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「生きるためには金が必要だ」
「さすがユータね」
「ユータ様、さすがです」
「まあな」
異世界に来た時点でこの世界の金を持っているはずがない。
ないなら作ればいい。
この世界で一般的に流通している貨幣を魔法で召喚した。
「まあ特に感想もないな」
金貨、銀貨、銅貨というおなじみの貨幣だ。
「変な男の顔よりもユータのほうがイケメンじゃない。こんな金貨はゴミだわ」
「そうです、ユータ様の顔にすべきです」
「そうか」
金貨のデザインは支配者と思われる男の顔がデザインされている。
まあどんなデザインでも使えればいいけど、リンもミツナもこのデザインが不評だから俺がどうにかしてやろう。
「ということで新たに作ってみたぞ」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
今度は俺の横顔がデザインされている真新しい金貨だ。
一応他の部分は同じデザインにしておいた。
実物に比べて全然魅力を感じないが貨幣に欲情されても困るだろうからこの程度の再現率でいい。
まあこのデザインでいいだろう。
「ということで複製してみたぞ」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
魔法だから一瞬でいくらでも複製できる。
俺は神なので魔力が尽きる心配はない。
どれだけ使えば魔力が尽きるのか試したことはないし尽きたこともないから無限なのだろう。
まあ神だしな。
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
「まあな」
でも新品で不自然に輝いているな。
あえて汚したり擦り減らして自然な仕上がりにしよう。
「…不細工になったな」
「…ユータとは別人みたいね」
「…こんなのユータ様の出来損ないです。ユータ様に失礼です」
そもそも小細工しようとした俺が間違いだった。
ここは堂々と俺の姿を維持させるべきだな。
不出来になってしまった貨幣は消去して新たな貨幣をつくりだす。
今度は不壊に防汚に抗菌に防臭に精神安定に家内安全に虫除けの魔法を付与しておいた。
それを複製魔法で量産する。
見たまえ、金貨が山のようだ。
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
「まあ楽勝だったな」
だがこれで終わりではない。
金は使ってこそ価値がある。
「よし、次は買い物だ」
「こんな素晴らしいデザインの金貨を使うの?もったいないわ」
「ユータ様の素晴らしさを知らしめるなんてさすがユータ様です」
「まあいくらでも作り出せるから遠慮しないで使ってくれ」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
「まあな」
リンとミツナに大量に金を渡した。
好きに使うといいぞ。
投げて遊ぶことも許してやる。
貧乏人に向かって投げると貧乏人が大量発生するから気をつけろよ?

村の適当な雑貨屋で適当なものを買って支払いに金貨を出してみた。
「こ、こんな大金は受け取れません」
おいおい、お釣りという発想がないのか?
あまりのがめつさに驚いたぞ。
これだから田舎はダメなんだ。
よそ者相手には何をしてもいいと考えているのだろう。
だがそれが田舎の正解だ。
残念だがここでは俺がよそ者の立場だ。
まあいいけどな。
「釣りはいらん。それよりも金が欲しいのか?ならくれてやる」
魔法で金なんていくらでも作り出せるからな。
「ユータの慈悲に感謝しなさい」
「こんな無作法な田舎者に恵んでやるとはさすがですユータ様」
「まあな」
雑貨屋を埋め尽くすほどの金貨をくれてやった。
様子を見た他の村人が勝手に金貨を持っていったが俺の魔法ならそれを上回るスピードで金貨を作り出せる。
「まったく卑しい人間たちだな。まあ金があれば少しはまともな暮らしができるだろう」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
まあこうやって異世界人を救っていくのが今回の旅の目的でもあるからな。
「これで格差も解消できるだろう。村人は俺の慈悲に感謝するといい」
だが村人は金貨の奪い合いで夢中だ。
俺に感謝するような日は来るのだろうか。
「まったく卑しい村人どもだ。だが格差が解消されれば少しはまともになるだろう」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
こんなクソ田舎の村人になんて期待しないでおくけどな。
まあ金をばらまいて人々を裕福にさせる計画は達成できた。
裕福になっても人間性が卑しいままだということも知った。
こんな世の中だから俺がどうにかしてやらないとな。
「だって俺がユータだからな」
「さすがユータね」
「さすがです、ユータ様」
まあ俺がユータだからな。
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