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第22話 魔王様、お城に帰還するってばよ
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「おかえりなさいませ。どうでしたか、デートは楽しめましたか?」
「ああ! すごく楽しめたぞ!」
「だからデートじゃないってば!」
帰って早々、茶化すようなイブリスの発言に全力で突っ込む私。
とはいえ、確かに思ったよりも楽しめたのは否定できず、私はパパから買ってもらった花のアクセサリーをそのまま頭に飾り、思わずそれを確かめるように手で触れる。
すると、それを見ていたパパが文字通り子供を見守る父親の表情を浮かべて、私の頭に手を置く。
「似合ってるぞ、七海」
そんなパパからの笑顔が妙に気恥ずかしくなり、私は思わず「や、やめてよね。もう子供じゃないんだから」とパパの手を振りほどいてしまう。
「よし! それじゃあ、次はオレの番っすねー! 七海様! 必ずやあなた様にご満足いただけるデート内容にしてみせま……!」
「グレンは引っ込んでいてよ。次は私の番ー」
「何言ってやがる! お前は先日も七海様とデートしてただろうが! これ以上七海様を独り占めするなよ!」
「うっさい、このDQN」
「誰がDQNじゃ!?」
と、次はどちらが先かとグレンとスイレンとで口喧嘩が始まっていた。
その光景に呆れつつ、私が止めようとすると、それより早くふたりの首根っこをパパが掴んだ。
「悪いが二人共、七海とのデートはおしまいだ。明日には我々は魔王城に帰還するぞ」
『え?』
思わぬパパのその宣言にグレンやスイレンだけでなく、私まで驚いて声を上げていた。
「え? あの、パパも帰るの?」
驚いたままパパにそう問いかける私であったが、パパはいつもの笑みを浮かべたまま頷く。
「ああ、あんまり七海の周りをうろつくのも迷惑だと思ったからな。それにパパ、魔王業やってるものだから、忙しくてな」
「何言ってるんですか、魔王様! 今までだって部下に任せっきりしてたじゃないですか!」
「そうだよー! 私、まだ七海と遊びたいー!」
パパの手の中でジタバタと抗議するグレンとスイレンであったが、その瞬間パパが二人に対し、何かを呟く。
「……そうしてやりたいのは山々だが、ザインガルドの勇者が動き出している。あまり本拠地を留守にするわけにはいかん」
パパがそう呟いた瞬間、それまで暴れていた二人の動きが止まり、なにやら不穏な表情を浮かべた。
「チッ、ならしょうがねぇか。スイレンお前も異存ないだろう」
「……うん」
見ると、スイレンの表情は先ほどとは打って変わって暗い表情になっており、見るとぬいぐるみを持っているその手が震えているようにも見えた。
「――まっ、とにかく、そういうわけだから、パパ達は魔王城に帰るから! 今後は七海は自由に過ごしていいからなー! あんまり両親からの干渉が過ぎると嫌われるって部下からも言われていたからなー。はははっ!」
そう言っていつもの明るい笑顔を浮かべるパパであったが、なぜだか私のその笑顔に対し、ほんの少しの不安を覚えた。
けれど、それを口にすることはなく、私は魔王城へと帰還するという三人に対し、ただ簡素な別れの言葉を告げた。
「うん、分かった。……それじゃあ、気をつけてね」
「ああ、勿論だとも! それからまたパパに会いたくなったら、いつでもメールしていいからな! 七海からのメールがあればパパ思わずその場に転移してくるから!」
「だーかーらー! そこまでしなくていいってばー!」
そんなパパからの別れの言葉に対し、私はいつものようにツッコミで返す。
「それでは、七海様。また近いうちにお会いしましょう」
「……七海、またね」
「うん、二人共またね」
グレンとスイレンからのその別れの言葉に対し、私は同じように返す。
そうして、別れの挨拶を告げると同時に、パパ達の姿は消えた。
パパが消えた後、私はパパから買ってもらったアクセサリーへのお礼を言うのを忘れていたことに気づき、今度会った時に言えばいいかとそれ以上、深く考えることはなかった。
