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悪魔?
ステンドグラス
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シスターは完璧すぎるまでに壊れたステンドグラスの破片を眺めて溜息をついていた。
「……このステンドグラスどうしようかしら…」
「派手に壊れてるからねぇ~。そう易々と直すことは出来なさそうだよねぇ~。」
悪魔はシスターの肩から顔を覗かせてステンドグラスの破片を見つめた。
「アンッタの所為でしょ…!」
シスターは成る可く恨みが籠った声で悪魔に言い放った。
「あははっ、そうだったねぇごめんごめ~ん。」
全くもって反省していない悪魔を尻目に、シスターは本気で悩んでいた。ステンドグラスの修理はそう簡単にはできない。人に頼み込むなんてもってのほか。シスターは会話が嫌いだ。
「うーん……んならさぁ、僕が直してあげようかぁ?そもそもこれ壊したの僕だしさぁ。」
悪魔は顎に手を当てながらシスターに目をやった。
「……そ、それならお願いしたいわ。ってか、な、なんでアンタ、は、ステンドグラスを破って入ってきたのよっ、……ドアはあるでしょう……?」
シスターは教会の大きなドアを顎で指した。そして悪魔を睨んだ。
「ん~?……あー、確かにあるねぇ。でもさぁ、教会のドアって結界よりも強い電撃が流れてるからさぁ、それを解くのはめんどくさいんだよねぇ。だからぱっぱと壊せそうなステンドグラスを破ったんだぁ。」
悪魔はシスターに睨まれたことにさも気づかないような凛とした表情でどこか寂しいステンドグラスの窓枠を見た。
「っま、さっさと直しちゃうねぇ。えーと、……あっ、こうか。ほいっ。」
悪魔は気だるげな手を下から上へと挙げて空を切った。そうすると、忽ちステンドグラスの破片は元の場所へと戻って行った。数秒後にはまるで何も無かったかのようにステンドグラスがそこに貼られていた。1ミクロンたりとも欠けておらず、場所を間違えていない完璧なステンドグラスが、そこにはあった。
「……」
シスターは呆然としていた。たとえ悪魔であっても、あそこまで粉々だった物を直すのは至難の業。壊すことは簡単であっても、直すのは簡単じゃないのは誰よりもシスターが一番知っていた。なのに、目の前の悪魔はそれを簡単に直してしまったのだ。
「ほらぁ、直ったよぉ。これでだいじょーぅぶ。」
「えっ、?あ、あぁ、あり、がとう…」
「わぁ~。悪魔にお礼を言うなんて、シスターさん変わってんねぇ~。」
悪魔羽に体を包み、クスクス笑った。
「ま、まぁ、直してもらったの、は、じじ、事実だし?ここ、壊したのは、ア、アンタだけど…」
ごにょごにょと言葉を連ねるシスターを、まるで居ないのかのように悪魔は無視し、先程直したステンドグラスを見た。
「…やっぱステンドグラスもうちょい壊したままの方が良かったかも。」
悪魔はさっきまで叩いていた軽口がそこから出ていたとは思えない程の落ち着いた声を口から零した。
「はっ、はぁ?な、なんでよ。」
「いやぁ、こりゃまたステンドグラス壊されっかもねぇ。」
「こ、壊さっ…?…どういう___。」
シスターは言葉を最後まで言えることは出来なかった。ステンドグラスが壊されたのだ。本日2度目である。
「……!?!?!?」
シスターは驚きのあまり声が出なかった。シスターとは対照的に微笑んだ笑みを顔に張りつけていた悪魔はステンドグラスの破片が目に入らないようにする為か、目を閉じていた。そして、悪魔が目を開けるのと同時に声がそこから聞こえた。
「……このステンドグラスどうしようかしら…」
「派手に壊れてるからねぇ~。そう易々と直すことは出来なさそうだよねぇ~。」
悪魔はシスターの肩から顔を覗かせてステンドグラスの破片を見つめた。
「アンッタの所為でしょ…!」
シスターは成る可く恨みが籠った声で悪魔に言い放った。
「あははっ、そうだったねぇごめんごめ~ん。」
全くもって反省していない悪魔を尻目に、シスターは本気で悩んでいた。ステンドグラスの修理はそう簡単にはできない。人に頼み込むなんてもってのほか。シスターは会話が嫌いだ。
「うーん……んならさぁ、僕が直してあげようかぁ?そもそもこれ壊したの僕だしさぁ。」
悪魔は顎に手を当てながらシスターに目をやった。
「……そ、それならお願いしたいわ。ってか、な、なんでアンタ、は、ステンドグラスを破って入ってきたのよっ、……ドアはあるでしょう……?」
シスターは教会の大きなドアを顎で指した。そして悪魔を睨んだ。
「ん~?……あー、確かにあるねぇ。でもさぁ、教会のドアって結界よりも強い電撃が流れてるからさぁ、それを解くのはめんどくさいんだよねぇ。だからぱっぱと壊せそうなステンドグラスを破ったんだぁ。」
悪魔はシスターに睨まれたことにさも気づかないような凛とした表情でどこか寂しいステンドグラスの窓枠を見た。
「っま、さっさと直しちゃうねぇ。えーと、……あっ、こうか。ほいっ。」
悪魔は気だるげな手を下から上へと挙げて空を切った。そうすると、忽ちステンドグラスの破片は元の場所へと戻って行った。数秒後にはまるで何も無かったかのようにステンドグラスがそこに貼られていた。1ミクロンたりとも欠けておらず、場所を間違えていない完璧なステンドグラスが、そこにはあった。
「……」
シスターは呆然としていた。たとえ悪魔であっても、あそこまで粉々だった物を直すのは至難の業。壊すことは簡単であっても、直すのは簡単じゃないのは誰よりもシスターが一番知っていた。なのに、目の前の悪魔はそれを簡単に直してしまったのだ。
「ほらぁ、直ったよぉ。これでだいじょーぅぶ。」
「えっ、?あ、あぁ、あり、がとう…」
「わぁ~。悪魔にお礼を言うなんて、シスターさん変わってんねぇ~。」
悪魔羽に体を包み、クスクス笑った。
「ま、まぁ、直してもらったの、は、じじ、事実だし?ここ、壊したのは、ア、アンタだけど…」
ごにょごにょと言葉を連ねるシスターを、まるで居ないのかのように悪魔は無視し、先程直したステンドグラスを見た。
「…やっぱステンドグラスもうちょい壊したままの方が良かったかも。」
悪魔はさっきまで叩いていた軽口がそこから出ていたとは思えない程の落ち着いた声を口から零した。
「はっ、はぁ?な、なんでよ。」
「いやぁ、こりゃまたステンドグラス壊されっかもねぇ。」
「こ、壊さっ…?…どういう___。」
シスターは言葉を最後まで言えることは出来なかった。ステンドグラスが壊されたのだ。本日2度目である。
「……!?!?!?」
シスターは驚きのあまり声が出なかった。シスターとは対照的に微笑んだ笑みを顔に張りつけていた悪魔はステンドグラスの破片が目に入らないようにする為か、目を閉じていた。そして、悪魔が目を開けるのと同時に声がそこから聞こえた。
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