日本円から始まる異世界造り

雪月花

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第38話 新しいダンジョンを作ろう

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「とりあえず、こちらが皆様用に用意させていただきました宿泊施設になります。この街にいる間はどうぞこちらをご利用ください」

「ほお、これはまた随分と立派なホテルだな」

 あれから宿泊施設を創造したオレはそのまま外で待たせているカイネル達を案内した。

「急な来訪にも関わらずこのような豪華な施設を提供していただけるとは。いやはや、ホープの領主の寛大さには痛み入る」

 そう言って丁寧に頭を下げるカイネル。
 その後は、引き連れていた部下達をホテルに預け、カイネル自身は帝国の首都に帰る様子を見せる。
 ただ帰り際、「少しこの街を観察してもよいだろうか?」と言ってきたので、それはセバス達に任せることにした。

 そうして帝国の兵士、冒険者達を無事ホテルに宿泊させ、残るカイネル達がセバス達に案内されるまま街の方へと向かうとオレはようやく一息つく。

「お疲れ様です、ご主人様」

「ああ、ありがとう。ケルちゃん」

 すぐそばで飲み物を用意してくれるケルちゃんに感謝する。
 とりあえず、これで明日からは王国だけでなく、帝国側の人間もオレの街に駐留し、ダンジョンの攻略に参加することになる。
 問題はこの街にすでに滞在している王国側の人間といさかいが起きないかどうかだ。
 先の王国側のダンジョンを帝国側が占拠したこともあり、すでに街にいる王国の人間から不満が出始めている。
 下手なことになれば、そのまま戦闘ということにもなりかねない。
 これは王国側と帝国側が問題を起こさないよう、この街でのルールをしっかり決める必要がある。
 となると騎士ギルドに協力を要請するのがいいか。
 こういう時の治安維持のために騎士ギルドは用意されているのだから。
 早速あとでギルド館に連絡を入れておこう。といっても、すでにギルドの方でその件に関する問題に取り組んでいるかもしれないが。

「けど、オレ自身も色々と行動を起こさないとな」

 そうだ。帝国もこの街に来るというのなら、ダンジョンの数が一つだけではやはり足りなくなる。
 となると、明日にはまた新しいダンジョンを作らないとな。
 そう考え込むオレであったが、この時はまだ気づいてはいなかった。
 そんなオレを影から観察する、とある人物がいたことに。

◇  ◇  ◇

「よし。じゃあ、このあたりでいいか」

 街から少し離れた平野にてケルちゃんを連れたオレは百円玉を握り締める。
 目的は勿論、新たなダンジョンの創造だ。

「今回はどんなダンジョンにするのですか? ご主人様」

「そうだなー」

 最初に作ったのは洞窟風のダンジョン。そして、この間オレがケインに案内されて買い取ったダンジョンが塔。
 なら、それに被らないダンジョンにしたいところ。

「砦……とか?」

「なるほど! 面白そうですね!」

 まあ、イメージはざっとしているがとりあえず砦と念頭に入れて作れば、あとは細かいことは自動的にこの神の通貨が作ってくれる。
 そう思いながらいつものように百円玉を投げるとオレ。
 すると目の前の何もなかった平野に巨大な建造物が生まれ、みるみる内にそれは巨大な砦へと変化した。

 おお、いつもながら何度見てもすごい光景だ。
 高さはかなりのものであり、高層ビルに匹敵する。横の面積も砦だけあってかなりの広さ。
 おそらく一階層の広さもオレが最初に作った洞窟風ダンジョンより上だろう。
 うん、とりあえず、これで新しいダンジョンは完成だ。
 あとはこのダンジョンをギルドの連中に任せて新しく提供してもらおう。
 王国と帝国側に後々、共同で使ってもらう感じでいいだろう。
 最悪、ダンジョン内でのいさかいが起きないために王国側にこちらのダンジョンを提供し、帝国側にあちらの洞窟のダンジョンを提供でもいい。
 なんにしても明日からまた忙しくなるなー、とそう思いながらオレは隣ではしゃぐケルちゃんを連れて、館へ戻るのであった。

◇  ◇  ◇

「……カイネル様」

『カエデか。それでどうであった?』

 トオル達が砦を作ってから、その場を離れてすぐ。それを離れた場所で見ていた忍びの少女カエデが手に持っていた通信を可能とする魔法道具にてシュナデール帝国の皇帝に報告を行う。

「はっ、それが例の領主があの通貨を使い、街の外に新たなダンジョンを創生いたしました」

『ほお』

「察するにあの通貨は建造物を含めダンジョンなどあらゆるものを創造出来る魔法道具ではないかと? 具体的正体はわかりませんが、少なくともあの通貨こそがこの場所に街やダンジョンが生まれた理由に繋がります」

『そうか、なるほど』

 カエデからの報告に納得するように頷く皇帝カイネル。
 しばらくの沈黙の後「いかが致しますか?」と問いかけるカエデに対し、カイネルは静かに命令を下す。

『その通貨とやらぜひ欲しい。カエデ、あの領主の館へと潜入し、隙を見てその通貨を――強奪せよ』

「はっ、了解いたしました」

 皇帝カイネルからの命令に忍びカエデは静かにそれを受諾した。
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