けれども、この時の私は気づいていなかった。
パパへ、そのお礼を言う機会が失われていた事に――。
「ああ! すごく楽しめたぞ!」
「だからデートじゃないってば!」
帰って早々、茶化すようなイブリスの発言に全力で突っ込む私。
とはいえ、確かに思ったよりも楽しめたのは否定できず、私はパパから買ってもらった花のアクセサリーをそのまま頭に飾り、思わずそれを確かめるように手で触れる。
すると、それを見ていたパパが文字通り子供を見守る父親の表情を浮かべて、私の頭に手を置く。
「似合ってるぞ、七海」
そんなパパからの笑顔が妙に気恥ずかしくなり、私は思わず「や、やめてよね。もう子供じゃないんだから」とパパの手を振りほどいてしまう。
「よし! それじゃあ、次はオレの番っすねー! 七海様! 必ずやあなた様にご満足いただけるデート内容にしてみせま……!」
「グレンは引っ込んでいてよ。次は私の番ー」
「何言ってやがる! お前は先日も七海様とデートしてただろうが! これ以上七海様を独り占めするなよ!」
「うっさい、このDQN」
「誰がDQNじゃ!?」
と、次はどちらが先かとグレンとスイレンとで口喧嘩が始まっていた。
その光景に呆れつつ、私が止めようとすると、それより早くふたりの首根っこをパパが掴んだ。
「悪いが二人共、七海とのデートはおしまいだ。明日には我々は魔王城に帰還するぞ」
『え?』
思わぬパパのその宣言にグレンやスイレンだけでなく、私まで驚いて声を上げていた。
「え? あの、パパも帰るの?」
驚いたままパパにそう問いかける私であったが、パパはいつもの笑みを浮かべたまま頷く。
「ああ、あんまり七海の周りをうろつくのも迷惑だと思ったからな。それにパパ、魔王業やってるものだから、忙しくてな」
「何言ってるんですか、魔王様! 今までだって部下に任せっきりしてたじゃないですか!」
「そうだよー! 私、まだ七海と遊びたいー!」
パパの手の中でジタバタと抗議するグレンとスイレンであったが、その瞬間パパが二人に対し、何かを呟く。
「……そうしてやりたいのは山々だが、ザインガルドの勇者が動き出している。あまり本拠地を留守にするわけにはいかん」
パパがそう呟いた瞬間、それまで暴れていた二人の動きが止まり、なにやら不穏な表情を浮かべた。
「チッ、ならしょうがねぇか。スイレンお前も異存ないだろう」
「……うん」
見ると、スイレンの表情は先ほどとは打って変わって暗い表情になっており、見るとぬいぐるみを持っているその手が震えているようにも見えた。
「――まっ、とにかく、そういうわけだから、パパ達は魔王城に帰るから! 今後は七海は自由に過ごしていいからなー! あんまり両親からの干渉が過ぎると嫌われるって部下からも言われていたからなー。はははっ!」
そう言っていつもの明るい笑顔を浮かべるパパであったが、なぜだか私のその笑顔に対し、ほんの少しの不安を覚えた。
けれど、それを口にすることはなく、私は魔王城へと帰還するという三人に対し、ただ簡素な別れの言葉を告げた。
「うん、分かった。……それじゃあ、気をつけてね」
「ああ、勿論だとも! それからまたパパに会いたくなったら、いつでもメールしていいからな! 七海からのメールがあればパパ思わずその場に転移してくるから!」
「だーかーらー! そこまでしなくていいってばー!」
そんなパパからの別れの言葉に対し、私はいつものようにツッコミで返す。
「それでは、七海様。また近いうちにお会いしましょう」
「……七海、またね」
「うん、二人共またね」
グレンとスイレンからのその別れの言葉に対し、私は同じように返す。
そうして、別れの挨拶を告げると同時に、パパ達の姿は消えた。
パパが消えた後、私はパパから買ってもらったアクセサリーへのお礼を言うのを忘れていたことに気づき、今度会った時に言えばいいかとそれ以上、深く考えることはなかった。
けれども、この時の私は気づいていなかった。
パパへ、そのお礼を言う機会が失われていた事に――。
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