です!」
「そ、そう? あ、ありがとう」
その後も没になった漫画を見ては何度も表情を変え、感情のまま叫ぶ雪芽。
他にも没になったネームや、オクラ入りになった企画など様々なものを見せて欲しいと懇願され、仕方がないとばかりに佳祐は雪芽にそれらを見せていく。
「すごい……こんなにたくさん……それにどれも面白いです。どうしてこれらが全部没になったんですか?」
「まあ、半分はオレが自分で没にしたんだけど、やっぱ雑誌の色にあわなかったり、読者が望むものじゃないからかな」
「読者の望むものじゃない?」
「そうそう。連載ってさ、やっぱりある程度読者に受けなきゃいけないわけだよ。そうすると読者にウケるための要素をいくつか盛り込まなきゃいけないわけ。自分勝手に作品を作ってそれがヒットするなんてまずありえない。そういうのは本当の天才の作品であって、オレみたいな凡人が好き勝手に使った作品じゃまずそうはならない。だから、少しでも担当とかの意見を聞いて、読者にウケそうな作品にしていく。その中で自分が作りたい作品に変えていくんだ」
そう告げる佳祐であったが、その表情は複雑そうであった。
そこにはそうした考えに至るまでの苦悩や苦労。様々な出来事があったことを匂わせていた。
「……でも、たとえそうでも佳祐さんはすごいです。何が読者にウケるのか。そうしたことまできちんと考えて漫画を描いている。それができる時点で佳祐さんは才能ありますよ。才能ないなんてことはありません」
「いや、そんなことは……」
「佳祐さん」
なおも否定する佳祐に雪芽が近づく。その雪のように白い肌と林檎のように赤い唇が佳祐の顔に近づき、彼は思わず視線を外す。
「佳祐さん。私にお話作りのコツを教えてもらえませんか?」
「え?」
突然の雪芽からのそのお願いに佳祐は慌てて雪芽の目を見る。
それは冗談でも、まして単なる憧れからのセリフではない。真剣に、彼女なりに自らの漫画をよりよきものにしたいという真摯な姿勢がその瞳に映っていた。
「いや、だ、だけど……雪芽さんの作品はすでに作品として完成されているし、オレがどうこう言う必要なんて……」
「いいえ、佳祐さんの漫画に対する姿勢を聞いて、私はただ佳祐さんに憧れただけで漫画を描いて、それがたまたま掲載されただけのものだと知りました。私にはもっと漫画に対する知識、見解、その先にある読者への目線や配慮が足りませんでした。お願いします、佳祐さん。私に佳祐さんの漫画に対するアドバイスを少しでもいただけないでしょうか?」
そう言って頭を下げる雪芽に佳祐の方が慌てる。
現状、自分から連載を勝ち取った雪芽に己が教えられることなどあるのだろうか。
そんな疑問が佳祐の中に渦巻くが、しかし雪芽は頑としてそれを聞かず、あまりの彼女の熱心な頼みにとうとう佳祐の方が折れてしまう。
「……わかった。けれど、そんな大層なものは教えられないよ」
「はい! ありがとうございます! 佳祐先生!」
その後、持ち込んだノートに佳祐からの様々なアドバイスを雪芽は逐一書き込むのだった。
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